第10話:*****

 

 

「うん、あいさつ運動。朝、皆にあいさつして気持ちよくなってもらう運動。これも生徒会の仕事なんだぜ!」

 

「そんな活動聞いた事もない」

 

「そんなー。生徒会活動の根幹を担う大事な活動なのにー」

 

「………しているのを今まで見た事ないが」

 

 

そう言って冷たい目で俺を見てくるけど、それじゃあ今の俺のライフはゼロにならないぜ。

こうして俺とお話をしてくれるだけで、俺のライフは回復していってるんだからな。

 

 

「それは今まで秋田壮介が運悪く活動を見てなかっただけだよ。俺はやってたもん。みどりちゃんにめっちゃ怒られながら。俺が満足にできるのはこれくらいなんだから死ぬ気でやれってさー」

 

 

そう、俺がみどりちゃんを思い出しながらしょっぱい気持ちで口を開くと、それと同時に秋田壮介の眉もピクリと動いた。

 

 

「……はぁ。そう言うことか。今さらこんな稚拙なアピールで生徒会への支持を取り戻そうと言う魂胆か。見え透いたうすっぺらい動機だな」

 

「うーん。確かにそれも動機の一部ではある。けど、全てではないぜ」

 

 

俺が探偵気どりで、そう意味深に言ってのけると、秋田壮介は深く眉間に皺をよせながらこちらを見てきた。

うん、うん。

そうやって俺につっかかってこい、秋田壮介。

そんで、ここに俺を一人ぼっちで置いていかないで。

 

そして心なしか周りの視線が更に増えたような気がするのは俺の気のせいなのか。

 

 

「何を企んでいる……西山」

 

「ふ、どうだろうな」

 

 

特に意味はありません。

強いて他の理由を挙げるならば……そうだな。

 

ただ、起きた後暇だったからです。

 

そうとは知らず、俺の含んだような言動に秋田壮介は更に鋭い視線で俺の目を見つめてきた。

ヤバい、ちょっとだけ怖くなってきた。

夢の中の秋田壮介思い出しちゃった。

 

 

「……そうか、ならいい。確かに、何の抵抗もされないと俺も生徒会を潰すのに、何の面白味もないからな。無駄な抵抗を、するだけするがいいさ」

 

「………はい」

 

 

うん、ちょっと怖くなったので素直に返事をしておきます。

もう調子乗った事いいません。

俺の度胸なんてこんなモンです。

 

「しかし、お前にどんな考えがあろうと、こちらは容赦しない。……おい、西山」

 

「……なんでしょう」

 

 

少しだけ愉快そうに口角を上げる秋田壮介に、俺はおずおずと返事をする。

なに、何を言う気なの。

まさか、封印されし暗黒の力を発動したりしないよね。

 

秋田壮介、俺は妄想で2回キミに殺されたんだよ。

 

 

「今日の昼休み。一人で風紀の会室に来い」

 

「っへ?」

 

「いいな?お前が、一人で、来い」

 

 

そう、一語一語確かめるように俺に向かって口を開く秋田壮介に、俺は目を瞬かせるしかなかった。

え、何、罠?

昼休みに俺はこの人に何かされるの?

 

怖いんですが。

 

 

「……何をするのですかね?」

 

「来たらわかる」

 

「秘密?そこ隠すの?気になるじゃん」

 

「……貴様は黙ってくればいい」

 

 

何、このキングオブ俺様な態度。

こう言うのよくないと思うよ!俺はさ。

 

どこか偉そうな秋田壮介の態度に、俺が不満気な目を向けると、その瞬間俺は背中に強い衝撃が走るのを感じた。

 

 

ドスン

 

 

「秀様!無事ですか!?」

 

「っうぁ!?」

 

「っく」

 

 

そう、俺の背中にぶつかってきた物体。

それは声の雰囲気と、体の大きさからいくと多分、悠木君だ。

うん、絶対悠木君だ。

だって俺の事「様」付けで呼んだもん。

 

けどさ、まぁ。

今俺は背中の物体の正体を探っている場合ではありません。

 

「無事ですか!?」と叫んで悠木君が俺に激突した瞬間、俺はその衝撃を受け止めきれず、そのまま前へと倒れ込んだ。

 

わかるかな。

俺は今まで秋田壮介と向かい合わせで喋っていたわけで、その俺が悠木君の衝撃を受けて前へ倒れ込んだわけで。

 

そうすると……。

 

 

「……ごめーん。秋田壮介」

 

「……そう思うのなら俺から一刻も早く離れろ」

 

「悠木くーん、ちょっとすみやかに俺から離れてもらえるかなぁ」

 

「秀様!秀様!秀様!秀様!!あああ!朝から秀様に会えるなんて光栄の至りです!!」

 

 

うおおおおお。

この子、聞いちゃいねぇ。

つか、興奮しすぎて更に背後から回される腕と押してくる力が増して来てるんですが。

 

俺も漏れなく秋田壮介の背中に手をまわして体を踏ん張らせてもらってるんで、めちゃくちゃ秋田壮介に抱きついちゃってるんですが。

顔は見えないけど、声が怖いよマジで。

 

そして心なしか周りからは重い悲鳴のような声が上がってるんですが。

しかも、何やらパシャパシャ音を立てながらカメラのフラッシュのような光が俺達に向かって放たれているんですが。

 

 

「……おい、どう言うつもりだ。西山」

 

「……どう言うつもりでしょう」

 

 

もう混乱の余り意味深に言ってみる。

マジで俺も早く離れたいです。

 

 

「秀様!秀様!秀様―!!」

 

 

「おい、西山」

 

「すみませんすみませんマジすみません」

 

 

そんな俺達3人が離れたのは、脇にノートパソコンを抱えた野伏間君が下駄箱に現れた、約3分後の出来ごとだった。

 

 

 

 

やっちまったんだぜ。

 

マジでな………

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