エピローグ:秋田 壮介

 

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【エピローグ・秋田 壮介】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………おい、西山。これはどう言う事だ?』

 

『見てわかんねぇか?今年の体育祭の予算案だよ』

 

 

 

10年程前、城嶋学園には秋田壮介という、とても聡明で真面目な男が居た。

秋田というその男は城嶋学園が誇る、2大権力の一つである風紀委員会で、その集団の長を務めていた。

 

そんな彼は城嶋学園のもう一つの権力者集団である生徒会執行部と常に対立していた。

 

学生たるも。

男たるもの。

リーダーたるもの。

 

そう、彼の中に広がる「在るべき姿」は真っ直ぐで、誰よりも力強かった。

 

しかし、そのまっすぐさは楽しさと面白さを第一に追い求める生徒会執行部とよく対立した。

 

対立する度、秋田は生徒会の前に臆する事なく立ちはだかった。

彼は実直で常に冷静沈着であったが、しかしその実だれよりも熱い男だったのだ。

 

だから、彼は常に生徒会へは全力でぶつかってきた。

 

そうする事が彼の、彼の中にある「自分自身の在るべき姿」そのものだったのだ。

 

 

 

『おい、西山!こんな滅茶苦茶な予算案で体育祭が賄えるわけがないだろうが!ふざけるのも大概にしろ!』

 

 

 

そう、彼は高校最後の体育祭を前に叫んでいた。

叫ぶ相手は決まっている。

 

 

『いちいちウルセェ野郎だな!よく見ろ!十分足りてるっつーの!』

 

 

そう、秋田に向かって面倒臭そうに切り返した男、

 

俗に言う生徒会長と呼ばれる彼は秋田の手に握りしめられている予算案を指さしながら叫んだ。

 

秋田の手元にある生徒会から提示された体育祭の予算案。

それは従来のように全ての準備を外部委託して賄えるような計画では到底なかった。

 

故に秋田は目の前に立つ口元に不敵な笑みを浮かべる男が次に発する言葉が、なんとなく理解できた。

 

『貴様……まさか……』

 

 

 

予想できた答え。

それがまた、なんとも腹が立つ答えで。

 

 

『予算内でまかなえるようにテメェら風紀と俺ら生徒会で人手を出すんだよ!準備に掛ける金は極限まで減らす!その分、本番でバーンと使う!』

 

『貴様が勝手に決めるな!?』

 

 

 

案の定、予想通りの相手の答えに秋田は勢いよく机を叩き相手を睨みつける。

 

それが秋田のするべき行動であり、彼のあるべき姿だ。

 

だが、

 

しかし、その後。

彼が滅茶苦茶と称した予算案は、無事採用され、その年の体育祭へ反映された。

 

 

それが、秋田のするべき行動であり、あるべき姿なのだ。

 

 

彼は実直で、不器用で、熱い男で

 

 

そして、優しい男でもあった。

 

 

 

そんな彼も、10年程前にこの城嶋学園を去った。

卒業と言う名の華々しい花道を、彼も真っ直ぐ歩いて行ったのだ。

 

 

 

 

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