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キッコウ 3時間前
お返事が遅くなってしまい申し訳ございません。
豆乳さん。私は、豆乳さんが男性でも、女性でも別にかまいません。私は、豆乳さんの作品、引いては人間性に惹かれてやりとりをさせて貰っています。
そして、お気づきかとは思いますが、俺も男です。
(昨日はお互い、少し慌ててやりとりをしてしまいましたね)
確かに、大声で言える趣味ではないかもしれませんが、悪い事をしているワケではありません。むしろ、豆乳さんは素晴らしい作品で誰かを喜ばせる事の出来る人です。誇って良いと思います。
豆乳さんさえよろしければ、これからもどうぞよろしくお願い致します。
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「良かったぁ」
バスの中、最初にフォロワー「1」の数を確認し、キッコウさんからフォローを外されていない事を確認する。ビビリ過ぎだと思うけど、未だにあの時のフォロワー「0」がトラウマなのだ。
「これからも、やり取りしてくれるって」
それに、男同士という事で、気持ちも少し気楽になった。更にキッコウさんのメッセージは続く。
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キッコウ 3時間前
新人の彼への指導上手くいったようで良かったです。
豆乳さんの文章で教えて頂けるなんて、その新人の彼は本当に運が良い。むしろ俺がそのマニュアルを頂きたいくらいです。
最近、夜間は冷えます。
体調など崩されませんよう、豆乳さんもご自愛ください。
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「へへ」
嬉しい。キッコウさんは、すぐに俺をチヤホヤしてくれる。俺のマニュアルなんか見ても、きっとキッコウさんには訳が分からないだろうし、「コイツ、ミスし過ぎだろ」と思われて終わりに違いないのに。
今日は良い一日だ。
俺は、今朝書いた更新分の小説をサイトにアップすると、更新履歴をSNSに載せた。
「あ、そういえば」
ポケットから茂木君のくれた飴玉があるのを思い出した。そうだ。今日は茂木君も俺に構ってくれた。寂しがり屋でかまってちゃんの俺にとっては、天国みたいな一日である。
「これも、SNSに載せてみよう」
男だってバラしたから、もういいかなと俺は自分の手に持っている飴玉を写真に撮った。初めてSNSに画像を投稿する。
どうせキッコウさんしか見ていないと思うと、気楽だ。それに、キッコウさんにも茂木君の事を少しでも知ってもらいたかった。
だって、茂木君が【慇懃無礼ですが何か?】の攻めのモデルなのだ。それなのに、俺のせいで、悪い印象になってしまっているから、良い子なんだよと教えてあげたい。
「新人の男の子から飴を貰いました。俺が電話にたくさん出ていたので、気を遣ってくれたみたいです。彼は、とてもしっかりした良い子です」
のど飴の写真を添付する。
「おおっ、写真が付いた」
なんだか、普通の人のSNSみたいで感動する。あ、そうだ。一応コレも書いておこう。
「そして、実はこの飴をくれた子が【慇懃無礼ですが何か?】の攻めの子のモデルでもあります。いつも頑張って無理をする子なので、小説の中でくらいは主人公に甘えられるようにしてあげたいと思い書いています。彼は、俺と違って、とても堂々としていて、格好良い子です。良い攻めです」
「ふう……」
俺はスマホをポケットに仕舞うと、持っていた飴を口の中へと放り込んだ。
「スースーする」
乾燥していた口の中に一気に唾液が広がる。今日は大変だったけど、良い一日だったと思う。
「茂木君も、好きだ」
なんてチョロイ奴なんだろう。でも、俺はかまってちゃんだから。かまってくれる優しい人は皆好きなのだ。
【いいね!】0
「キッコウさんは、もう寝ちゃったかなぁ」
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豆乳 6時間前
そして、実はこの飴をくれた子が【慇懃無礼ですが何か?】の攻め子のモデルでもあります。いつも頑張って無理をする子なので、小説の中でくらいは主人公に甘えられるようにしてあげたいと思い書いています。彼は、俺と違って、とても堂々としていて、格好良い子です。良い攻めです
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「……良い、攻め」
【いいね!】1
その日、そのSNS投稿に「いいね!」が付いたのは、投稿されて六時間が経過した。明け方三時の出来事だった。