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ガキの頃から一緒だったからって、何でも分かってる訳じゃねぇ。
むしろ、近すぎて逆に良く見えないなんて事は、よくある話だ。でも、それは俺と敬太郎に関しては例外だと思ってきた。
俺が敬太郎の事で、知らない事なんて何一つない。
そう、心のどっかで思って来た。
それなのに、
なぁ、敬太郎。
「コレ、何だよ……」
俺は、敬太郎の机の上に置いてあった漫画を捲りながら、息を呑んだ。
「え?はっ!?」
そこには、男同士でセックスをし合う、とてつもなくエロい漫画が置いてあった。こんなの、もしかするとその辺のエロ本よりもエロイかもしれない。
何だ、これは。一体どういう事だ。
なんで、こいつらは男同士で、こんな事してんだ!?
「まさか、敬太郎。お前……」
そして、どうして敬太郎がこんなモンを持っていやがるんだ……!
「男が、好きなのか……?」
転生してみたものの(番外編5)
我慢しながら、一生俺と居ろ!
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その日、俺はいつものように敬太郎の家へと向かっていた。
なんでかって?そりゃあ、受験前で勉強しろと周りがうるさいからだ。
——–一郎、お願いだから高校までは行けるように頑張りなさいよね。
——–野田。お前このままじゃ受験できる学校なんて一つもないぞ。
——–あれぇ、イチロウ?お前、コーコー行くつもりだったの?ムリじゃね?
ウゼェ、ウゼェ、ウゼェ、ウゼェ!
どいつもこいつも好き勝手言いやがって!俺がいつ進学したいなんて言った!?テメェらが勝手に言い始めただけじゃねぇか!
「……」
と、最初は勉強なんかやってられっかと思ってたさ。けど、まぁ最近は、別に勉強もしてやっていいかなと思ってきた。
——–一郎。過去問持って来たからさ、一緒にやろ。
篠原 敬太郎。
俺の幼馴染。多分、物心ってヤツがつく頃には、既に俺には敬太郎の記憶があるので、マジの幼馴染。
気付いたら、敬太郎は既に居た。むしろ、居なかった事がない。
——–一郎も、志望校は明義受けるんだろ?俺も、受験するならそこしか無理だって言われた。あそこより偏差値低い公立ってないし。ほんと、マジで頑張ろうな。
そんな敬太郎が、受験のプリントを持って毎日俺ん家に来るようになった。
中学に入ってから、まぁ、少し……そう。少しだけ、ツルむ友達が変わって喋んなくなった時期もあったが、今はまたこうして普通に話すようになった。
——–なぁ、一郎。明義受かったら、電車通学になるじゃん。最初の方は一緒に行こうな。
敬太郎は他のヤツらと違って、俺をイラつかせない。
なにせ、敬太郎は俺に向かって上から目線でモノを言わねぇ。それに、アイツは“分かって”る。何をしたら俺がキレるか、嫌がるか。そういう所をよく弁えてるせいか、一緒に居て凄く楽だった。
——–え?なんで最初の方だけかって?いや、普通に一郎も友達が出来たら、その友達と学校行ったりするだろうなって思って。違うのか?
そして何より、敬太郎は思ったよりバカだ。
俺と違って授業を受けてる癖に、問題を欠片も理解してねぇ。下手すると、俺の方が分かってる事があって、ちょっと優越感すら感じられる。
そういう所も、まぁ気に入っている。
——–え?えぇっ!?一郎、それ正解だ!何で分かったんだ!?さっきの例題の応用?う、うそだろ?ちょっ、教えて教えて!俺を置いてくな!
結論。
俺は、敬太郎となら、受験勉強をやってやってもいいかなと思っている。だから、今日も敬太郎の家に来てやったってのに……、
「なんで居ねぇんだよ、敬太郎のヤツ」
敬太郎の部屋には、誰も居なかった。