第40話:問題は、

 

 

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第40話:問題は、

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最後の問題は“人手”です。

ステージの設計者兼監督者は私が誰か適任者に頼んでおきますから、西山君はある程度の人数を集めて下さい。

 

そうですね。

仕事のローテーションを組む上でも、まぁ15人くらい居れば安心だとは思いますが。

 

本番までは後2週間。

できれば、1週間で作業を終わらせるには、その位の人数は必要ですからね。

 

西山君、これから文化祭まで忙しいと思いますが、頑張りましょうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……人手、かぁ」

 

 

俺はうーんと腕を組みながら頭を捻らせた。

まさか、高校の先生で建築を教えてくれる先生が居るなんて思いもしなかった。

 

が、結果そのお陰でステージ設置はなんとかなりそうだ。

つーか、そんなのに精通した先生が居るんなら柳場先生も、あんなに怒らないで教えてくれればいいのに。

 

と、過ぎた事をゴチャゴチャと考えていてもはじまらない。

やっとステージが設置の方向で話しが進み始めたのだ。

ここで話しを止めてしまうわけにはいかない。

 

「……でも、なぁ」

 

 

しかし、問題はそのステージを設置するための“人手”だ。

 

文化祭目前。

どのクラスも、どの部活も出しモノや準備の為に慌ただしいこの時期に、新たに15人の人員を集めるのはどう考えても難しい。

ゲームみたいに勝手に仲間になって行くしくみなら簡単なのだろうが。

 

俺は自分の開かれた指を見下ろすと、一本だけ親指を折ってみた。

 

 

まず、俺だろ。

そして………陣太は頼んだらやってくれるだろうか。

クラスのメイド服制作の方もあるし難しいだろうか。

体も大きいし体力仕事みたいな事は頼みたいのだが、メイド服だってそうそう簡単にできるものじゃない。

 

他のクラスメイトだってそうだ。

部活もあるし、クラス出店の準備だってある。

調理班とメイド服制作班だけで手いっぱいの筈だ。

 

じゃあ、それなら他には……?

他に、俺は誰を頼ればいい?

 

 

「…………他には」

 

俺は頭の片隅でずっと背を向けて鎮座している“野伏間君”の文字を振り払いながら、はぁと溜息をついた。

 

野伏間君はダメだ。

だって具合が悪いから。

 

俺のせいで、部屋が寒くなって熱が出てしまったのに、この上ステージを作るみたいな仕事なんてさせられない。

というか、させたくない。

 

また野伏間君が倒れたりしたら、本当に俺はどうしたらいいかわからなくなってしまう。

今だって凄く寂しくて頼りない気持ちなのに。

これ以上、野伏間君に迷惑なんかかけたくない。

 

 

そうなると、他には?

 

俺だろ……俺だろ……俺だろ

 

 

うん、俺しかいない。

 

俺はひたすら親指のみの折られた指を見つめながら、ちょっとだけ泣きたくなった。

俺、すんごい友達少ない人みたいだ。

いや、現に少ないんだけど。

 

どうしよう。

後、俺がよく見知った人間なんて、秋田壮介くらいしか居ない。

どうしよう。

 

頼んだら秋田壮介は手伝ってくれるだろうか。

どうだろうか。

 

嫌だって言われたらどうしよう。

本当に、俺、どうしよう。

 

 

俺がそこまで考えて鼻の奥がツンとした時だった。

 

 

「俺としゅうだろ?他には誰に頼む?俺、ステージなんて初めて作るから楽しみだなー!」

 

「っ静!」

 

「っな、何だよ秀!?」

 

 

俺は驚きながら此方を見てくる静を凝視すると、感激の余り勢いよく静の手を握りしめた。

 

まさか、まさか。

ここで静が一緒にやってくれると言うなんて思いもしなかった。

ただのうるさい後輩だとしか思っていなかったが、今になってグングン俺の中で好感度が上がりまくっている。

 

 

「静!俺、お前が居てくれてほんと良かった……。ありがとう!」

 

「なっ、なんだよ!急に……恥ずかしいな、秀は!この、恥ずかしいやつめ!」

 

 

そう叫びながらも薄く頬を染める静に、俺は思いきりグリグリと頭を撫でてやった。

 

ちょっとだけ、静を可愛いと思ってしまった。

佐藤先生の言うように、やっぱり、弟が居たらこんな感じなのかもしれない。

凄く、うるさいけど、でもやっぱり居てくれると嬉しい。

 

 

兄弟って、そんな感じなのかもしれない。

 

 

「静は本当に良い子だなぁ」

 

「……うー、なんだよ。ただ俺は文化祭やるならいろんな事しときたいと思っただけだ。ほんとに、こっち来て初めてのイベントだから……友達となんかたくさんしたいんだ!それだけ!」

 

 

言いながら手持無沙汰に自分達のメイド服のデザイン画をいじる静に、俺は更にグリグリと頭を撫でまくった。

 

友達となにかしたい、か。

 

 

「……あぁ、そうだな」

 

 

あぁ、そうだよな。

その気持ち凄くよくわかる。

面白い事たくさんして、できるだけたくさん楽しかったなぁって笑いたいもんな。

 

互いに共有できる思い出があるって、ほんとに、それは凄く……

 

 

貴い事だ。

 

 

「……しゅう?」

 

 

どこか不思議そうな表情でこちらを見てくる静に、俺は最後にもう一度だけポンポンと頭を撫でてやると、笑って手をどけた。

 

よし。

早く人数集めて、ステージしっかり作って。

できるだけ早く野伏間君に報告できるようにしよう。

 

早く野伏間君を安心させたい。

 

野伏間君に、また笑ってもらいたい。

 

 

「よし、静!とりあえず、被服室に戻るか!」

 

「うあっ!?俺そういやサボって来てるんだった!」

 

「あーぁ、怒られるぞー」

 

「お、怒られねーもん!俺はしゅうを助けてやってたんだ!」

 

 

そう、若干焦りながら走りだした静に、俺は同じく隣を走りながら笑った。

 

 

「ありがとな!静!」

 

「っ」

 

 

その瞬間、驚いたように目を見開いた静を無視し、俺は必死に足を前へと動かした。

 

 

 

 

 

 

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