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第48話:壇上にて
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『新谷 楽』
そう、呼ばれ続けた日々があった。
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俺は一人、壇上に立っていた。
そして、目を閉じて、深く、深く、深呼吸する。
心臓の音が、これでもかと言う程、体中に鳴り響く。
俺はそんな自分を落ち着かせるように、制服のポケットに手を突っ込み1枚の紙を掴んだ。
まず、どうすればいいか。
あぁ、そうだ。
うん、まずは立候補する。
生徒会長になりたいと、手を上げる。
『先生!俺、生徒会長になりたい!』
俺はポケットの中から、掴み取った一枚の紙をゆっくりと取り出し、ハッキリと目を開けた。
そしたら、次はどうする。
あー、そうだな。
今度は誰でもいい。
自分を推薦してくれる、推薦後見人を立てる。
『頼む!白木原!俺を推薦してくれ!』
まぁ、もし万が一。
……万が一、推薦後見人が居なかったら……そうだな。
そん時は、自分で自分を推薦でもすりゃあいい。
俺は眼下に広がる、大量の自分と同じ制服を着た生徒達を見渡しながら息を吸い込んだ。
俺を見る目は、どれもキラキラと輝いている。
そして、その中で一際明るく輝く目があった。
視界の端に映る、野伏間の姿。
その目は、どこまでも明るく、そして俺だけを映しているようだった。
(ねぇ、楽しい?野伏間君)
どこか期待と希望を滲ませたその視線に、俺の心は震えた。
あぁ、これだよ。
俺が欲しかったのは、これだ。
「俺は西山秀を生徒会長に推薦する、2年1組の西山秀です!」
壇上にて、俺は高らかに宣言した。