あぁ、くだらない。
あぁ、面倒臭い。
あぁ、本当に……
他人なんて、自分の人生の足枷に過ぎない。
少女は高校生活も半分を終えた、高校2年の10月。
そのいつもと変わらぬ、どこにでもありふれた1日を、酷い倦怠感を抱きながら迎えていた。
少女は、自分に与えられた自由のカウントダウンを数える日々にうんざりしていた……
事に加え、今日も今日とて何を言っても理解力の向上の見込めない生徒会長に絶対零度の視線を向けて声を荒げなければならない事に疲れを覚えていた。
「新谷君。いい加減にしてください」
「ごごごごご、ごめんなさい。み、副会長!」
こんな下らないやり取りをしている、この1分1秒も、少女にとっては自由の終わりを示すカウントダウンなのだ。
そう考えると、少女の苛立ちは収まる事を知らなかった。
少女は、今日も目の前でヘラヘラと笑う役に立たない生徒会長に向かって、ままならない苛立ちをぶつけている。
あぁ。
本当に、下らない。
他人はどこまで、自分の人生の足を引っ張る存在であり続けるのだろう。
最後の自由。
最後の抵抗。
なのに、何一つ、自由も感じなければ、抵抗にもなっていない。
少女は自分の望み通りの道を選んだ筈だった。
これが、最後の自由だと、意気込んで足を踏み入れた場所の筈だった。
忌々しい父親の血もなければ、泣き寝入りして毎日泣くだけの母の血も、全てを忘れて居られる場所に居たくて、この進学校にやって来た。
何の突出した良さも、何の魅力も感じない、ごく普通の進学校。
しかし、ここは少女の人生をかけた決断の末に降り立った学校だった。
残りの人生全てを賭けた、人生最後の自由時間。
ゆえに、何の突出した部分などなくて良かった。
ただ、あの家族から邪魔される事なく、毎日普通に過ごせればよかったのだ。
なのに。
「そこ、さっきも言いましたよね、新谷君。どうしてそう同じ間違いばかりするんですか。あと、次の漢字、間違ってます。きちんと見直しして下さい」
「あ、うおお……!ご、ご、ご、めんなさい!」
なのに………。
少女は得意げな表情で手渡された書類を、めった切りの言葉で突き返しながら小さくため息をついた。
あぁ、どこまで他人は自分の足を引っ張るのだろう。
————–
本当なら、少女は彼女の中に流れる、有能で、有名な大財閥の父の血により、父親の経営する名門女子校に行く筈だった。
そこは、聞けば誰もが知るような大きな会社や財閥の家の、由緒正しい少女達の学び屋。
将来を約束された少女達は、各界を代表する男達に恥じぬ妻となるべく、情操教育の全てを施されるのだ。
そんな、花よ蝶よと育てられる名門女子校への道を、少女は自らの父親に泣き縋り断った。
少女は、ある大きな財閥の男の私生児として生まれた。
貧しかった母親が、今時、奉公と称して男の家の使用人をしている時に出来た、母親にとっては言わば過ちのような子供だったのだ。
まるで昼ドラのような設定で生まれた少女は、その後の人生も、まるで昼ドラのようにドロドロしていた。
本妻の居る男は、当たり前のように少女を自分の娘として認知しなかった。
しかし、一応、自分の血を引く少女を、世間的にも蔑ろにする事などできず、男は自分の別邸へと招き入れる事を、少女と母親への最大の譲歩とした。
使用人として、貧しさに明け暮れていた母親は、少女の背中にしがみついた。
もう、あんな貧しい生活はしたくないと、娘に相手の男の望むような優秀な子供になるように幼い頃から言い聞かせていた。
この子の傍に居れば、あの貧しさから逃れられる。
その一心で少女の母親は、まる汚ないモノでも見るかのように自分や娘を扱う本妻や、親戚達の傍で、息を殺して生活をした。
