そして、兄貴は俺を抱きしめた(1)

 

 

この世で、俺の事を家族だと思ってくれている、唯一の存在へ。

 

 

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そして、兄貴は俺を抱きしめた。

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 俺の兄貴はクソ野郎だ。

 

 そんなクソ兄貴もうすぐ高校生。

 高校受験を間近に控えている、現在中学3年の1月だ。一つ上の教育機関へ上がる事は、あのクソ兄貴をまともにするのか、それとも更にクソにさせるのか。

 

 俺にはわからない。

 

 ただ、学校もサボってばかりで、素行も悪い。良いのは顔と、腕っ節の強さだけ。人間一つくらい良いところはあるというものだが、容姿の美しさを引いたってあの素行の悪さにはお釣りがくるのではないだろうか。

 

 それに、中2の時に染めた金髪の頭だけは、やっぱりクソほども似合っていない。

 でも、あの金髪も女子からは評判が良い。特にケバイ女子から。しかし、あんまり格好いい格好いいと本人の近くで言わないで欲しい。

 

 兄貴は、クールを気取って表情には出さないが、内心物凄く喜んでいるのだから。調子に乗って今度は髪を銀色にしようか、なんて家で言っているのだから周りの女子は本当に発言には気をつけて頂きたいものだ。

 

 クソ兄貴は黒髪が一番似合っていたのに。

 

 話は逸れたが、兄貴は今、高校受験を目前に控えている。格好いいとかモテるとか腕っ節が強いとか。兄貴の長所はどれも高校入試では一切役に立たない。

 

 逆に内申はボロボロで足手まといにしかならない長所である。こんな調子では、さすがに兄ちゃんも高校になど行けやしない。

 

 なにせ、高校からは義務教育ではないのだから。公立高校の授業料が無償になり、少子化の影響で近隣高校の倍率がいかに低くなろうとも、一応入学する為には、テストである程度の点数をとらねばならないのだ。

 

 本人もそれはわかっているらしい。

 

 高校選びは、兄貴も両親も謙虚だった。

 謙虚に、県内でも1、2を争うバカで、救いようのない素行を持つ生徒達の集まる高校への志望を決めていた。

 

 それが兄貴の学力の精一杯なのだ。

 可哀想だが、まぁそれは兄貴の3年間に文句を言うしかない。

 

 所以、自業自得と言うやつなのだ。

 そのせいで、俺は最近ずっと兄貴の家庭教師扱いだ。

 

「おい、純」

「なに、兄ちゃん」

「なんか、意味わかんねぇんだけど。コレ」

「どこだよ、もう」

 

 さすがに中3の内容までは無理だが、入試問題の半分以上は中1、中2内容で構成される。だから、ある程度は俺でも対応できるのだ。なにせ、俺は真面目に毎日学校で勉学に勤しんでいる。

 

 頭は良くはないが、悪くもない。

 

 あのクソ両親によると、公立高校の授業料が無償化になったお陰で公立なら俺も高校に行かせて貰えることになった。

だから、兄貴の受験勉強に付き合う事は俺の受験対策にもなって丁度いい。

 

 まぁ。

 

「あ゛-!ムカつく!なんでこうなんだよ!?純!意味わかんねぇよ!」

「いだだだだだ!いだい!首じまる!」

 

 

 問題が解けず、イライラが募る度、こうして俺に本気で拳を上げてくるのは止めて欲しい。今なんか、背後から腕で首を絞められている。

このままプロレスの技を連続でかけられて行くのが最近の俺の日常である。可哀想にも程があるだろう。

 

 慣れない勉強のストレスを、気分よく弟で晴らそうとするなんて。

 

 本当に、なんてクソ野郎なのだろうか。

 

 

 

 俺の……兄ちゃんは。

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