第9話:*****

 

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ガタンッ。

 

 

 

 

次の瞬間、俺は体に走った衝撃に目を見開くと、そこは見慣れぬ真っ白な天井があった。

 

「………うー?しらきばるー?」

 

よく回らない頭で、俺はキョロキョロと辺りを見渡す。

しかし、そこにはさっきまで夢に出ていた白木原は、どこにも見当たらなかった。

 

そうして、キョロキョロ周りを見渡すうちに、俺は少しずつ意識が覚醒してくるのを感じた。

 

「あー、ゆめかぁ……」

 

そうだ。

ここは、よくわからない金持ちの学校の……生徒会室だ。

 

俺は床に落ちているプリントの山と一緒に天井にある豪華なシャンデリアのような電気を見上げながら、自分の置かれた状況を思い出していた。

 

 

俺は昨日、本気で一滴もスープのなくなったカップ麺を食べてから、どうしていいかわからず、この部屋で机の上につっぷして寝たのだ。

そんで……今、椅子から落ちて天井を見上げている。

 

「うーぁ、今、何時だろ」

 

俺はガシガシと頭を掻きながら体を起こすと、部屋に取りつけてある無駄に装飾の多い時計へと目をやった。

 

「……7時、15分……あいさつ運動の時間だ」

 

時刻は7時15分。

その時間に、俺は激しいデジャヴュを感じてしまった。

 

朝7時15分。

校門前指導、またの名をあいさつ運動。

生徒会役員に課せられた、最も面倒で、最も実施回数の多い活動。

 

『絶対、遅刻しないでくださいね。新谷君。生徒会長の分際で遅刻などしたら、周りに示しがつきませんから。最初が肝心ですよ』

 

俺は最初の1カ月しか生徒会長できなかったし、1週間しか経験してないが、それでもあれは面倒だった。

7時15分までに学校へ来て、生徒会は校門前に集合する。

 

そして、順次登校して来る生徒達に気持ちの良い挨拶を送り、生徒達にも挨拶の習慣を付けてもらおうと言う活動だ。

 

と、言うのは建前で、服装など校則に違反のある生徒を朝から校門で洗いざらい摘発して、生徒指導室に送り込むと言う、なんとも一般生徒からは嫌がられる仕事だった。

白木原がガッツリ指定以外のシャツを着てきて登校した時なんかは、俺は逃げる白木原を追って朝から学校中を駆け回った思い出がある。

 

そして結局捕まえられずに、俺がみどりちゃんに怒られたのだ。

 

「………あいさつ運動……」

 

俺はボヤボヤする頭でそんな事を思い出しながら、何故か夢の中に出てきた白木原の言葉が頭をかすめて仕方が無かった。

 

 

『仕事、サボんなよ』

 

仕事。

仕事か。

 

そんな事言ったって、俺の出来そうな仕事が見つからないんだ。

俺は生徒会長なのに、仕事が何なのかもわかんないんだよ。

 

そう、俺は朝日の指し込んで来る窓を見ながら、ぼんやりと外を見た。

すると、そこには丁度、寮らしき建物から、学校へと登校して来る学生達の姿が見えた。

 

 

「………あいさつ、運動」

 

 

あいさつ運動。

あれ、俺はあんまし好きじゃなかった。

別に、似合ってるんなら何着ててもいいじゃんって思ってたから。

だいたい、うちの学校は校則が厳しすぎるんだよ。

 

白木原のシャツだってちょっと色が付いてただけだったし。

それに何より似合ってたから、いーじゃんって思ってた。

 

あいさつ運動。

……あいさつ運動。

 

 

「あいさつ運動……しよっかなぁ」

 

別に、みどりちゃんが居るわけではないし、本当にあいさつだけやる運動なら……やってもいいかもしれない。

俺の仕事、ないなら作ってやってみればいい。

 

仕事下さいって待ってるだけじゃ、みどりちゃんからも秋田壮介からもリコールされちゃうしね。

俺は起きたばかりの眠い目を擦ると、誰も居ない汚ない生徒会室を後にした。

 

 

あー、昨日から制服も一緒だし、顔も洗ってないけど……

 

 

まぁ、いっか。

 

 

 

俺は清々しい朝を、汚れた身なりで迎えた。

 

 

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