※生徒会メンバーの少し寂しい独白

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※城嶋学園生徒会サボり組
生徒会メンバーの少し寂しい独白
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生徒会副会長
五木 佐津間(いつき さつま)の独白
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無理して笑わなくていいと言われた。
愛想笑いなんかしなくても、いいんだと。
お前ばっかり無理しなくても、仕事ばかりしなくても、学校でお前のしたい事をしていけばいいと言われた。

そんな事を言われたのは初めてだった。

生徒会に入るのも当たり前で、親衛隊の人間から媚びを売られるのも、特別な存在かのように扱われるのも。
全てが俺の“当たり前”だと思っていた。

そんな自分や周りの状況に、不満があったかどうかなんて自分でも覚えていない。

けれど、静かに「俺の前では無理して笑わなくてもいいんだぞ」と笑いかけられた瞬間。
俺は酷く今までの自分が、無理をしていたのではないかと思いだした。

静の傍に居れば、今までの自分とは違った自分になれる。
本当の、自分の望んでいた自分になれる。

無理しない、愛想笑いなど浮かべる事のない。

優しい、満たされた気持ちを手に入れたと思った。

なのに。
どうしてだろうか。

寂しい、そう感じた。
走り去る、彼らの背中をとても遠く感じる。
昔は、俺もあの背中と共に駆け抜けた筈だったのに。

笑う秀の背中と、それに伴って走る太一の背中。

その背中を見て俺は思い出していた。

あの日。
俺が、まだ幼かったあの日。
クラスの集団から抜け出し、彼らと共に知らない森を駆け抜けたあの日の事を。

何する気なんですか!

そう叫んだ俺に秀は笑ってこう言った。

『行ってからのお楽しみだっつーの!』

何をするのだろう。
何が起こるのだろう。

そう、確かにあの瞬間。
俺の気持ちは今とはまた別の想いで満たされて居た。
高揚する気分と、走る自分の鼓動の早さに、俺はひたすら彼らの後ろに続いた。

あぁ、俺の“本当”とは一体どこにあるのだろうか。

俺は、どこか隙間の空いたような気持ちで、あの日を、あの瞬間を、

無性に懐かしく思った。

 

 

 

生徒会書記
岡崎 陣太(おかざき じんた)の独白
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俺は、話すのが苦手だ。
たくさん、喋りたい事はあるのに、いつも俺は口に出せずに終わる。
人と付き合うのが苦手で。

でも、何故か周りにはたくさん人が寄って来る。

苦手で、苦手で、俺は学校が苦手だった。
沢山の人の視線をあつめて、自分には向いていない生徒会役員になって、発表したり、注目を浴びたり、知らない人にたくさん声をかけられたりする。

俺はいつも上手く話せないから、ずっと悔しくて、嫌な気分になる。

頑張って話そうとしたら、もうその話しは終わってて。
俺はいつも置いて行かれる。
嫌な気分になる。

そんな時、静という子が俺の前に現れた。
静は凄い人だった。

俺の気持ちを、話してないのにわかってくれる、凄い人だった。

静は言った。
無理して口に出さなくてもいいって。

俺はお前の気持ちがわかるからって。

そう言ってくれた時。
俺は凄く嬉しかった。
静と一緒に居ると、安心する。
置いていかれる、寂しい、悔しい、嫌な気持ちにならずに済むから。

安心な気持ち。
ずっと一緒に居たい気持ちになる。

なのに。
どうしてだろう。

静に会いに行こうとしてるのに、寂しい、悲しい気持ちになってしまった。

目の前を楽しそうに、俺には目もくれずに走っていく会長達を見てたら、悲しくなった。
どうして、こんな気持ちになるんだろう。

悲しくて、悔しい気持ち。
前は、俺もあぁやって一緒に走ってたのに。
俺は今一緒に走ってない。

背中を見てるだけ。

その背中を見ながら俺は少しだけ思い出していた。

あの日。
まだ俺が小さかった、あの日。

真っ暗な森の中で、火をともした時の事を。
置いて行かれたくなくて、真っ暗なのが怖くて、泣きだしそうになる俺。
その中で俺を照らした小さな火と、カイチョーの笑顔。

『何だよ!お前は一緒にやらないのか!?』

怖がる俺に向かってそう言った会長に、俺は怖かったけど大きく首を振った。
そしたら、また会長は笑ってマッチを夜の空にかざした。

その小さな炎の光を思い出して、

俺は無性に泣きたくなった。

 

 

 

生徒会監査
油屋 友也(あぶらや ともや)の独白
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俺には双子の弟が居る。
名前は友樹(ともき)。

