19:同日

 

 

 

 

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【生徒会 裏 引継ぎ書】

 

≪どうしても通したい意見が通らない時の最終秘策!≫
策案者:橘 庄司

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通したい意見の成否を握るキーマンに対して、どうしてもプレゼンが通らないなんて事は往々にしてよくある事だ。

そういう時に取る最終秘策!
一旦、ソイツの攻略を諦める!これに限る!

石のように頭の固いヤツは、攻略しようとコチラが躍起になればなるほど、更に固くなってしまう。
故に、潔くプレゼンする相手を変えて、まず、物事の流れを変える所から始めよう。それが、回り道なようで、実は意外と本筋への抜け道だったりする。
そうする事で、いつの間にか正否を握るキーマンの意見を変えたり、もしくはキーマンそのものを変えるきっかけとなる。

躓いてる場所だけを見つめるな!もっと、遠くから物事を見る事が出来れば、きっとこの秘策の意味が分かるはず!多分!
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さぁ、聞いてくれ諸君。これから、俺がある作戦を君たちに伝授しよう。

この第1パソコン室前の廊下は教室棟から正面玄関へと抜ける時、必ず前を通る必要がある。そして、放課後という一番人間の出入りが増える時間帯に、このパソコン室で校長をこのパソコン室に連れてくる。

 

アポを取るなんてことはしない。そもそも、生徒が教師に話をするだけの事にアポを求めるなんておかしいじゃないか。ビジネスライクにも程があるだろう。

いや、ビジネスという言葉を教師に当てはめるなら、生徒からの「先生話を聞いてください!」という何て事ない要望に対して、事前アポなんか求めるなと言いたいね。

 

校長とは言え教師には変わりない。なら、生徒の言葉に耳を傾けるという業務の根幹を、まず何がなんでも遂行するのは当たり前だ。

それに、そもそも校長室なんていう相手の絶対領域でプレゼンなんてものがそもそも、コッチが不利になる。相手に主導権のあるプレゼンにおいては、自分の地の利のある所におびき寄せないと。

 

この完成度の高いデモサイトも、このパソコン室ならどうだ?前のスライドに映して相手に見せてやった方が、断然効果的だろ?

なに?このサイトは校長にも何回も見せた?

 

いや、俺はもう今回のプレゼンを校長相手にしようなんて思ってないよ。
なんで、わざわざこんな生徒の出入りの激しいタイミングでプレゼンすると思ってるんだよ。

見せたいのは校長じゃない。
生徒に見せたいんだ。

 

俺は今から行うプレゼンを、まず他の生徒達に知ってほしいんだよ。

なぁ、圧倒的な決定権を持つ人間がたった一人居るとしてさ、その相手を陥落させられるモノって何だと思う?
俺の知ってる限りじゃ、1つしか知らないんだけどね。

 

そう、数だよ。一人の独裁者を倒すのって、やっぱり圧倒的な数の力な訳だよ。
だから、俺達も世論ってやつを味方につけるより他ないよなって話。

放課後にそんな圧倒的な人数がこのパソコン室に集まる訳ない?そりゃあそうだ、集まる訳ない。けど、いいんだよ。集まるのはある程度の人数で。

 

人はさ、面白いものを目撃した時、それを自分主体で発信したいと思う生き物なんだよ。注目を集めたいんだ。
特に、こんなSNSが普及しまくった時代にさ。その面白いネタを目撃した人間が余り居ない中、自分がたまたまその目撃者の一人になったとしたらどうだ。

 

俺だったら絶対にネットに情報を流すね。

だって、バズらせたいもん。

SNSなら情報なんてあっという間に全校生徒に周知徹底してくれる。
だからこそ、バズるなんて言葉が生まれるんだよ。

 

短期的で爆発的な話題の広がりを、そのある程度の人達に起こしてもらおう。
起こしてもらえるようなプレゼンを、今日俺はここでやるよ。
俺はこざかしく動き回って話す。だから、伊中。お前は

 

「堂々としてろよ!それで、全部上手くいく」

 

そう言って、確かに庄司は鮮やかに、まるで舞台を舞うように語った。
そんな庄司の姿に、宮古はそれまで掴み所のなかった橘庄司という人間の“何か”を微かに掴んだ気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10月29日
ハロウィンまであと2日

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