10:俺と幼馴染の一郎2

 

 

「おい、敬太郎。お前、さっき上木と顔くっつけてなかったか?」

 

 

俺は、俺の隣を大きなダンボールを持って歩いている一郎に問いかけられてビクリと肩を揺らした。

そう言う俺も、一郎より一回り小さなダンボールを持って職員室までの道すがらを歩いているわけだが。

まぁ、何と言うか、いつもの学級委員に押し付けられた雑用と言う奴だ。

しかも、このダンボール自体も一郎が教頭から押し付けられた、中に何が入っているかもわからない代物なのである。

 

「い、い、い、いやぁ。クッツケテナイヨ」

 

俺が明らかに挙動不審な態度で一郎にそう切り返すと、一郎はムスッとした表情で俺の方を見下ろしてきた。

 

「んだよ。明らかに何かありましたーって顔すんな。何か?上木に告白でもされたのか?」

 

引き続き不満そうな目で俺を射抜いてくる一郎に俺は、ブンブンと勢いよく頭を振る。

告白は告白だったが、んな甘っちょろい告白じゃなかった。

 

恐怖の告白だったわ……!

 

「何だよ、そんなに慌てて。怪しいんだよ。お前。上木は絶対お前の事好きだって思ってたね、俺は。けどな、お前に恋愛なんか早いんだよ!?わかってんのか!?あぁ!?」

「何をそんなに怒ってるんだよ」

 

隣で突然怒りだした一郎に、俺は呆れたような目を向けてやる。

まったく、何も知らない癖に。

上木さんは俺をどうこう思うようなそんな小さな人物じゃねぇよ。

彼女は将来男を……いや、なんらかの大きな組織ですら手のひらで転ばせる力を持つ末恐ろしい少女だぞ。

 

なんて。

今の一郎に言っても説明が面倒なだけなので、言わない。

それに、なんか今の一郎に言ってもあんまし信じてくれなさそうだし。

 

「小学生なんだからな!?お前は。まだ、小学生だ!何かあったらまず俺に言うのが絶対的な、お前に課せられたルールだ。おい、聞いてんのか!?」

「……うん、うん。……うん、うん」

「おい、お前どうした?4回も返事したぞ?返事は1回でしょって言って怒られるレベルを遥かに超えてるぞ!?おい敬太郎!お前本当に何かあったのか!?上木になんて言われた!?」

「うん、うん」

「うん、じゃねぇぇ!なんか言えよー!?」

 

俺はあの時の上木さんの笑顔を思い出して恐怖に駆られていたせいで、隣で激しく嘆く一郎の様子にちっとも気付かなかった。

否、そんな余裕など一切なかった。

 

『上木は絶対お前の事好きだって思ってたね!』

 

そう言った一郎の言葉が頭をかすめ、また俺は身震いする。

違うだろうが、あのような将来裏ボスに好かれるなんて考えただけでも恐ろしい。

 

まぁ、絶対違うと思うが。

うん、絶対に。

違う、違う、違う!

俺はそんな風に必死に否定しながら、現在、教室の俺の隣に広がる現実から目を背けた。

 

『私、ちょっと、得技があってね、中に座った男子の、声。それ聞くと、だいたい、男の子が、どの班の、どの辺に座ったか、わかるん、だよ』

 

そう、彼女は言った。

そして現在、俺の隣の席は——。

 

 

 

———–

おわり

 

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