※彼からのお願い

 

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放送室での話し合いを終えた放課後。

二人の少年が肩を並べ、廊下を歩いていた。

 

11月も半ばに入り、日も大分短くなってきた晩秋。

気温も落ち、肌寒さに身を震わせた少年が、隣を歩く少年を呼びとめた。

 

呼びとめられた方の少年は、遠慮のない迷惑そうな顔で呼びとめた方の少年を見る。

 

 

「何だ、西山」

 

 

そう、短く問う少年の言葉に、西山と呼ばれた少年は満面の笑みを浮かべて答えた。

 

 

「秋田壮介。お前に、一生のお願いがあるんだ」

 

 

その言葉に、秋田壮介と呼ばれた少年の表情は更に険しくなる。

もう、迷惑だと言わんばかりの気持ちが、その表情に全て体現されているようだった。

 

しかし、そんな険しい表情の少年に臆することなく、少年は笑顔のまま言葉を続ける。

 

 

「簡単なお願いだよ。秋田壮介になら、すぐできちゃうお願い」

 

 

そう言われ、険しい表情を浮かべていた少年の表情が少しだけ違和感に揺れた。

相手の少年の浮かべる、その臆面もない笑顔がどうにも気になったのだ。

 

 

「何だ、一応聞くだけなら聞いてやろう」

 

「あのさ、」

 

あのさ、

 

 

そう軽く開かれた少年の口からは、本当に、本当に何でも無いような口調で、少年の“お願い”が口にされた。

その瞬間、違和感に揺れていた少年の顔が、驚きに染められていく。

 

 

息が詰まるような感覚。

 

そんな少年を前に、笑顔の少年は、やはり何でも無い事のように、相手の少年の肩を叩く。

 

 

「よろしくな」

 

 

そう、最後まで笑って言った少年に、少年は……秋田壮介は何も言えずに立ち尽くすだけだった。

 

 

 

 

 

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