第24話:続・俺の幸せはここにある

 

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第24話:続・俺の幸せはここにある

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生徒会室に戻ると、そこはホストクラブでした。

 

 

 

「あ、カイチョー。朝からどこ行ってたのさぁ?」

 

「おい西山、テメェ各クラスの文化祭の出しモノのプリント、まだ出てねぇって言われたぞ。俺が他の先生から怒られただろうが、あぁ?今日のHRで使うんだとよ。早く準備しろ」

 

 

 

なんか知ってる美形と、更にホストみたいな美形が生徒会室に居る。

胸元のシャツがわざとらしく開けられ、顔はちょっと二日酔い見たく気だるげ。

しかも俺の席に座ってる。

え、何ここ。

 

いつからホストクラブになったの。

マジで朝からどうした。

指名はいっちゃった感じっすか。

 

 

「えーっと、ドンペリっすか」

 

「……おい。何言ってんだ、朝から寝ぼけてんじゃねぇぞ。西山」

 

 

俺の知っているホストクラブの知識を懸命に集結させたもののヤツの反応はイマイチだった。

ここは「ドンペリ一丁入りましたー!」とか言ってめっちゃテンションを上げてくるもんだと思っていたが。

 

 

 

……え、うん。

つーか、もう冗談はこの辺にして。

 

この大人、誰。

危ない系の人ですかね。

夜の帝王ってやつですか。

困りますけど、ここ学校ですけど。

 

俺は急いで野伏間君の元まで足を動かすと「どこ行ってたのー?カイチョー?」と尋ねてくる野伏間君の手を掴み、部屋の隅の方まで引っぱった。

その間も、なんかよくわからないホスト野郎が眉間に皺を寄せながらコッチを見ている。

え、何この大人。

怖いんですけど。

 

 

 

「ねぇ、野伏間君。あの男だれ?めっちゃ今こっち見てるよ。夜のお仕事の人?怖くない?」

 

「っえ……、あー、うん!………思う。すっごい怖いよね」

 

 

俺がコソコソと野伏間君に問いかけると、野伏間君はどこか半分笑いながら頷いてくれた。

え、そこ笑うところじゃないし。

つーか、これ野伏間君はあのホスト野郎の正体知ってるパターンだ、絶対。

 

 

「野伏間君ぜったい、その顔知ってるっしょ。なんかもう二人並ぶと夜のホストクラブでナンバー1とか2とか言って豪遊してそうだし。ドンペリの味を知る顔だもん、二人とも。ねぇ。つーかアレ、本気で誰よ。何で生徒会室に居るの?酔っ払って間違ってきちゃった人?ヤバくない?通報した方が良くない?ここ一応健全な学舎だよ?ヤバくない?」

 

 

俺がチラチラとホスト野郎を見ながら言うと、野伏間君は更にお腹を抱えてクツクツと笑いを噛み殺していた。

いや、だからここは笑うとこじゃねぇし。

 

え、何これ。

もしや野伏間君のお兄さんですけどって思いもよらぬパターンっすか。

 

 

そんな、俺がどこかぶっ飛んだ思考に脳内を走らせていると、野伏間君は笑いで声でひゅうひゅう苦しそうな息を整えながら、俺の肩をポンポン叩いて来た。

 

 

「いや、俺もよく知らない人だよ。ここ最近見なくなったから、マジで記憶から消えてなくなろうとしてた……アレ誰だっけなぁ。なんかね、ここ最近モジャモジャのケツ追っかけてたってのだけは記憶にあるよ。でも通報しようか?なんか怖いもんね」

 

「え、え。その顔さ、絶対野伏間君は知ってるよね!?え、何?これ。あの人マジで通報しても良いパターン?モジャモジャのケツって意味わかんないけどヤバくない?ねぇマジで先生とか呼んでくる?不審者居ますけどって」

 

「あー、いいね先生呼んで通報してもらおうか」

 

 

そう、野伏間君が俺の背後を見ながら大きく頷いた時だった。

 

 

 

「おいっ!テメェら全部聞こえてんだよ!?喧嘩売ってんのか!?」

 

「っひぃぃ!!」

 

 

俺のすぐ後ろで聞こえてきた低い怒声に、俺は思わず目の前の野伏間君に抱きついて、そのままさりげなく野伏間君の背後に隠れた。

情けないとか、男のくせにとか、そう言う性差別な言葉は受け入れない。

 

だって怖いものは怖い。

そうだろうが。

 

そんな俺のビビリな反応に野伏間君は、もう堪えることなく大爆笑し始めると「よしよし」と言いながら俺の手を握ってくれた。

 

その間もホスト野郎はずっと俺達を睨んでいる。

 

ヤバい。

これは最強のホスト野郎かもしれない。

夜の世界に伝説を残す的な……なんかヤバいホスト野郎かもしれない。

関係ないけど、ホストって聞くと肝臓が弱ってるイメージがあるのは俺だけだろうか。

 

いや、まぁとりあえず、めちゃくちゃ怖いっす。

 

 

「おい、西山、野伏間。冗談もその辺にしとけ!俺はテメェらと違ってこの後授業があんだよ!?」

 

「っは!なにそれ。俺達だって寝ずに毎日生徒会の仕事に追われてんですけどー。ガキの尻追っかけてるだけで仕事放置してた大人に言われたくなんだけどなぁ。………っくく。不審者」

 

 

未だに小さな声で笑い続ける野伏間君に、ホスト野郎は諦めたように俺を見ると「西山。プリントは?できてんのか?」と意味のわからない事を言ってきた。

 

え、つーか、だからさ。

 

 

「あんた、誰」

 

 

 

俺は思わずホスト野郎に口を開くと、一瞬ホスト野郎はポカンとした表情で野伏間君越しに俺を見下ろしていた。

しかし、すぐにまた眉間に深い皺を刻むと、どこか気だるそうに前髪をかき上げる仕草をしてくる。

 

ヤベェ、やっぱこの人、名のあるホストだわ。

動きがもう一般人のソレじゃねぇもん。

闇夜の覇者だわ。

 

 

「え、すみません。マジで、俺そう言うホストクラブとか詳しくないんでちょっとわからないです」

 

「っテメェ!いつまでやってんだ!?西山!?」

 

「っははははは!!」

 

「野伏間!てめぇもいつまで笑ってんだ!?」

 

「あの、やっぱしドンペリってお酒は本当に実在するんですか」

 

「お前はもう黙れ!西山!?」

 

「っあはははは!」

 

 

 

その後、約5分間。

野伏間君の大爆笑が生徒会室にこだました。

 

 

 

 

 

 

 

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