1:イチローとすーちゃん

 

 

時刻は3時20分。

掃除の時間。

 

その日の掃除は今までとは少し違っていた。

席変えによって、俺とイチローの席が離れてしまい、同時に掃除をする班も変わってしまったのだ。

 

だから、それは俺とイチローが5年生になって初めて迎えた、別々の掃除の時間。

 

そこから、事件は始まった。

 

 

「あははは!やめろよー!」

「ぞーきんスラッシャー!」

「イチロー汚ねぇ!顔に当たるじゃんか!」

 

 

俺は教室前廊下掃除。

イチローは教室掃除。

 

まぁ、すぐ隣なので、別に離れたというわけではない。

とりあえず、廊下の雑巾がけや、教室前にある手洗い場の掃除、狭い掃除区域の割にイロイロとやる事の多い廊下掃除に、俺はゆったりと従事していた。

 

俺の新しい班は、もう一人の学級委員の女子、上木さんを中心に大人しめの子が揃っているせいか、掃除中、騒ぐような事はなく、皆一生懸命自分の任された仕事を行っていた。

 

故に、今しがた聞こえてきた騒がしい声は、この廊下掃除のメンバーから発せられているわけではない。

 

教室掃除のメンバー。

イチローをはじめとする、クラスでは元気の良い男子連中が教室内で騒いでいる声だ。

 

 

「くらえ!俺の魔球!」

「ぶはっ!顔!顔に合ったったぞ!」

「あははは!ダセェ!」

 

……うるさい。

俺が持っていた雑巾を握りしめ、廊下側の窓から中の様子を見て溜息をつくと、いつの間にか俺の隣に来ていた学級委員の上木さんが感心するように呟いていた。

 

「元気がいいねぇ。イチロー君達」

「うーん、あれは元気っていうか、うるさいよね」

「あのね、イチロー君達と同じ掃除場所の女子って、すーちゃんなんだよ」

「あ、杉さん?」

 

俺は上木さんの言葉に自然と眉間に皺が寄るのを感じると、もう一度窓から教室の中を見た。

そこには、雑巾遊びに夢中になるイチロー達男子軍団と、その脇でイライラとその様子を見つめる女子の軍団があった。

 

その様子に俺は、ヤバいと口角が引きつるのを感じる。

 

すーちゃん。

こと、杉 瞳(すぎ ひとみ)

 

彼女は5年2組の女子の中ではリーダー的存在に当たる。

そして、その彼女の周りに集まる女子数名もまた、同様にクラスの中では中心的な存在だった。

 

そう、席替え後、あの6人班を見た時、俺は思った。

 

何か、問題が起こりそう、と。

 

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