息を殺しながら母親は少女に、毎日泣きついた。
『お願いだから、お母さんを守ってちょうだい。お願いよ』
本来、守られるべき幼い子供である筈の少女は、生まれたその瞬間からその背中に母親を背負って生きて行かなければならなかった。
男を「お父さん」と呼ぶ事もできず、本妻の子供からは常に虫けらのような扱いを受け、背中に母親を背負っていた。
しかし、少女はそれを辛いなどと一瞬でも感じる事はなかった。
何故なら、少女にとってはそれが日常だったからだ。
母親を背中に背負い、同じ血を分けた異母兄弟達からは苛められる。
それが少女の日常。
故に、少女は生まれた時から一人で立って生きてきた。
人よりも遥かに激しく乱れた道を、母と言う弱い生き物を背負って歩いて来た。
母親の言うように、少女は優秀になろうと努力した。
本妻の子供にバカにされないように、必死に勉強した。
私生児だからと隅に追いやられる事を是としなかった。
毎日泣きついてくる母親を、少女は慰めた。
バカにしてくる本妻の子供を、実力で蹴落としてやった。
所詮、奴らは暖かい場所で、親に与えられた安全な柵の中で生きるお人形さんだ。
そんな事にも気づかいない滑稽なバカに自分が負ける筈ない。
そう、少女は今まで自分をバカにしてきたヤツを心から嘲笑ってやった。
男の家の中で、着実にその頭角を現してきた少女に、誰もが驚きの声を上げた。
認知されてもいない、使用人の子が、まさか。
周りのそんな反応に、少女はほくそ笑んだ。
二度と自分と母親をバカになどさせない。
させるものか。
そう少女が自分の中の力に確信と信頼を覚えた時だった。
15歳。
少女が中学を卒業すると言う時。
男が突然少女を娘として認知すると言いだした。
そして、突然少女を、ある財閥の息子と言う男と会わせた。
相手は4つ年上の青年で、少女の父親は突然将来はこの男と結婚するように少女へ言い放った。
青年はその場に居る誰よりも輝いていた。
自分の存在に絶対の自信を感じているその姿は、少女の父親をそのまま彷彿とさせて、少女は吐き気を感じた。
加えて父親は少女への婚約話と同時に、高校も自分の経営する女子校へ入れると言い出した。
優秀な才能を持つ少女を、男は我が子として公の場で公開しようと言うつもりらしかった。
その話しを聞いた瞬間、少女は衝撃を受けた。
自分が、どんなに頑張って頑張って足掻いた所で、自分も結局はこの男の用意した柵の中で動く人形に過ぎないと、悟ったのだ。
母親はもちろん、少女に父親の言う通りにするように言った。
男の娘としてきちんと認知されれば、女の中にある不安も少しは軽くなる。
そして、男の言うように相手方の青年と結婚すれば、今度こそ自分の不安は無くなる。
安心して暮らせるのだ、と母親は少女の背中にすがった。
そんな母親の姿に、少女は今まで感じていた母親への愛が一気に冷めるのを感じた。
自分を愛してくれる唯一の存在だと、少女は母親の事をとても大切に思っていた。しかし、そうではなかったのだ。
母親が一番愛しているのは、自分自身なのだ。
少女は母親の身を守る為に存在する、道具に過ぎないのだ。
そう、少女が悟った瞬間。
少女の中の糸がぷつんと切れた。
辛くない。
これが、自分の日常。
当たり前の毎日。
そう、必死に思ってきた自分の心の蓋が一気に壊れた気がした。
もう、全てがバカらしかった。
やっていられなかった。
辛かった。
母親は自分を愛してくれていない。
親戚達は、自分を汚ない存在だと言う。
父親からは優秀で体のいい駒のような扱い。
もう、逃げ出したいと思った。
少女は鬱々とする気持ちの中、それでも男の囲む柵の中から出る為に最後の抵抗をした。
