第14話:*****

 

「とりあえず、この写真の状況については朝、カイチョーが言ってた通り、事故?なんだよね?まさか、カイチョーがガチで秋田と付き合ってるとかは……ないよね?」

 

「ありません。誓います。あれはサンドイッチの呪いです」

 

 

俺がピシリと背筋を伸ばしながら言うと、野伏間君は苦笑しながら隣に居た悠氏先輩に「だそうですよー?」と口を開いた。

悠木先輩は、野伏間君のその言葉に少しだけガッカリしたような表情を浮かべると、がっくりと肩を落としてしまった。

その間、ずっと中指は俺に向かって立てられっぱなしだった。

 

まるで、体と顔が別の生き物のようで凄く興味深い光景だよ、うん。

 

 

「あーぁ。テメェとあのカタブツと付き合ってたら、なんとかこの生徒会も持ちこたえられると思ったのになぁ……。そうすれば、太一様もこんな苦労をせずに済むのに……」

 

「先輩。どうせカイチョーと秋田の仲にもし何かがあっても、秋田はそんな事じゃ生徒会への敵視を緩めたりしないよ。アレは本当にカタブツだし」

 

 

それに、カイチョーと秋田って……

 

と俺を見て微妙な顔をしてきた野伏間君に、俺はブンブン頭を縦に振った。

 

そうだよ、あり得ないよ。

俺、アイツから妄想で既に2回も殺されてるんだよ!?

しかも、二次元でしか聞いた事のない「愚か者」発言を直々に受けたんだよ。

 

 

「あり得ないです!」

 

「わかったっつーの!まぁ、確かにテメェが秋田に突っ込んで腰振ってんのも、掘られて腰振ってんのも究極に想像したくないしな」

 

「………………」

 

 

可愛い顔してそう言うエグイ下ネタやめて。

言っておくが、この体の人はどうだか知らないけど、俺はまだ清い体なんだからそう言うのよして欲しいわ。

悠木先輩の言葉に、俺がうすら寒い思いをしていると、そこへ野伏間君がまたしてもよく意味のわからない事を言い出した。

 

 

「でも、今のカイチョーならどっちかって言うとネコだよねー」

 

「野伏間君。だからね、俺はネコではなく俺は学校の忠実な犬なんだよ」

 

「ははっ、そうだったね。カイチョーは確かに犬だ」

 

 

犬だと笑われながら、ちょいちょい撫でられる頭に、俺は自分が既に野伏間君から幼児扱いすらされて居ない事に気付いてしまった。

どうやらこれは、犬扱いのようだ。

まいったな、これでも俺はホモサピエンス歴17年だと言うのに。

 

そんな俺を犬のように撫でる野伏間君を見て、悠氏君は突然俺と野伏間君の間に割って入って来た。

それは、今まで俺を見て浮かべていたような般若のような恐ろしい形相ではなく、キッと唇を無一文に結んだ、どこか耐えるような表情だった。

 

ついでに、俺の腕は隣に居た悠木君に引っ張られる。

 

 

「もう、いいっ。腐れチ○ポ。お前、何か用事あるんだろ!?早く行って来いよ!」

 

「秀様、それなら俺は秀様にお伴します!」

 

 

同じ顔に、今度は似たような表情で詰め寄られ、俺は思わずコクコクと声も出さずに頷いていた。

まぁ、確かに昼休み中に秋田壮介の所に行かねばならないが。

 

一体どうしたと言うのだろうか。

 

 

「秀様!行きましょう!」

 

「うっ、うん。わかった」

 

「太一様!お疲れでしょう?俺が紅茶でも入れて差し上げます!」

 

「…………あー、うん。じゃあ、頼もうか、な」

 

 

俺と野伏間君は互いに、互いの親衛隊長にひっぱられると、ズルズルと俺は生徒会室から連れ出された。

生徒会室を出る時に最後に見たのは、悠氏先輩に無理やり椅子に座らせられ、チラリと……

 

チラリと俺の方を見て微笑んだ野伏間君の顔だった。

その野伏間君の表情に、俺は胸がホカホカすると引っ張られていない方の手で小さく手を振ってみた。

しかも、テレパシー付き。

 

 

野伏間君、お昼ご飯。楽しみにしててね。

(コンビニ飯だけど)

 

 

伝わる筈ないとは思いながらも、俺は一人力の籠ったテレパシーを彼に送ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

—————-

その頃。

風紀委員の会室。

 

 

 

「あの……秋田さん……コレ」

 

「ん?どうした。何かまた問題でも起こったのか?」

 

「いえ、あの……その……新聞部からの号外で……」

 

「号外?今日は何かあったのか?問題が大きくなりそうなら、場所と被害状況を調べておけ。その如何によっては俺が直接向かおう」

 

「いえ、そうではなく……コレを……」

 

「一体何だと言うんだ、俺も暇では………ぶはっ!?な、なんだこれは!?」

 

「いえ、俺に聞かれても……今、校内中に配られていますよ……」

 

「……おのれ、西山……アイツこれが狙いだったのか……!」

 

「あの、秋田さん……ソレ本当ですか?」

 

「違う!断じて違う!違うからなっ!?」

 

「隠しているとかではなく……?」

 

「違う!違うんだ!皆、聞いてくれ!これは誤解だっ!」

 

 

 

 

秋田 壮介は委員会メンバーからの探るような目と、一人闘っていたのであった。

 

 

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