番外編1:犬、羞恥心を覚える!(初代×犬)

【前書き】

 

本編直後。

さて、これから久々にヤるぞ!というタイミングで、急に芽生えた羞恥心によって犬勇者が初代様の言う事を聞けなくなるお話。

ヤれてないですが、一応R18という事で!

短いお話ですが、どうぞ。

 


 

 

 初代様は俺に会う為に、魔王になった。その事を初代様の口から語られて、俺は少し、いや大分とおかしくなってしまった。

そう、俺は本当に駄犬になってしまったのである!!

 

 

犬、羞恥心を覚える!

 

 

 その後、俺はしばらくの間、初代様にキスをしてもらっていた。

何回やっても慣れない俺に、初代様は最初こそ少しイラついていたが、そのうち勘を取り戻したように、俺に細かく指示を出してくれるようになった。

 

「口、開けろ」

「ぁい」

「俺の舌に絡めて、後は俺のやる動きを反対側で真似しろ」

「はい」

 

 初代様の指示は的確だ。だから、安心して従っていれば良かった。そこに俺の意思を介在させなくても良い分、凄く楽で好きだった。

 

 筈なのに――。

 

 ちゅっ、ふっ、ん。んんん…~ッ。っあ……。

 

 薄目を開けて見ると、初代様が物凄く眉間に皺を寄せて、俺の口に自らの口をくっ付けていた。この眉間の皺は苦しいんじゃない。気持ち良いからこんな風になっているんだ。そんな事くらい、陰キャで童貞の俺にも分かる。

 

 俺は他の事は何も分からないけれど、初代様の事だったら少しだけ分かるのだ。

 

ふーふーっ。

初代様の荒い鼻息が俺の唇に当たる。その息に触れるのすら、今は気持ちが良い。すると、そろそろキスは終わるのだろうという兆候が見えた。なにせ、それまで口内のありとあらゆる場所を這いまわっていた初代様の舌が、今や俺の舌の先端に触れている。

 

あ。初代様の口が離れていく。いやだ。

 

「ぁっ、っ」

 

 ぺろ。

 

 俺は離れていく初代様を追いかけるようにその舌を舐めた。

すると、舐めたと同時に、初代様の唇がピクと震える。その様子に、俺は何を思ったのか上半身を少しだけ起こし、初代様の唇を軽く食んで唇に沿って舌を這わせていた。

 

「はぁっ」

 

ちゅっと音を立てて、唇を離す。

 あぁ、初代様。唇がきれいだ。色も形も全部。さすがだ。そんな事をぼんやりと思っていると、次の瞬間、俺は自分のした行動のハタと固まってしまった。

 

 俺は、今何をした?

視線を動かしてみれば、初代様が驚いたように俺の事を見下ろしている。

 

「お前……」

「ぁ、あぁ、あ」

 

 初代様の戸惑ったような声に、俺は一気に体中が沸騰するような衝動に駆られた。

 

「す、すみませんっ!言われてないことをして、して、しまいましたっ!」

「……いや、別に」

「す、すみません。ごめ、ごめんなさい……ごめんなさいっ」

 

 俺は体が煮え滾るような感覚に堪えられず、腕で顔を隠した。

熱い、熱い、熱い。腕に当たった俺の顔は、驚くほど熱くて、更には汗でベタベタしていた。汚い。きっと、今の俺の俺は相当みっともない顔をしているのだろう。

 

「はぁっ、はぁっ」

 

 肩で息をする。呼吸まで荒くなってきた。

俺は、一体どうしたんだろう。前まではこんな事はなかったのに。初代様の言う通りに動けていた筈なのに。

久々に再会したといっても、俺にとっては大して久々ではない。お城で初代様と別れ、時空転移した俺は、すぐに魔王と化した初代様と再会したのだから。

 

それなのに、なぜ。

 

「犬。顔、隠すな」

「っ!」

 

 初代様の命令だ。はい、と言ってすぐに腕をどかさなければ。それなのに、どうして。

 

