幕間:コンビニにて

 

 

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幕間:コンビニにて

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第3棟管轄、総合城嶋運営部

第4売店

 

アルバイト合計人数7人。

営業時間

朝7時~夜12時

 

 

そこで働くコンビニ店員の一人であり、第4売店の店長と言う肩書きを持つ少年。

 

平山 哲氏(ひらやま てつし)

18歳

 

彼は、借金のカタにこの学園にてコンビニ店員として日夜懸命に働く、勤労少年である。

彼の借金について、生い立ちについては、この物語では余り関係のない事なので割愛させて頂く。

 

彼は、運営時間の殆どを、このコンビニで過ごしている。

自分と同じ年頃の少年たちが日々勉強をする姿を少しばかり羨しい思いで見つめながら、哲氏は今日もコンビニで働く。

 

 

「あれっ?了(りょう)さん!昨日、商品を届けるのは明日になりそうって言ってませんでしたっけ?」

 

「あー、悪い。悪い。アレ、コッチの手違いだったわ。普通に物資届いてたから持ってこれたぜー」

 

 

哲氏は、午後の授業の始まった静かで誰も居ない店内で、やって来た運送会社の了に向かって「えぇぇ」と不満気な声を上げた。

どうやら、昨日の本社の連絡ミスで、昨日の連絡はなかった事にされたらしい。

 

 

「あー、だから悪かったって。お詫びに棚入れ手伝ってやっから」

 

「もう……。お客さんに明日までコーヒー牛乳来ないって言っちゃったじゃん。あの人楽しみにしてたのに」

 

「コーヒー牛乳?あぁ、そういや、今回はいつもより仕入れの数をスッゲェ増やしてたよな?なに、その客そんなにコーヒー牛乳買ってくの?っと、ほら、そっち持ってけ」

 

 

哲氏は了から渡され商品の山を手に取ると、よろける体を支えながら必死で商品を店内へと運んだ。

その中には、ちゃんと注文通りいつもより多めのコーヒー牛乳も見つけ、哲氏は少しばかり口元が緩むのを止められなかった。

 

 

「そうなんですよ。今まで店に来たとこなんか見た事なかったのに、昨日から急に。しかも自分の分だけじゃなくて、友達の分もって言って何回も買いに来たりするから、本当にすぐなくなちゃうんですよ。了さん!あんまり乱暴に扱わないで!」

 

「へいへい。なんつーの。友達の分までそんなに大量に買ってくなんて、さすが金持ちのお子さんは違うねぇ。と、言いたいが、買ってるもんが買ってるもんなだけに、かなり庶民派な奴だとみた」

 

 

そう言って、フンフン言いながら高い所の商品を置いて行く了に、哲氏は心底助かったと息を吐いた。

この了と言う男、どうやら昔は格闘技かなにかをやっていたらしく、体つきもしっかりしており、その上身長もあるので、このような力仕事をしてもらえると凄く助かるのだ。

特に、そこまで身長のない哲氏にしてみれば、高い部分の商品の棚入れをしてもらえる事は、その日の労働の半分は体力を使わずに済むので願ったりかなったりだ。

 

 

「それが!聞いて驚かないでくださいよ?コーヒー牛乳買いまくってる人って、この学園の生徒会長さんなんですよ!」

 

「はぁ?この学校の生徒会長っつたら、そうっとうな金持ちの筈だろうが。なんでコーヒー牛乳なんだよ……わっかんねぇな。金持ちの考える事は」

 

「でも、意外と話してみると凄く楽しくて話しやすい人でしたよ?俺にも凄い親切だったし。でも今日は変な記事が学校中に出回って迷惑してるとかなんとか言ってたなぁ。大丈夫かな、会長さん」

 

 

そう、哲氏が楽しそうに笑うのを斜め上から見下ろしていた了は、少しだけ口角を上げると、少しだけ目を細めてコーヒー牛乳を棚に置いた。

 

 

「金持ち学園の生徒会長っつーからどんなヤツかと思ったら……そいつ。ただのバカだな」

 

「まったく。了さん、会った事もないのに何て事言うんですか?失礼だなぁ」

 

「コーヒー牛乳好きの生徒会長なんて、バカって相場が決まってんだよ」

 

「はぁ、何でそうなるんですか?」

 

 

そう、哲氏が眉を潜めながら了を見上げると、了は一つだけコーヒー牛乳を持ってクルリと哲氏に背を向けた。

 

 

「ほら、残りは一人で頑張れ。借金のカタ君」

 

「ちょっ!了さん!それ商品!しかも勝手にジャンプ読まないで下さいよ!!それも商品!」

 

「会社にツケといてー。………ったく、最近はコロコロコロコロ連載陣変わりやがって……俺らが学生の時がピークだな。黄金時代も過ぎ去った過去だわなぁ」

 

「文句言うなら読むな!」

 

「それとこれとは別だっつーの。大体なんだよ、学校にジャンプって……持ち込み禁止で持ちこむのこそ、スリルがあっていいっつーのに」

 

 

そう、ブツブツ言いながらジャンプを立ち読む大人の後ろ姿を見ながら、哲氏は一人深いため息をつくと、一人せっせと棚入れを行ったのであった。

 

 

 

手には、まだ冷たいコーヒー牛乳が一つ。

 

 

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