5:一郎と雑巾と嫁の家出

 

 

俺は、完っ璧ブチ切れていた。

 

「畜生!どいつもこいつも!俺が下手に出てりゃあ調子に乗りやがって!大体なぁ、テメェらが真面目に掃除してりゃあ何の問題もなかったんだよ!あぁ!?」

 

俺は自分の右側に立っていたイチローをはじめとする男子3人に向かって叫んだ。そして、それが終わると今度は左隣に居る女子三人を睨みつける。

 

「お前らもだ!いちいち雑巾踏んだり、相手を煽るような事ばっか言いやがって!挙句止めに入った俺にまでグチグチ文句垂れ流して!ウゼェんだよ!過去の関係ねぇ事持ち出してきて!文句があんならその場で言え!」

 

男女共にブチ切れた俺を見て、ポカンとしている。

そりゃあそうだろう。

俺はこのクラスに入って、いや、この小学校に入学して怒った事など数えるほどしかない。

 

相手は小学生。

そう思えば大抵の事は許せてきたのだ。しかし今回ばかりは我慢ならない。

俺は最終的に俺の理性をぶっ飛ばしてくれた、未だに顔面に雑巾がのめり込んでいる一郎を睨みつけると、もう一郎が教師である事を忘れ、昔の勢いで叫んでいた。

 

「大体なぁ!こうなったのも全部テメェのせいだろうがっ!一郎!!」

「っ!?」

 

俺の叫び声に一郎は勢いよく顔面にへばりついた雑巾を掴むと、驚いた表情で俺を見下ろしてきた。

 

「テメェが席変えのクジ作んの面倒臭がって、お見合い形式の席替えなんて不精な席替えすっからこんな我の強い連中の集まった班が出来がんだよ!?わかってんのか!」

「……え、あ、おい」

「こう言う席替えってのはな!?生徒の要望聞きつつ一定期間に何回もやっていく分、席替えの時は生徒のタイプが重ならないようにきちんとクジ作ってシャッフルしていくのが常識だろうが!?お前は教師やっててんな事もわかんねぇのか!?あ!?」

「……あ、えっと」

「それにな!?この男子3人!コイツらがグループ作った時点でお前は考えなかったのかこの状況を!こいつらだけで教室掃除がまともに回っていくと思ったのか!?小学生男子っつーのはな?!何やらせても、持たせても遊びに変えてしまう特殊能力を持ってんだよ!?お前もそうだっただろうが!真面目に掃除なんか1回でもした事あったか!?ないだろ!?」

「おい」

「女子も女子でこの年頃はな!?何かと男子がガキに見えて大人ぶって、男を不快にさせる天才なお年頃なんだよ!?今回だって俺が止めに入りゃ俺までガンガン責められるし!良い子ちゃんとか言われるし!ほっといていいんならもう俺は二度と口を挟まねぇよ!?俺だってうんざりだね!学級委員だからってどの問題にも解決させようと口突っ込んで巻き込まれて……!挙句、最後は俺が悪者扱いか!?もういいよ!学級委員なんか辞めてやるよ!?好きにすりゃあいいんだよ!お前ら全員!俺は……俺は……」

 

俺は言いながら徐々に目に涙が浮かんでくるのを止められずに居ると、最後につもりにつもったイライラとストレスを一気に放出させた。

 

「こんなクラス、出てってやるよ!!!!勝手にしろ!」

 

俺はそう、姑と同居してストレスのたまった嫁のような言葉を叫ぶと、泣きながら勢いよく教室を出て行った。

もう知るか。もう知るか!

 

「っおい!敬太郎!」

「けーたろ!?」

「敬太郎君!」

「敬太郎!」

 

後ろから沢山の人が俺の名前を呼ぶ声が聞こえてくる。

絶対あんなクソガキ共の面倒なんか見てやるものか!

あんなクソ教師のフォローなんかしてやるものか!

 

5年2組なんか滅びろ!

 

「うわぁぁぁん!!」

 

俺は泣きながら廊下を走り抜けると、とりあえず訳も分からず廊下を駆け抜けた。

 

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