23:同日

 

 

 

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宮古は何度も、何度も携帯を見た。
けれど、庄司からの連絡は来ない。
メッセージが開かれた形跡もない。

 

『ねぇ、本当にこの橘庄司なの?』

 

伊中からの問いに、宮古は頷く事しかできなかった。伊中の開いた古いアルバムの中には、確かに昨日まで時間を共に過ごしてきた“橘 庄司”の姿があったからだ。
その写真に写る“橘 庄司”は確かに宮古のよく知る彼であったが、どこか圧倒的に彼とは異なることも確かだった。

 

この写真の中の庄司は、きっと宮古の事を知らない。
何故なら、あの写真は10年以上も前に撮影されたものだからだ。

—-俺も、伊中に言えない事があるんだ!

 

そう、いつだったか庄司は宮古に言った事があった。宮古同様、庄司にも秘密があるのだと。庄司自らが教えてくれた。

 

「(庄司の秘密ってコレか?)」

 

宮古は自室のベッドに横たわり、既読のつかない庄司へのメッセージをずっと眺めていた。あの、共に笑って過ごした日々は、もう終わりということなのか。
そもそも、出会う事すらなかったのだからと、全てを無かった事にするつもりなのか。

 

「(そんなの)」

 

許さない。
そう、宮古が携帯を強く握り締めた時だった。

 

ピロン。
そう軽い音を立てて庄司からのメッセージが宮古の携帯へと追加された。許さないなんて思いつつ、まさか返事が来るとは思っていなかった宮古は逆に焦ってしまった。しかも、今の時刻は24時を回っている。完全に深夜だ。

 

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ごめん、死んでた。もう無理。また明日連絡する
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「は?」

 

その前後関係などまるでない文面と共に、いつもの庄司らしく謎の写真も添付されている。

 

「っは、なんだよ。こりゃ」

 

そこには、庄司の手首であろうか。これでもかとグルグル巻きにテーピングされた手首と、親指を立てた手が写っており、更にそのテーピングには歪んだ文字で「あと50箱!」と謎のカウントダウンが記されている。

 

「っははは」

 

宮古は全くもって意味が分からなかったが、笑ってしまった。それが。どこからくる笑いなのか宮古自身、よく理解できなかった。
しかし、その笑いの大部分にはどこかホッとした自身の感情が大きく占めているのを感じた。連絡が来て良かったと、心から思う。

庄司は宮古との日々を“無かった”事なんかにはしようとしていないらしい。
こうして、返事がきて、何が何だかわからないけれど、そこにいるのはいつも通りの庄司で。

そして、圧倒的に宮古をホッとさせたのは庄司のメールの文面にあった。

 

——–
また明日連絡する
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そう、この一文に宮古の心は全て持っていかれた。安心して笑ってしまった。あぁ、また明日、必ず庄司は連絡をくれる。今日、連絡がつかなかったのは何か事情があったのだろう。
きっとその事情とやらが、あの謎のテーピングに違いない。

 

 

「庄司、もう……お前が誰だって良いよ」

 

 

また、会えるなら。

 

宮古はホッと心を静かに撫でおろすと、いつの間にか眠ってしまっていた。

 

 

 

 

10月30日
ハロウィンまであと1日

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