4:俺と拳と雑巾と

 

俺が何気に男女の闘いの中で落ち込み、そして加えてイライラを募らせていると、イチローの雑巾を踏んでいた杉さんが足元から、イチローの雑巾を持ちあげ、そして。

 

「こんなきったない雑巾、返すわよ!?」

 

イチローの雑巾は勢いよく空を切った。

そしてその軌道は、イチローの方へと向かって走り

 

 

 

「っぐふ!」

 

 

 

イチローの前に居た、俺の顔面へと勢いよく激突した。

 

「あ」

 

またしても、誰の声だか分からない、短い驚きの声が教室に、いや俺の耳に響いた。

そして、その瞬間。

 

「お前ら、掃除の時間に何やってんだ!?」

「「「「「「っ!?????」」」」」」

 

 

入口から、怒りを孕んだ一郎の声が教室中に響き渡る。

あぁ、これは既に切れている。

俺がそう思って顔面にひっついていた雑巾をゆったりした動作で、顔からはがした。

 

「もう、掃除の時間が終わるってのに、この全然掃除の終わってない教室はどう言う事だ!」

「「「「「「……………」」」」」」

 

のそのそと近寄って来る一郎の姿に、先程まで威勢の良かった男子も女子も一様に怯えた表情で黙りこむ。

俺はやっとこの事態が収拾されると、内心ホッとして一郎を見た。

 

しかし。

 

「おい、敬太郎。お前廊下掃除だろうが。こんなとこで何やってんだ?あぁ?」

「は?」

 

俺は突然俺に向けられてきた一郎の怒りの表情にポカンと顔を呆気にとられるしかなかった。

え、何。

何でこの状況で俺が最初に怒られてんの?

 

つか、俺が悪いのか……?

 

「自分の掃除区域ほっぽり出して、イチローと遊んでたのか?お前は!」

「いや、ちがっ」

「まず、自分の仕事を終わらせてから遊べ!そして周りの状況を見ろ!ガキじゃねぇんだから!」

 

一郎はそう俺を怒鳴りつけると、勢いよく俺の頭に拳を落とした。

 

「ったぁぁ!!」

「反省しろ!」

 

え、え?

何この理不尽な状況。

何この頭の痛み。

つか、何か?

この状況は俺が廊下掃除をほっぽってイチローと遊んだ末の結果だと言いたいのか一郎は。

 

何だよ、これは。

何だよ、俺は。

 

男子にも女子にも責められ、挙句一郎にまで理不尽に怒られ。

つーか、だいたい俺は全く悪くないっつーのに。

 

俺はグルグル回る思考の中、いつの間にか理性がプッツリ消え去っている事に、全く気付いていなかった。

気付いた時には、俺は手に持っていた雑巾を握りしめ、

 

「俺は悪くねぇぇぇぇぇ!!!!」

「ぶはっ!!」

 

一郎に勢いよく投げつけていた。

そして、その雑巾は至近距離と言う事もアリ、外れることなく見事に一郎の顔面に激突した。

 

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