2:俺と上木さん

 

 

男子のリーダー的存在のイチロー。

女子のリーダー的存在の杉さん。

 

そして、それを取り囲むように存在する、クラスの元気者達。

こう言うメンバーは、何かクラス単位で行事を行う時は、クラスを動かす原動力となる存在だが、普段、コイツらを一緒にすると我の強い者同士、何かと問題を起こしやすいのだ。

 

しかも今は小学校5年生。

 

やたらと、男子、女子という区別でクラスが対立しやすい時期だ。

俺の隣に居る上木さんはその事を理解した上で、敢えてこの教室掃除の担当に杉さんが居る事を俺に伝えてきたのだろう。

 

彼女の気持ちを代弁するならこうだ。

 

『敬太郎君。すーちゃんがイチロー君達の事怒ってる。喧嘩になる前に止めて』と。

 

彼女の目は明らかに俺に対してそう言っていた。

彼女は怒鳴り声やケンカを大いに怖がる。

 

 

俺は教室内の険悪な状況に一つ溜息をつくと、問題が起きる前にイチローに一言言ってやらねば、と閉まっていた窓に手を伸ばした。

 

 

しかし。

 

 

「見ろ!俺のスーパープレイ!」

 

イチローがそう叫んだかと思うと、箒を持って立っていた杉さんの足元に、イチローの投げた雑巾が落ちた。

そしてそこは、先程杉さん達女子が集めたゴミが集まっている場所だった。

 

 

「あ」

 

 

誰の声だか分からない、短い驚きの声が教室に響いた。

 

そして次の瞬間。

 

ダンッ!

 

杉さんの足元に落ちたイチローの雑巾の上に、杉さんの上履きを履いた足が勢いよく振り落とされた。

目が点とはまさに、この事だろう。

彼女の突然の行動に、イチロー始め、周りに居た男子2人、そして俺の目は一気にその足の持ち主、杉 瞳のもとへと向けられた。

 

そして、

 

「イチロー!あんたら、いい加減にして!さっきから全然掃除しないでさ!ウザいのよ!あんた達!」

「あぁ?!ひとみ!お前こそ俺のぞーきん汚ない足で踏んでんじゃねぇ!」

 

イチロー達の所業にイライラを募らせていた杉さんの怒りが爆発し、怒鳴り声とともに足元にある雑巾をグリグリと、見せつけるように踏みつけた。

その行動に、今の今まで満面の笑みを浮かべていたイチローの顔が、みるみるうちに険しくなっていく。

 

両者とも、完全にキレていた。

 

「こんなもともと汚ない雑巾、今さらどうなったて一緒!掃除もしないで投げてるだけの雑巾なんかゴミ箱に捨ててあげましょうか!?」

「テメェの足のが1000倍汚ねぇんだよ!?足どけろ!つーか、お前いちいち偉そうでムカつくんだよ!」

 

 

ああぁぁ。

始まってしまった。俺は教室で勃発し始めた、男子VS女子の闘いに頭を抱えると、チラリと後ろに立っている上木さんに目をやった。

 

上木さんは教室内で起こる、激しい怒鳴り声の応酬に泣きそうな顔を浮かべている。

そして、心配性の彼女は、この状況が教師である一郎にバレて怒られる事まで想像し、もうビクビク震えていた。

上木さんは一郎が怒ると、全く自分は関係ないのにヒクヒクと泣く癖を持つ、ちょっとだけ面倒な少女でもあるのだ。

 

「…はぁ」

 

俺は彼女の泣きそうな表情に、既に始まってしまった戦場に飛び込む事を決意すると、窓ではなく前方にある教室の扉まで足を運んだ。

 

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