≪前書き≫
ヘマとヒスイが二人で魔王城を目指して旅をしている途中のお話です。
R18となっております。
夜、夢中で互いの体を求め合い過ぎて、夜明けに気付かなかったヒスイ。
情事の途中で石に戻ったヒスイと、まだ体の熱を持て余したヘマの……自慰という名のセックス話です。
※途中一見切ない気持ちになりかけますが、結果アホエロです。
どうぞ。
夜。普通ならば誰もが足を止める漆黒の時間。
そんな暗闇の中を歩く、二人の人影があった。
【ヘマ、約束守れるよ!】
「イシ君!魔王城はあとどのくらいで到着するの?」
「もう一つ大陸を越える必要がある。まだまだだ」
「そっかー」
そう言って、ご機嫌な足取りで背中の荷物を揺らすのは、ヘマと言う名のヒーラーの青年だ。年は二十歳。
しかし、その姿はどう見ても十五、六といった風体にしか見えない。加えて、その歩調の落ち着きの無さは、最早十代前半と言っても差し支えなかった。
「おい、ヘマ。あんまり走るな。転ぶぞ」
そして、もう一つの影。
それは、フラフラと不安定な足取りのヘマに寄り添いながら歩く青年だ。彼は背中には立派な剣を背負い、その体つきは、細身だがしなやかな筋肉に覆われている。
彼の名前はヒスイーー
「イシ君、大丈夫だよ!転んだらヒールするから!」
ではなく「イシ」だった。
元々、「ヒスイ」という名前を持っていた彼だが、その名前を呼ぶ者は既にこの世に一人も居ない。故に、彼はもう「イシ」だった。
彼も、ヘマ同様その年齢は二十歳である。肉体的な年齢は、だが。
ワケあって百年間、石になっていたせいで、実年齢は百二十歳なのだが、その体の時は石化と同時に止まってしまっている。
故に、二人は同い年といって差し支えなかった。
「ったく、怪我する前提で動くな。だいたいお前は……」
「っうわ!」
「おいっ!ヘマ!」
言ったそばから、ヘマは足元の木の根に引っかかってその場に倒れ込んでしまった。そんなヘマにヒスイは慌ててヘマへと駆け寄った。
「いたた。転んだー」
「言わんこっちゃねぇ」
「あはは!イシ君は預言者様みたいだね!すごいや!」
「……膝と手、血ぃ出てんぞ」
「あっ!ホントだ!でも、ヒールするから大丈夫!ヒール!……あれ?」
ヒール。
そう、ヘマが初級回復魔法の詠唱を行うが、周囲にマナが集まってくる気配は一切ない。どうやら失敗してしまったようだ。
「もう一回!ヒール!」
「……ヘマ、もうM Pが無いんじゃねぇのか」
「あ」
そうかも!と、目を瞬かせながら自分を見上げてくるヘマに、ヒスイは片手で眉間を押さ込んだ。
「お前……さっきの戦闘でヒールグレースを使いまくってただろ」
「そうだったかなぁ」
「こうなるから、あんまり無駄撃ちすんなって言っただろ?」
「ん-と。まぁ、使えないなら仕方ないからいいや!」
「よくねぇっ!ちょっと座れ!手当して行くぞ」
「こんなの痛くないよ!早く魔王城に行こう!イシ君の呪いを早く解きたいもん!」
そう言って、足と掌に血を滲ませたまま先に行こうとするヘマに対しヒスイは更に眉間の皺を濃くした。
ヘマはいつもそうだ。ヒスイの怪我には、どんな擦り傷にも過剰に反応する癖に、いざ自分の事となると一気に無頓着になる。
それこそ、自分の寿命すら平気で差し出す程に。
「ヘマ!」
「っ!な、なに?」
「こっちに来い」
ヒスイの口から飛び出した殆ど怒鳴り声に近い呼び声。
「い、イシ君。ど、どうしたの?」
その声に、ヘマはそれまで明るかった表情を一気に強張らせた。
ただ、必死に笑おうとしているのだろう。口角は震えながらも、何かに引っ張られるように上に向かっている。
「……っ」
「イシ君。あ、あの!」
その顔に、ヒスイは思わずヒクと喉を鳴らした。いけない。ヘマに対して「低い怒鳴り声」は禁句だった。
「ご、ごめんね!もう転ばない!走らないし!落ち着くよ!大丈夫!次の戦闘までにはちゃんと回復出来るようになるね!」
「……ヘマ」
「ごめんね!」
自分の失態に対し必死に体を縮こませながら謝るヘマに、ヒスイは堪らない気持ちになった。これは、ヘマがサンゴのパーティに居る時に出来上がった“悪癖”だ。
きっとヘマはサンゴのパーティに居る時も、こうして失敗をしてはサンゴに怒鳴られていたに違いない。こんな性格だ。きっとパーティ内でも浮いていたのだろう。
「ご、ごめんなさい!」
「ヘマ。怒ってねぇよ」
「ほ、本当に?」
「ああ」
頷きながら、安心させてやるためにヒスイはあまり得意ではない優しげな笑みを意識的に浮かべてやった。
上手く出来ているのかは定かではない。
なにせ、ヒスイはこういった他人を思いやる行為が一番苦手なのだ。というより、経験が殆どなかった。
以前、打倒魔王の目標を掲げて旅をしている時。
ヒスイは毎日怒鳴ってばかりいた。
今思い出すと、酷い態度だったと思う。あの頃のヒスイは、周囲の人間はすべからく自分と違って無能だと思っていたのだ。思い上がりも良いトコロだ。
ヒスイはヘマを前にすると、いつも自分の“無能”さを痛感する。
(俺は、いま……笑えてんのか?)
