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その頃、生徒会室。
「…………カイチョー。いきなりやってくれるねぇ」
たった一人の生徒会室で、野伏間 太一は笑った。
先程、学校中に響いた放送の声。
あれは明らかに“彼”のものだった。
何をするつもりなのだろう。
気になる。
知りたい。
野伏間 太一はその沸々と湧いてくる想いに蓋をしてフゥと息を吐く。
あぁ。
彼は、一体どんな顔であの放送をしたのだろう。
まぁ、多分満面の笑顔だろうが。
野伏間 太一は放送の声から読みとれる彼の表情を思い浮かべると、パソコンの手を止めコップに注がれたコーヒー牛乳に口をつけた。
彼が買ってきて、結局、一緒に飲む事の叶わなかったコーヒー牛乳を。
そして、もう一つ。
彼の分のコーヒー牛乳は、先程冷蔵庫へとしまってきた。
帰ってきたら、今度は自分が彼にこの甘い飲み物を出してあげようと。
彼が自分の仕事に向き合うように、今は自分も自分の仕事に向き合おうと。
そんな気持ちを胸の奥に抱きながら。
野伏間 太一は一人の教室で、しかし、以前とは違う暖かい心持で仕事に向かった。