4:誰に対するサプライズ?

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≪このヤスキせんせーに証拠写真とビデオば撮って来てもらうけん!ちゃんと出来んとめぐみせんせーはやれんけん!ゆーいち、がんばらんねー!≫

 

 

その台詞と共に式場の大画面に映る、どアップのヤスキの驚いた顔。

 

ヤスキはこのサプライズビデオレターに、それまで一切映っていなかった。

最初から最後まで、これは全て生徒達で作り上げたものだという前提でカメラを持ち、編集作業に勤しんだヤスキは自分の存在をカメラから一切消していた。

当日も、式場側にビデオを渡しただけに留まり、突然ビデオを流すという流れであった為、そこには本当にヤスキの影は一欠片もなかったのだ。

 

ヤスキはただ、めぐみに恩返しがしたいと思い、めぐみが一番喜ぶであろう形をとった。

そこに自分は必要ないと思った。

 

故にヤスキは裏方に徹したのだ。

その思惑通り、結婚式の最中、突然流れ始めた生徒からのビデオレターにウエディングドレス姿のめぐみは笑い、涙を流し、そしてまた大いに笑った。

笑っていたのはめぐみだけでなく、式場中の人間がビデオを見て同じように泣いたり笑ったりした。

 

最後には新郎による新婦のお姫様だっこに続く『スゲェ好き』発言、その記念撮影で幕を閉じ式場は大いに沸いた。

 

本当に、今日は良い結婚式だった。

ヤスキは会場の外で参加者にお礼を言う、目を赤く腫らしためぐみの姿に心からそう思った。

次の瞬間、友人に囲まれ笑顔を浮かべるめぐみとヤスキの目がバチリと合った。

ヤスキは小さく会釈すると、そのまま会場を後にしようとした。

親しい者達に囲まれ、幸せそうな姿の彼女に、一介の職場の人間が軽々しく近寄って行ってはいけない気がしたのだ。

 

しかし、その瞬間、ドレス姿のめぐみは突然ヤスキの元へと駆けだしてきた。

そんな彼女に周りも新郎も、当のヤスキさえも目を丸くする。

 

そして、次の瞬間ヤスキはめぐみに抱きしめられていた。

騒然とする周りと共に、ヤスキ自身、混乱に固まった。

しかし抱き締められたまま、めぐみに放たれた言葉でヤスキの全ては弾けた。

 

『ヤスキ先生……本当に、今日はありがとうね』

『……っ』

『ビデオレター、作るの大変だったでしょう?クラスの子達と一緒に頑張ってくれたのよね?ほんとうに、ほんとうに、嬉しかったわ。もう……ほんとにっ、幸せでっ』

 

そう言って、口元を押さえて涙を浮かべるめぐみにヤスキの目からも思わず涙がこぼれていた。

 

『い、いままで、ありがとうございましたっ。めぐみ先生。お、お幸せにっ』

 

涙がとめどなく溢れる。

めぐみはヤスキにとって先生の先生だった。

憧れだった。

少しだけ、好きだった。

 

それら全てが、この瞬間に報われた。

拓道のサプライズは影であったヤスキを光へ下と引っ張り上げ、そして共に隣へと立たせたのだ。

ヤスキは嬉し泣きをするめぐみの背後に、拓道の太陽のような笑顔を見た気がした。

 

ただの拓道の気まぐれだったのかもしれない。

深い意味などないのかもしれない。

いつものおふざけの一環に過ぎなかったのかもしれない。

けれど、ヤスキは拓道の笑顔に思ったのだ。

 

小学生と侮るなかれ、と。

 

 

 

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