俺と友樹は誰が見ても見分けられないくらいそっくりで、父さんや母さんも、俺達をたまに間違ったりする。

俺達はそれが楽しかった。
俺と友樹はいつだって二人一緒で、誰からも見分けられない特別な双子だと信じていた。

だけど、それは年を重ねるごとにちょっとした不満にもなっていった。
いつも誰も俺を友樹と見分けてくれない。

俺だって友樹とは別の人間なのに。
友樹の影じゃない。
俺は俺なのに。

そう思ってモヤモヤしたり、イライラしたりする日が増えてきた。
でも、友樹と離れたら、それは俺が俺じゃなくなるみたいで、怖くて離れられなかった。

俺は一人になったらどうなるんだろう。
友樹とそっくりじゃなくなって、一人で人生を歩んだ事なんて今まで俺は一度もない。
隣には友樹。

生まれた時から一緒の友樹。
友樹と一緒だから安心して歩ける。

でも、でも、でも。
俺の事に気付いてほしい。

俺と友樹は別の人間なんだよ。
似てるけど、全然違うんだ。

そんな俺の心の叫びに気付いてくれたのが、静だった。
静は、友樹と一緒に居る俺も、すぐに俺だと気付いてくれた。

二人は似てるけど、全然違うじゃないかって。
そう言ってくれた。
友樹の影なんかじゃない。

俺は俺だって言ってくれた。

だから、俺は静が大好きになった。
俺を一人の人間として見てくれるから。
友樹と同じみたいに言わなから。

俺は静が大好き。

なのに。
どうしてだろう。

俺は静と居れればそれで幸せなのに。
大好きな静さえ居ればいいのに。

なんか凄く物足りない気分になってしまった。
笑いながら俺の目の前を走って行く会長と太一。

その二人を見てたら、俺も一緒に走りだしたくなった。

そしたら、凄く楽しい気分になれるんじゃないかって思ってしまった。
似てるとか、別の人間だとか、そう言うの関係なしに、ただ楽しい気分になれるんじゃないかって。

そんなワクワクする気持ちに、俺は遠い昔の頃を思い出していた。

夜空に咲いたきれいなきれいな大きな花火。
俺はそれをはしゃいで見てた。

きれいだ、きれいだって叫びながら。
そしたら、火をつけて、どんどん花火を打ち上げていた会長が俺に向かってマッチを1本差し出してくれた。

『ほら、友樹もやってみろよ!』

友樹。
カイチョーは真っ暗闇の中、俺の方なんか見ないでそう言った。
俺は友樹じゃない。
けど、差し出されたマッチは確かに俺に向かって差し出されている。

『早くしろって!友也!先生に見つかったらもう上げらんないぞ!』

今度は友也。
正解だけど、もう本当にテキトーなんだなって思った。
けど、その時はそんなのどうでもよかった。

友也でも友樹でも、確かに会長の差し出した手は俺に向かって伸びていたから。
この火は俺のもの。

夜空に咲く花火と、俺の目の前にある小さな火。

あの日の事を思い出し、何故だか俺は、自分がとても幸せな気持ちになっている事に驚いていた。

そして思った。

あの日に。戻りたいと。

 

 

 

生徒会監査
油屋 友樹(あぶらや ともき)の独白
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俺には友也と言う双子の兄が居る。
友也は俺のお兄さんの筈だけど、双子だから余りそう言うのは感じない。

むしろ、友也は俺から絶対離れない。
俺の後ろを、俺の真似をして、ずっとついてくる。

それを可愛く思って、俺はいつも友也の手を引いて歩いて来た。
俺は友也が大好きだ。
同じ顔だって皆言うけど、俺は友也は特別かわいいと思っている。

俺なんかとは全然違う。
友也はいつもいつだって、俺のちょっと後ろの隣を歩いてきてくれる。

可愛い可愛い俺のお兄さん。
けど、大きくなるにつれて友也は悩んでいた。

俺と同じにみられるのが少しだけ気に入らないみたいで、いつも俺の方を羨ましそうにみてくる。
俺達は全然違うよ。
友也の方がいっぱい可愛いよ。

いくら俺がそう思っても、友也の悩みは晴れない。
だから、友也は俺とは全然似てないんだぞって周りに見せるために、髪型を変えたり、癖をつくったりいろいろな事をしてきた。

けど、そうすると友也はすぐに俺と同じようにする。
同じようにみられたくないと思ってても、俺の真似をしてくる。

そんな友也が可愛かったけど、俺の真似をする度に泣きそうになる友也が可哀想で仕方が無かった。

だけど、そんな友也を笑顔にしてくれる人が現れた。

静は俺と友也がどんなに似て居ても、一瞬で見分けてくれる。
静が俺と友也を見分けるたび、友也はとても幸せそうな顔になる。

だから俺は静も大好き。
俺の大事な大事なお兄さんを笑顔にしてくれるから。

だから静と俺と友也の3人で居れる事が幸せだった。

なのに。
どうしてだろう。

3人じゃ、物足りないんだ。
あの楽しそうに駆け抜ける背中を見た途端、俺はそんな事を思ってしまった。

物足りない。
ねぇ。物足りないよ、友也。

3人じゃ足りないんだ、友也。

俺はもう遠くで消えそうな会長と太一の背中を見ながら、ちょっとした昔の事を思い出していた。

真っ暗な森の中を、泣きそうになる友也の手を引いて俺は走った。
後ろから先生が追いかけてくる。
こっちだ、こっちだって言いながら会長の声をたどって俺は走った。
バクバク鳴る心臓。
でも、体中に広がる高揚感。

森の脇に逸れて集まった6人のメンバー。
俺の背中に隠れながら俺の手を握る友也。
その中で会長はハァハァ息を切らせながら俺に向かって言った。

『友也、弟は一緒につれてきたか』

違う。
俺は友樹で、俺の後ろに隠れてるのがお兄さんの友也。

俺がムキになって言うと、カイチョーはそんな俺を大きな声で笑い飛ばした。

 

『ばーかっ!そんなもんどっちでもいいんだよ!二人共一緒ならそれでいいんだ!』

 

そう言って笑った会長。
その瞬間、俺もあぁそっか。って納得した。
二人一緒ならそれでいいのかもって。

結局、先生に見つかって凄く怒られた。
けど、俺は楽しかった。

友也が居て、みんなが一緒だったあの時が。
俺が笑っていられた、あの時が。

 

楽しくて楽しくて、忘れられないんだ。

 

 

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