俺は、視界の片隅で黙々と机に向かう会長の姿に、またしても何かが痺れるような感覚が走るのを感じた。
そしてその瞬間、俺は一気に気が引き締めると、また自分の仕事へと意識を集中しようとした
次の瞬間。
キーンコーンカーンコーン。
静かだった生徒会室に本日何度目かになる授業終了を知らせるチャイムが鳴り響いた。
一応、これで6限目の授業は終わった事を知らせるモノであるため、一部3年の特進クラスを除き、全学年の1日の授業は終わったと言う事になる。
あぁ、今日も1回も授業を受けられなかった。
俺は密かに次の期末を心配しながら授業終わりのチャイムを聞くと、それと同時にガタンと何かが別の音が教室内に響くのを聞いた。
「野伏間君、俺、ちょっと行ってくる!」
「……へ?行くって、どこへ!?」
突拍子もなく荷物をまとめ、どこかへ行こうとする会長に俺は慌てて尋ねてみた。
今はどこかに遊びに行ってる暇も時間も1秒もないのだ。
そんな時に、会長は一体どこへ行こうと言うのだろう。
しかし、そんな突拍子もない事を言い出した会長に、俺は自分自身が思いのほか焦ったり不安を感じたりしていない事に気付いた。
何故だろうか。
俺は頭の片隅で考えていると、俺の言葉で立ち止まった会長が俺に向かって振り返った。
その以前より大きく見える彼の目が、俺をジッと見つめる。
そんな会長の目に、俺はまたしても頭がジンと痺れるような感覚に陥るのを感じた。
「えーっと……あ!それよりさ!俺、野伏間君に聞きたい事があるんだけど!」
「なに?会長」
会長の手には大きなファイル数個と、筆記用具。
それにノートが何冊か。
会長はきっと“何か”しようとしているのだろう。
この生徒会を救うために。
俺は真剣な目でこちらを見てくる会長に、同じく真剣な顔を向けると、次の瞬間、会長の顔がフニャリと緩んだ。
「(あ)」
フニャリと緩んだその顔に、俺は瞬間的に、何かソレが答えのような気がした。
この非常時に、俺が不安にならない答えが、そこにある。
「野伏間君!あのさ、俺と野伏間君て、何年何組!?同じクラス!?」
「は……?」
「野伏間君!ここは何も突っ込まず!黙って教えて!」
そう勢いよく叫んでくる会長に、俺は混乱しながらも次の瞬間勢いよく叫んでいた。
「2年A組!会長と俺は同じクラスだよ!」
「やった!野伏間君とは同じクラスか!よかった!なんか凄く楽しそうだ!」
会長は何を今さら、と言う事で顔いっぱいに笑顔を浮かべると、そのままガタガタと激しい音を立てながら勢いよく生徒会室を飛び出して行った。
一体、何なのか。
やはり、会長は変わった。
性格も、行動も、言動も。
けれど、一つだけ変わらないものもあった。
「………不思議だねぇ」
会長の笑った顔は、何故か俺を凄く
安心させるのだ。