第14話:極上、めちゃモテ生徒会長

 

 

 

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第14話:極上、めちゃモテ生徒会長

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【転校生はカモフラージュ!?会長の本命は犬猿の仲のあの人!】

今朝、西校舎入口前にて、現生徒会長、西山 秀(17)と現風紀委員長、秋田 壮介(17)が抱き合っているのが目撃された。

二人は以前より互いを敵視しており、イベントの度に反発し合う犬猿の仲として有名であった。

しかし今朝目撃された二人は、そのような反発ぶりとは相反し、在校生に仲の良い姿を披露していた。

関係者によると、最近の西山会長の転校生へのアピールは二人の関係のカモフラージュに過ぎないとのこと。

中には付き合って5年目だと言う話も浮上している。

なお、この二人からの正式なコメントはまだ発表されていない。

 

 

 

 

 

 

「ほら、見て下さい秀様!ここ、この写真!俺と秀様のツーショットです!」

 

「いや、悠木君!よく見て!これ明らかにスリーショットだよ!?しかも記事の文面見た!?フォーカスされてるのは俺と悠木君の方じゃないよ!?」

 

「これ、たくさん貰って来たので、一部はスクラップして保存しましょう!俺、可愛いマスキングテープを持ってるんですよ!」

 

「ちょっ!悠木君!?可愛い笑顔で秋田壮介の所を勝手にトリミングして亡き者にしようとしてるけど、現実世界じゃ悠木君がトリミングされてるよ!?」

 

「きゃっ!秀様が可愛いって言ってくれた!悠氏聞いた!?今の!」

 

「気色悪んだよお前!?何一人で暴走してんだ!つーか、オイ。これマジでどう言うことだよクサレ会長!?」

 

「……やっぱりこうなったかぁ。これ、今頃学校中に出回ってるよねぇ……多分秋田の手元にも。どうすんのー?カイチョー」

 

「秀様!もう一回、もう一回可愛いって言って下さい!」

 

「死ねよ!クサレ会長!」

 

「うあああああ!ちょっと!ちょっと待って!!!」

 

 

 

 

それぞれ違った表情を浮かべながらこちらを見てくる三人に、俺はとりあえず混乱する頭をまとめるべく机の上に置かれた新聞に目をやった。

そこには、明らかに今朝の俺と思われる男を中心とした人間サンドイッチが刻銘に激写されていた。

もちろん、俺と思われる男を挟むパン役は悠木君と、あのラスボス、秋田壮介だ。

 

つか、何。

このガチな号外。

 

記事の作りと言い写真の写し方と言い、学生のレベルじゃないように思われるのだが。

 

多分、これが夕方の駅前で配られて居たら俺は完全に有名人か何かの芸能ニュースだと思っただろう。

写真もカラーとかどんだけガチなの。

さすがお金持ちの学校ですよね。

 

 

「……ん?」

 

「どうしました?秀様?」

 

「いや、ちょっと……あれ?」

 

 

つか……そう言えば、アレ?

この真ん中の……俺?

 

 

俺は写真の中心に映る、俺と思われる男の写真に釘付けになると、思わず自分の顔に手を当ててみた。

………え、まさか。

 

 

「悠木君……あの、鏡とか……持ってない?」

 

「はい!持ってますよ!ちょっと待ってくださいね」

 

 

俺は新聞から一瞬たりとも目が離さずに、ジッと真ん中に映る男の顔を見つめていた。

そんな俺を、野伏間君や悠氏先輩は訝しげな表情で見下ろしている。

しかし、俺はドクドクと激しく波打つ鼓動に、そんな視線を気にしている余裕はなかった。

 

そう言えば、俺はこの体に入ってから、自分の姿を一度だって見た事があっただろか。

答えは、否だ。

 

俺は昨日から風呂にも入っていなければ、顔だって洗っちゃいないのだから。

そう、俺は今現在薄汚れてる筈なのに……。

 

 

「はい、秀様。どうぞ」

 

「あ、ありがと……」

 

 

悠木君から小さな手鏡を受け取ると、俺はそこに映る自分の姿を凝視した。

鏡に映ったソレは、何と言うかもう物凄い衝撃を俺に与えた。

だって……だってさぁ。

 

 

「……イケメン過ぎだろ。俺」

 

「はい!秀様はこの世で一番カッコイイお人です!」

 

「はぁ!?何寝言抜かしてんだよ!このクサレ野郎がっ!この世で一番は太一様に決まってんだろうが死ね!」

 

 

俺の思わずこぼした一言に可愛い双子ちゃん達が同時に、そして相反する事を俺に向かって叫んでくる。

しかし、自分の顔に夢中な俺は、その二人に対して何か言葉を返してあげる事ができなかった。

 

 

「うわぁ……」

 

 

鏡に映る俺。

それは、あの見慣れたどこにでも居そう平凡な顔ではなく、ましてや風呂に入っていない男の薄汚れた顔でもなかった。

 

そこに映るのはただ、誰がどう見てもカッコイイと口を揃えて言うであろう、クッキリと整った男の顔が、そこにはあった。

 

わお。マジですか。

 

 

「……野伏間君……」

 

「どうしたの、カイチョー。具合でも悪いの?」

 

 

俺は混乱するままに隣に居た野伏間君の顔を見ると、自分の顔を触ったまま思わず呟いていた。

 

 

「俺って、かっこいいね……?」

 

「え?まぁ、うん。……そうだね」

 

「う、わー……ホント予想外過ぎる」

 

 

苦笑しながら俺を見つめる野伏間君の隣で、俺は更に髪やら頬やら、自分の顔の至るところに触れまくった。

この体のヤツは俺の思っていたようなクズで役立たずの生徒会長ではないかもしれない。

仕事もデキて、顔もすこぶるいい。

そして親衛隊なんか持っちゃってる、実はスペシャルな生徒会長だったのかもしれない。

 

 

 

 

この西山 秀という男は

 

 

 

 

俺とは正反対の生徒会長だったのかもしれない。

 

 

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