「うっぅぅぅ」

 

 腕が、どかせない。

どうして、どうして、どうして!なんで、俺は初代様の命令に従えない!この腕を顔から、目の上からどかすだけなのに。

 

「おい、犬。俺の言う事が聞けねぇのか?」

「っ」

 

 初代様の命令が再び続く。良かった、どうやらあんまり怒っていないようだ。むしろ、声だけだと少し楽しそうだ。

でも、いつ初代様に不愉快な思いをさせるか分からない。だから、早く言う通りにしないと。

 

「はぁっ、はぁっ。す、みま。せっ。いま。どかし、ます」

 

 どかします。と言ったのに動けない。だって、今この腕をどかしてしまったら、見られてしまう。俺の驚くほどみっともない顔が。初代様は全部が綺麗だからいい。そんな人に、俺のみっともない顔なんて見せたくない。

 

だって、嫌われたくない。恥ずかしい。

 

「おい、犬」

「うぁっ」

「お前……真っ赤じゃねぇか。照れすぎ」

 

 気付けば、俺の腕は初代様の大きな手によって、いとも簡単に取り払われていた。怒らせてしまったかと身構えたが、俺のユラユラの視界に映ったのは、嬉しそうな顔の初代様だった。

 

「ぁ…しょだい、さま。すみませ。かってなこと、ばかり、して」

「いい。これは成長だ。許す」

「は、い」

 

 初代様は俺が命令に従わなかった事を、アッサリと許してくれた。こんなの、一体どこが“成長”なのだろう。ただの命令違反じゃないか。

 

どうやら、初代様は俺が居ない間にとても寛大になられたようだ。

それもそうかもしれない。俺にとっては少しの時間だったが、初代様にとっては数百年もの月日が流れているのだから。きっとその間に、こんな駄目な犬の命令違反も、軽く流せるくらい、大きくなられたのだ。

 

初代様は立派だ。でも、だからと言って初代様の寛大さに甘えていてはいけない。ちゃんと、前のように言う事を聞いて初代様に少しでも喜んで貰わなければ。

 

 そう、思ったのに。

 

「おい、犬。足、開け」

「っ、は、は、はい!」

 

それなのに、俺ときたらその後も全然初代様の言う事を聞く事が出来なかった。

 

「おい。テメェ聞いてなかったのか?なぁ?俺は、足開けっつったんだよ」

「あ。ぁ、あ……は、は、は。い」

 

 初代様の楽しそうな声が聞こえる。俺は先程同様「はい」と返事をしているにも関わらず、少しだけしか足を開けなかった。

 なんで!今までは出来ていたのに!

でも今思えば、どうして今までの俺はあんなに簡単に初代様の前で、あんな汚い場所をさらけ出せていたのか、全く分からない。

 

「これじゃあ、挿れらんねぇなぁ」

「す、す、す、すみません!すみません!」

 

 初代様の固い下半身が、俺の足にゴリゴリとこすりつけられる。

 

「っ!」

 

すごい。服の上からでもその固さが異様なのが分かる。きっと魔王になってから女性を抱く機会も減ってしまったのかもしれない。なにせ、この魔王城に居るのはモンスターと初代様だけみたいなのだ。

 

 ハーレムのような魔族の女性達が居るわけでもなさそうだし。これは、早く初代様をスッキリさせてあげなければ。

 

 と、頭では分かっているのに……!

