1:知らねぇ顔

 

◇◆◇◆◇

 

 ガキの頃から一緒だったからって、何でも分かってる訳じゃねぇ。

 むしろ、近すぎて逆に良く見えないなんて事は、よくある話だ。でも、それは俺と敬太郎に関しては例外だと思ってきた。

 

俺が敬太郎の事で、知らない事なんて何一つない。

そう、心のどっかで思って来た。

 

それなのに、

なぁ、敬太郎。

 

「コレ、何だよ……」

 

 俺は、敬太郎の机の上に置いてあった漫画を捲りながら、息を呑んだ。

 

「え?はっ!?」

 

 そこには、男同士でセックスをし合う、とてつもなくエロい漫画が置いてあった。こんなの、もしかするとその辺のエロ本よりもエロイかもしれない。

 

 何だ、これは。一体どういう事だ。

 なんで、こいつらは男同士で、こんな事してんだ!?

 

「まさか、敬太郎。お前……」

 

 そして、どうして敬太郎がこんなモンを持っていやがるんだ……!

 

「男が、好きなのか……?」

 

 

 

 

転生してみたものの(番外編5)

我慢しながら、一生俺と居ろ!

 

 

———

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—–

 

 

 

 その日、俺はいつものように敬太郎の家へと向かっていた。

なんでかって?そりゃあ、受験前で勉強しろと周りがうるさいからだ。

 

 

——–一郎、お願いだから高校までは行けるように頑張りなさいよね。

——–野田。お前このままじゃ受験できる学校なんて一つもないぞ。

——–あれぇ、イチロウ?お前、コーコー行くつもりだったの?ムリじゃね?

 

 

ウゼェ、ウゼェ、ウゼェ、ウゼェ!

どいつもこいつも好き勝手言いやがって!俺がいつ進学したいなんて言った!?テメェらが勝手に言い始めただけじゃねぇか!

 

「……」

 

と、最初は勉強なんかやってられっかと思ってたさ。けど、まぁ最近は、別に勉強もしてやっていいかなと思ってきた。

 

——–一郎。過去問持って来たからさ、一緒にやろ。

 

 篠原 敬太郎。

 俺の幼馴染。多分、物心ってヤツがつく頃には、既に俺には敬太郎の記憶があるので、マジの幼馴染。

気付いたら、敬太郎は既に居た。むしろ、居なかった事がない。

 

 

——–一郎も、志望校は明義受けるんだろ?俺も、受験するならそこしか無理だって言われた。あそこより偏差値低い公立ってないし。ほんと、マジで頑張ろうな。

 

 

 そんな敬太郎が、受験のプリントを持って毎日俺ん家に来るようになった。

 中学に入ってから、まぁ、少し……そう。少しだけ、ツルむ友達が変わって喋んなくなった時期もあったが、今はまたこうして普通に話すようになった。

 

 

——–なぁ、一郎。明義受かったら、電車通学になるじゃん。最初の方は一緒に行こうな。

 

 

敬太郎は他のヤツらと違って、俺をイラつかせない。

なにせ、敬太郎は俺に向かって上から目線でモノを言わねぇ。それに、アイツは“分かって”る。何をしたら俺がキレるか、嫌がるか。そういう所をよく弁えてるせいか、一緒に居て凄く楽だった。

 

 

——–え?なんで最初の方だけかって?いや、普通に一郎も友達が出来たら、その友達と学校行ったりするだろうなって思って。違うのか?

 

 

 そして何より、敬太郎は思ったよりバカだ。

 俺と違って授業を受けてる癖に、問題を欠片も理解してねぇ。下手すると、俺の方が分かってる事があって、ちょっと優越感すら感じられる。

 そういう所も、まぁ気に入っている。

 

 

——–え?えぇっ!?一郎、それ正解だ!何で分かったんだ!?さっきの例題の応用?う、うそだろ?ちょっ、教えて教えて!俺を置いてくな!

 

 

 結論。

 俺は、敬太郎となら、受験勉強をやってやってもいいかなと思っている。だから、今日も敬太郎の家に来てやったってのに……、

 

 

「なんで居ねぇんだよ、敬太郎のヤツ」

 

 

 敬太郎の部屋には、誰も居なかった。

 

 

転生してみたものの 番外編5
米騒動
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