このまま、この男の言う通りの柵の中へ入ってしまっては、自分の気持ちをどう立て直して良いのかわからなかった。
少女は少しでもいいから時間が欲しかった。
自由が欲しかった。
この男の娘である以上、少女はこの男の決定には逆らえない。
自分の中の力を確信した矢先に、少女は自分の非力さを目の当たりにした。
誰かの影に生きて行く事をいとわない母親とは違い、少女は誰かの作った柵の中で黙って生きて行く事が、たまらなく嫌だった。
それは、今まで少女が母親を背負い、一人で立ってここまで歩んできたという自負がそうさせたのだ。
だから、少女は後々、自分の正式な父親となる男に頼んだ。
高校までは、自由にさせてくれ、と。
それから、少女は限られた時間の自由を使い、日々を生きてきた。
————
そんな高校時代も、折り返しの時期に突入した、ある日。
何故か教師から、生徒会の副会長として立候補してくれと懇願された1か月前。
何故か副会長職以下の職全てに、かなりの立候補者がおり、それならどうして自分が立候補させられたのだろうと不思議に思った25日前。
理由は、ある少年が生徒会長に立候補すると言う話しを聞き、皆一斉に生徒会の副会長、及び書記に立候補したのだと知った23日前。
職員室で、一人の少年が生徒会長への推薦後見人をしてくれる友達が見つからないと本気で泣き喚きながら教師に相談しているのを目撃した20日前。
廊下であの少年が、一人の体の大きな少年を前に土下座して推薦後見人になってくれと叫んでいるのを目撃した、15日前。
生徒会選挙当日、推薦後見人の欠席により、突然あの少年がステージの上で自画自賛の自分推薦文を読み始めた、10日前。
しかも、彼が今年度唯一の生徒会長立候補者だと知って唖然とした、同じく10日前。
生徒会室で、少女が例の少年と隣り合わせで席に着き、新しい生徒会役員となった、1週間前。
そして。
少年の仕事の遅さとミスのせいで、生徒会全員が放課後、居残りとなってしまった、
現在。
「新谷君。みんな、あなたのせいでこんな時間まで学校に残る羽目になってるんですよ。もっと、間違いのないようにしっかりしようと思わないんですか?成長する気がないから、いつも同じ間違いばかりするんじゃないですか?」
「……すすすす、すみません!!」
パソコンのキーボードを一回一回確認しながらトロトロ文字を打ち込む少年に、少女は苛立ちながら言い放った。
どんなに怒っても、どんなに注意しても、少年は全ての作業が遅かった。
ミスも多かった。
彼は成長する気配を全く見せない。
「新谷君、私は職員室にあっちの書類とさっきの話し合いの決定事項を伝えてきますから、それまでには終わらせておいてくださいね。いいですか?」
「はっ!はい!わかりました!了解です!」
そう言ってコクコク頷く少年に、他の生徒会役員は何やら微笑まし気に彼を見ていた。
その態度が、何故か少女をイラつかせる。
少女は眉間に皺が寄らないよう、必死に無表情を作ると、少女は楽しそうな生徒会役員を横目に部屋を出た。
どうして、彼のせいでこんなに帰りが遅くなってしまっているのに、皆、あんなに笑っていられるのだろう。
どうして、話し合いでもあの少年のせいで話しが先に進まなくなてしまうのに、誰も文句を言わないのだろう。
あのへらへらした少年のせいで、上手く生徒会が回らない。
話しがスムーズに進まない。
あぁ、あのヘラヘラした顔が無性に腹が立つ。
将来に何の不安も、恐怖も感じて居ない、能天気なバカ。
あの能天気さが周りを笑顔にする。
あの能天気な男が生徒会長だから。
そんな理由で今年の生徒会は副会長以下の職が激戦となった。
しかし、少女は彼に苛立ちしか感じない。