 

「はぁ、はぁ……はぁ、ふー、ふーは、はい。しょだ、いさま。ごめ、ごめなさい。」

「ん?どうした。なぁ。足、開けよ。前まで上手に出来てたじゃねぇか?」

「うっ、ふぅっ」

「なぁ、俺の言う事が聞けねぇ理由でもあんのか?なぁ、犬」

「え、と……」

「正直に言え。言ったら、怒らねぇよ」

 

 怒らないなんて言って。初代様が最初から怒る気がないのは、なんとなく分かる。だって、声が凄く嬉しそうだから。

 でも、ここで初代様の言葉にすら答えられないようでは、俺が俺自身を許せない。だって、初代様は俺の為に長い間ずっと待っていてくれたのに。

 

こんなに寛大に、立派になられて。

 

「なぁ、犬。言えねぇのか?」

 

これ以上、初代様に“俺”をガッカリさせたくない。

 

「は、ずかしくて」

「なんで?」

「き、たない、ばしょ。なので」

「でも、前は平気で見せてたじゃねぇか」

「……しょ、だいさまに」

「あぁ、」

「きたない、と……おもわれたく、なくて」

「ふーん、なんで?」

 

 初代様。楽しそう。こんな言う事も聞かない俺の言い訳を聞いて、こんなに楽しそうな顔をしてくれるなんて。やっぱり数百年の時の差を感じる、

 それなのに、俺ときたら情けない。

 

そう、思うと涙が滲んできた。自分に腹が立つ。

 

「しょだいさまに、き。きらわれたく、ない」

 

 涙のせいで、盛大に声が震える。チラと視線だけ動かしてみれば、そこには少しだけ息を荒くしながら、俺の事を見下ろす初代様の姿が見えた。

 

「……犬、お前見ない間に良い顔するようになったじゃねぇか」

「え?」

 

 そう、何故か心底満足そうに俺を褒めてくれる初代様。そんな美しい彼の表情に見とれていると、俺の頭に固いモノが触れた。

 

「良い子だ」

「ぁ」

 

 初代様の手だ。

初代様の大きな手が、俺の頭をゆっくりと撫でてくれている。指を髪の毛に絡ませながら。流れる指先が俺のうなじを擽るように。その手は何度も何度も俺の頭を優しく撫でてくれている。

 

 あ、あぁ、初代様が俺を褒めてくれた。俺の頭を撫でてくれている。初代様が幸せそうに笑って、俺だけを見て――

 

あっ、

 

「っ、ぁんっ」

 

 そう思った時には、俺の体が完全に弾けていた。

 

「……は?」

「……え?」

 

 初代様と俺の呆けた声が重なる。初代様が俺の下半身に目をやる。そこには、紺色の薄い寝間着の布地が、色濃く色付いている。

 

「犬、お前」

「っぁ」

 

 もう、駄目だ。俺は完全におかしくなってしまった。

 

「お前、まさか。俺に頭撫でられて……イったのか?」

「っぁ、ぁ……!」

「なぁ、おい。言ってみろよ。お前は、俺に撫でられただけでイったのか?」

「っは、っはぁ」

「言え」

「お、おれは。しょ、しょだいさまに、あ、あたまを……っ」

「あぁ」

 

 初代様の強い視線を感じる。もうずっと頭がクラクラしてヤバイ。あつい、あつい、あつい。

 

「……あたまを、なでられて、イき……」

 

 目の前で、何かが光った気がした。

 そこまで言って、俺は自身の鼻から凄まじい勢いで何かがたれてくるのを感じた。それと同時に、スッと意識が遠のく。

 

「おい!犬!しっかりしろ!」

「ぁぅ」

「おいっ!ちょっ!ヒール!……って、何で止まんねぇんだよ!鼻血の癖に!」

 

おい、犬!犬!

 

 初代様の呼ぶ声がする。早く返事をしないと。俺は遠のく意識の中で最後に、必死に口をだけ動かした。

 

「は、い」

 

 どうやら俺は、言う事を聞けなくなった。

 ホントの駄目な犬になってしまったようだった。

 

 

 

おわり


 

【後書き】

犬勇者に羞恥心という自我が芽生えました。

これまで、すいすい出来ていた事も、再会後は羞恥心により動きがたどたどしくなっていくという。初代様的には恥ずかしがってもらった方が俄然燃えるみたいです。

 

最初はTwitterおしゃべりで書いていたけど……長い上に全年齢のTwitterになんか載せられないと、小話化しました。