2:キモい顔

 

 

 秋も深まり、肌寒さを感じて来た頃だ。それまで、俺の家までプリントを持って来ていた敬太郎が言った。

 

『なぁ、一郎。次から俺の部屋で勉強しね?俺の部屋なら、エアコンあるし。ここよりはあったかいよ』

 

 そう言われて、俺は二つ返事で頷いていた。

 確かに、俺ん家は狭い上に、暖房器具がリビングにしかない。しかもあるのはストーブだけだ。まぁ、金がねぇから仕方ないが、それでも正直、寒みぃ部屋で凍えながら勉強っつーのは堪えるモンがあった。

 

『わかった。次から、俺がお前ん家に行く』

『久しぶりだな。一郎が俺ん家に来んの』

 

 そう言って嬉しそうに笑う敬太郎を横目に、俺は『コイツ、俺の事めちゃくちゃ好きだよな』と、少しばかり気分が良くなるのを感じた。これだから、敬太郎と一緒に居るのは楽だ。

 

 敬太郎は俺をバカにしねぇ。ウゼェ事もしねぇ。ダルイ事も言わねぇ。それに、俺の事が好きだ。

 

『っは、そうでもねぇだろ』

 

 その日から、俺はだいたい敬太郎が学校から帰ってくるだろう時間を見計らって、アイツの家に行くようにしていた。だいたい、行けば部屋で敬太郎が部屋を暖めて待っている。

 それが、今までの当たり前だったのに。

 

 

「さっむ」

 

 玄関は開いていた。敬太郎の部屋に入れば、どうやら一度帰って来てはいるようで、鞄もある。

ただ、エアコンが入っていなかったので、勝手に設定温度を爆上げして起動させておいた。ピピ、という機械音と共に温かい風が吹き込んでくる。

さみぃ。さっさとあったまれよ。

 

「……まぁ、そのうち戻って来んだろ」

 

 俺はひとまず部屋で敬太郎を待ってやる事にすると、手持ち無沙汰に部屋の本棚を物色した。そう、テキトーな漫画でも読んで暇を潰そうと思ったのだが……、

 

「最近、全部読んじまったヤツばっかだな」

 

 そう、最近は敬太郎の部屋で過ごす事も増えたので、軒並み本棚の本は読み尽くしてしまっていた。俺が、どうしたもんかと部屋の中をウロついていると、何やら見慣れない漫画が敬太郎の机の上にあった。

 

 最近買ったのだろうか。

 

 

「げ、少女漫画かよ」

 

 

 俺は表紙の絵に眉を顰めると、表紙と裏表紙にサッと目を通した。どうしたモンかと思ったが、敬太郎が買ったのだとすれば、それは少女漫画だとしても気にはなった。アイツは昔から、俺と漫画の好みは似通っていた。

 

 その敬太郎が買ったのだとすれば、これはもしかすると、面白いのかもしれない。

 

 そう思って、気軽に頁を捲ったのが間違いだった。

 

 

「……なんだ、こりゃ」

 

 

 最初から、違和感はあった。

 少女漫画かと思ったが、女が一人も出てこなかった。ただ、女みたいな顔の男は居た。そして、その違和感は頁をめくる度に大きくなっていったのだ。

 

「は?なんで、コイツ……男の癖に男の事を好きとか言ってんだよ」

 

 しかも、幼馴染を。

 どうやら、主人公の男は、昔から幼馴染の事が好きだったらしい。ただ、もちろん口には出せず、片想いをしていた。は?

おいおいおいおい、そりゃあ一体どういう了見だ!

 

「キモ過ぎだろ」

 

 しかも、気になるのが、その幼馴染というのが、どうも不良臭いのだ。口も悪く、毎日喧嘩に明け暮れている。ただ、子供の頃は二人共仲が良かったようで、主人公とは中学に上がってから、徐々に距離が開いていったとか。

 

 背筋が冷える。何だコレ。

 どっかで聞いたような話じゃねぇか。

 

「ちょっ、え、は?」

 

 本当は気色悪くて、すぐにでも本を閉じてやりたかったが、何故か俺は頁を捲る手を止められなかった。

しかし、それがいけなかった。

 

「はぁぁっ!?」

 

 あれよあれよという間に、その二人はベッドの上でセックスを始めた。しかも内容が濃いの何のって。今までのストーリーの頁に対して、ヤッてる頁の比率が凄まじい。その辺のエロ本やAVなんかより、よっぽどエロい。

 

「……け、ケツに突っ込んでやがる」

 

 最初は色々あってすれ違っていた二人が、今やAVもビックリな程の濃厚な絡みで、ケツに幼馴染のナニをぶっこまれて喘いでいる。その顔ときたら、そりゃあもう気持ちよさそで、完全にメスの顔だった。

 

「敬太郎、お前……まさか」

 

 俺は幼馴染に抱かれながら気持ちよさそうに涙を流す主人公の姿に、喉がカラカラと干からびるのを感じた。

まさか、敬太郎。お前。

 

 

「男が、好きなのか……?」

 

 

転生してみたものの 番外編5
米騒動
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