無能で、バカで、役立たず。
なのに、周りから支持を得、生徒会長になった。
何の努力もなしに。
彼は、自分の持っていない自由を謳歌している。
少女は心の片隅に感じる少年への……自由への嫉妬に、更に腹立たしさを感じると急いでその足を動かした。
———–
「新谷君、みんなはどうしたんですか?」
少女は、少年一人になった生徒会室を見て眉をひそめた。
そんな少女の表情に気づくことなく、少年は一本指でパソコンのキーボードをのたのた打ちながら口を開く。
「待たせて悪いから、先に帰ってもらった!」
「と、言う事はさっきの書類はまだ終わってないんですね」
「ご、ご、ご、ご、ごめんなさい!あの、み、いや副会長も先に帰ってていいよ!俺の仕事だし!暗くなると危ないから!」
そう言って焦りながら一本指で、必死にパソコンを扱う少年に、少女は苛立ちを抑えながら隣の席に座った。
そんな少女の行動に少年はポカンと一瞬、呆けた表情を浮かべて少女を見上げた。
「貸してください。もう、私がやります。新谷君は帰って下さい」
「えぇぇ!いや!ダメだよ!俺の仕事だし!み、いや副会長はもう……」
「間違いだらけの書類で結局次の日居残りさせられるのはごめんです」
少女は少年を見ずに、パソコンの前から少年をどけると、キーボードに一気に文字を打ち込んだ。
それと同時に画面に素早く文字が映し出される。
その光景に、少女の背後では息を飲んだような声が微かに聞こえた。
「凄いなぁ、副会長は。何でもできるなぁ」
「何でもなんてできません。私は何もできない人間です」
少女はパソコンから目を離すことなく呟くように言った。
何でもできる人間なら、こんな場所で、残りの自由を無駄に使ったりしない。
自分の人生を自分の思うように生きる事ができる筈だ。
少女は自分の人生ががんじがらめになっている姿をただ茫然と見ている事しか出来ない自分に、
そして、何の悩みも苦しみもなくへらへらと笑って自由に生きれる少年に苛立ちと嫉妬を覚えていた。
持って生まれた彼の資質は、人を惹きつけ結局は彼を周りが助けるようにできている。
彼はそんな事も知らず、楽しく笑って、これからも自由に生きて行くのだ。
そう思うと、少女はこの少年の隣に居るのがたまらなく嫌になった。
自分は、あの父親の手の中で、彼の思うように生きるしかないのに。
少年は、笑って自由の中に居る。
そんなの、ずるい。
「副会長は、何でもできてずるいなぁ。いいなぁ」
「は?何ですか、それ」
少女は少年から発せられた言葉に思わず顔をしかめた。
ずるい。
そう、彼に思った瞬間、少女は彼からずるいなどと言われた。
しかも、納得のいかない“ずるい”を。
「副会長は、俺がずっと練習してもできない事をパッパッってするじゃん。俺が1レベル上げるのに10回戦闘しなきゃならないところを、きっと副会長は2回くらいで済むんだ。大学もいい大学に入って、副会長はかんりょうとかになって日本を裏から牛耳るんだ。凄いなぁ……」
「………意味がわかりません」
「だってそうだよ。何でもできる副会長は何もできない人より、人生でいっぱい選べる。自分の事も選べるし、他の人の事も選べる。副会長は、きっとこれからもずっと選べる事がたくさんあるんだよ。だから、将来副会長は日本とか世界の事も選べるような人になるような気がする……最強の勝ち組だなぁ」
一人でブツブツと訳のわからない自分の将来設計を話され少女は沸々と苛立ちが募るのを感じた。
自分の事など何もしらない癖に、へらへら笑って勝手な事を言って。
自分には選べる未来など、一つもないのに。
少女が拳を握りしめ、キーボードから手を離そうとした時。
更に少女の耳に少年の言葉が耳に入って来た。
