3:お父さん登場

 

 

 

今日は日曜日。

 

しかし、俺のクラスはいつもように元気に子供たちの声が響き渡っていた。

元気に騒ぐクラスメイトを端に映しながら、俺は眠い目を無理やりこじ開けて大きな欠伸をする。

 

「っし、それじゃあ今日は3時間目から皆のお父さんが来るけど、緊張とかしないで普通どおりにやっていっていーからな!」

 

そう言っていつもよりしっかりしたスーツ姿で教壇に立つ一郎を俺はどこか新鮮な気分で見ていた。

そう、今日は世に言う父親参観の日。

故に、俺は日曜日と言う、世の中の殆どの人間が休日を楽しむ中、こうやっていつも通りに学校に来ている。

 

 

「あははは!おとーさん来ても緊張しないしー!いつも家で会ってるもん!」

「ほぉ。じゃあさ、授業参観の間、イチロー君にバンバン当てても大丈夫ってわけだ?」

「だいじょうぶだし!俺の苦手な国語は2時間目だから、別にへーきだもん!」

「畜生、父親参観1時間目からにすりゃよかったな」

「へへへ、別に当てていーよ、せんせー!」

 

そう言っていつもの如く軽いやり取りをする二人に、クラスメイト達も楽しそうに二人を見つめる。

しかし、どこかその表情はいつもと比べるとどこか緊張気味で、あと2時間もすれば現れるであろう己の父親の存在に騒ぐ気持ちを抑えられないのがよくわかった。

 

かくいう俺も、普段は忙しい自分の父親がこうして自分の勉強する姿を見に来るという事で、少しばかり緊張している。

それは、普段の授業参観で母親が来るのとはまた別の緊張具合だった。

 

にしても……

 

 

「(ほんと、父親参観が3時間目からで良かった……)」

 

 

俺はイチローの言っていた「苦手な国語は2時間目だし!」と言う言葉に激しく同意すると、一郎の組んだ時間割に激しく感謝した。

まぁ、俺の場合、問題なのは2時間目の国語ではなく1時間目の算数なのだが。

そう、今日は2時間目までは通常の国語と算数と言う通常授業を行う事になっている。

そして父親参観の始まる3時間目は教室で父親の似顔絵を描き、4時間目は体育館で父親と一緒にドッジボールという、何だかんだ言って勉強じゃない触れ合いの時間が設けられているのだ。

 

しかも1時間目から開始しないのには、普段は仕事で疲れているであろう父親の事を想って、という心ばかりの気遣いが含まれているスケジュール構成だ。

 

そのお陰もあって、俺は高校の数学教師を務める父親を前に、無様な姿をさらさずに済んだ訳だ。

 

本当にありがたい。

 

ちなみに、先程一郎に向かって叫んでいたイチローの父親は高校の国語教師だ。

互いに、勉強における父親のDNAは全く引き継げなかったらしい。

 

「とりあえず、だ!3時間目までは普通に授業すっからなー!眠いかもしんないけど、しっかりやれよ!」

 

そう言って。休みにも関わらずしっかりと授業の体制に入る一郎に俺は眠気に襲われながら、一郎は凄いなぁとぼんやり考えた。

まぁ、とりあえず、お父さんが来るまでいつも通りぼんやり授業を受けるか。

 

俺が半ば眠りながら、ゆったりと算数の教科書を広げた時。

 

ドタドタドタドタ

 

 

激しい足音が廊下から教室に向かって響いてくる。

そして、その足音は丁度、俺達の5年2組で止まり……

 

ガラッ!

 

「すみませーん!ちょっと遅れちゃいましたー!」

「待てっ!だから10時から……!」

 

そう言って突然響き渡った二つの聞きなれた声に、俺は一瞬、心臓が止まりそうになった。

 

あれ、あれれ。

 

俺は急いで後ろの教室のドアに目をやると、周りも同様に俺の向ける視線の先へと体を向けていた。

そして、その視線の先に居たのは……

 

「おとーさん!」

「お父さん……」

 

そこに居たのは、俺と、そしてイチローの

 

「あれー?俺ら一番乗りっぽいな?けー」

「……あーぁ。やったな……」

 

父親だった。

 

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