「副会長は、将来の裏ラスボスなんだよ」
「………裏ラスボス?」
思わず飛び込んできた“裏ラスボス”と言う言葉。
その言葉の余りの意味のわからなさに、少女は本格的に手を止めた。
そして、少女は言葉の意味を求めるように少年の方を振り返る。
すると、そこにはいつものようにヘラヘラと頼りないバカっぽい笑顔を浮かべた生徒会長が居た。
「うん、裏ラスボス。副会長は俺が10回戦闘してる間に、きっとラスボスを倒すんだ」
「私が、ラスボスを……?」
少女は少年に尋ねながら、頭の中で想像した。
自分が自由を得るための一番の難関が何なのかを。
つまりラスボスを。
「うん。そんで副会長はラスボスを倒すんだけど、副会長はラスボスを殺さないんだよ」
「何故、私はラスボスを倒さないんですか?」
少女のラスボスは、もうすぐ父と呼ぶ存在になるであろう、あの男だ。
あの男さへ居なければ、少女は自由になれる。
ラスボスは、父だ。
「うん、表のラスボスはイロイロやる事があるから、副会長はラスボスを家来にして、最強の裏ラスボスになる」
「家来にする……」
少女は少年を見上げながら少しずつがんじがらめだった心のヒモがほどけて行くような
少しずつ、少女の未来に活路が開けて行くような気がした。
「表ラスボスは勇者と闘ったりとか、そう言う雑用係。裏ラスボスは普段はあんまし見えないけど、実際に裏から世界を操ったりしてる」
「それは、とても……悪趣味ですね」
少女はそう言いながら、知らぬ間に口角を上げていた。
悪趣味だ。
見えないところで全てを操るなんて、なんて悪趣味。
でも……。
「そうかな?俺はすっげぇかっこいいと思うけど」
「私も、そう思います」
へらへら笑う少年を前に、少女もハッキリと笑った。
そんな少女の笑顔に、少年は驚いたように一瞬目を大きく見開く。
しかし、すぐに少年はまた笑って、言った。
「副会長は、大人になったら裏ラスボスだ!」
そう、あまりに嬉しそうな表情で口を開く少年に、少女は確かに自分の将来の先を見た気がした。
自由を手にする為の選択肢を、少女は今、手に入れたのだ。
「じゃあ、新谷君は、私が裏ラスボスをしている間、何をするんですか?」
「えー、俺?俺は……」
少年は、そうしばらく腕をくんで考えるそぶりを見せると、次の瞬間、少年は何とも言えないような微妙な表情になった。
「俺は……うん。裏ラスボスが作った世界で……とりあえず1レベル上げる為に、10回戦闘してると思う」
そう言った時の少年の顔が、余りにも苦々しくて、
でも、確かにあり得そうな未来に少女は、今度は声を上げて笑っていた。
少年は1レベルの為に、毎日必死に闘い、少女は裏ラスボスになるべくラスボス立ち向かう。
少女の支配する世界の片隅で、少年はずっと闘い続けるのだろう。
その、大した魅力もない癖に、何故だか惹かれるその将来像。
そんな未来予想図に、少女は知らぬ間に自由になっていた。
選べる未来ができた。
自由への活路が開けた。
その事実に、少女は笑っていた。
それは、少女が未来への自由を奪われてから見せた
初めての笑顔だった。
————
その直後、少女は少年に衝撃の一言を告げる。
「そう言えば新谷君。いい加減、私の名前くらい覚えたらどうですか?」
「……え?」
そう、血の気の引いた少年の顔に少女は思った。
あぁ、自由ついでに、コンタクトにしてみようか。
彼の瞳の中に映る、眼鏡をかけた自分。
緑色の眼鏡をかけた、自分。
これが、なくなったら……
そしたら、少年は自分の事を裏でどう呼ぶのか。
名前を覚えてくれるだろうか。
そんな、少女にしては似合わない、浮ついた気持ちで決心した彼女の変身を
少年は見る事はなかった。