笑顔一つ、まともに作れやしない。
もしかすると、引き攣って変な顔になっているのでは?と、ヒスイが頭の片隅で頭を抱えそうになった時だ。
「よ、良かったぁ。イシ君を怒らせたのかと思った」
「……怒ってねーよ」
先程まで怯え切っていたヘマが、いつもの緩い笑みをその顔に浮かべた。良かった。どうやらきちんと笑えていたらしい。
「ヘマ、ちょっとここで少し休……いや、一緒に喋っていかないか?」
「イシ君と?お喋り!?」
「おう」
「する!あそこに座ろう!あそこ、ちょっと明るいよ!」
休もうと言えば、ヘマは早く魔王城へ行こうと言って聞かない。だから敢えて「喋ろう」と誘いをかける。そうすれば、ヘマは喜んで言う事を聞いてくれるのだ。
「ヘマ」
「なーに!」
「手を繋ぐぞ」
「っ!うん!」
ヒスイは駆け出そうとするヘマの手を自身の手で掴むと、駆け出すヘマを自らの手の内に納めた。
「イシ君の手、熱いね!」
「ヘマの手が冷てぇんだよ」
同じ結果をもたらす言葉でも、出来るだけヘマを怯えさせないように。笑顔でいられるように。
ヒスイは今、人生で初めて……相手を心から思いやる日々に明け暮れていた。
ーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
「ほら、これでいい」
「イシ君は何でも上手だね」
「そうでもねーよ」
「だって、料理だってオレよりずっと上手だったよ。ずっと石だったのに。すごいねぇ」
ヘマは目の前で器用に手当をしてくれるイシを眺めながら感心したように言った。
全部塩味のモノしか作れないヘマに対し、イシの作る料理の味は多彩だ。
昔からやっていたの?と尋ねたら、料理は殆どした事がないという答えが返ってきた。やった事がなくとも出来る。それはヘマにとっては想像もつかない事だった。
「イシ君は、全部上手だもんね」
「まぁ、不器用ではねぇな。けど、俺はヘマみたいに回復は出来ねーからな」
「うん!オレは回復しか出来ないから!それだけは絶対に頑張るね!」
「……そんな言い方すんな」
「え?」
「お前は……普通のやつが出来ない事を当たり前に出来る。凄いやつだよ」
包帯の巻かれたヘマの掌を撫でながら、イシがどこか苦しげな様子で言った。時折、イシはこんな苦しげな表情をする事がある。けれど、ヘマにはどうしてイシがそんな顔をするのか、ちっとも分からなかった。
(オレ、いつも何も分からない。分からないの、イヤなのに)
こんな風に自分がバカだから、サンゴにも嫌われて「いらない」と言われてしまったのだ。
(イシ君には、嫌われたくない。ずっと一緒がいい)
ヘマは、イシにも「お前なんか要らない」と言われるのではないか、と毎日毎日不安だった。だから、出来るだけ役に立とうと必死で、自分の唯一の特技である“回復”をするのだが。
それすら上手くいかない。
「……イシ君」
「どうした、ヘマ」
「イシ君……シンアイのキスをして」
「あいあい」
ヘマは不安になると、ついイシにキスを強請ってしまう。これは彼が石像だった時に、寂しさを紛らわす為にずっと行ってきた行為だったからだ。
ーーーーちゅっちゅっ!イシ君!シンアイのキスだよ!
「っん。ふぅ」
「っは」
柔らかく、熱い感触がヘマの唇を覆う。
キスして。と頼み、キスをしてくれる。それはイシが石ではない事と、ヘマが嫌われていない事を同時に実感出来る、酷く幸福な瞬間なのだ。
っはぁ、ちゅっ、んん、ふっぅ。
キスの合間にヘマの口から甘い吐息が漏れる。いつの間にか、口内にはイシの舌が入り込んでいた。熱い。
「っ、へ、ま。へま」
「っぁん、いし。く」
ヘマと違ってイシの熱い掌がヘマ頰に添えられる。その熱さに、ヘマは先程まで閉じていた目をうっすらと開いた。
「っはぅ」
「へ、まっ」
そこには、ヘマがそれまで向けられた事のないような、熱い視線があった。翡翠色の目が必死にヘマに伝えている。
「ヘマ、こい」
「ん」
お前が愛おしくて仕方がないと。
ヘマはその目に、頷きながら泣きそうになった。
○
森奥の拓けた一角。
普段ならば静寂に包まれている筈の場所に、まるで似つかわしくないいやらしい音が響き渡っていた。
パチュッパチュッパチュッズッヌジュプッ。
「あっあぁっ、っひん!いしくっ、もっ。おれぇ、イくぅっ」
「おうっ、イけ!好きなだけイケよ!ヘマっ、俺も、もイくっ」
二人は屋外にも関わらず、身につけていたモノを殆ど全て剥ぎ取り絡みあっていた。ヘマに強請られキスをしてから、ヒスイは熱く反応する体を止められなかった。
『ヘマッ!』
『っふんん!』
いや、それもこれも全部ヘマが悪い。これに関しては、ヒスイは完全に自分に非はないと断言できる。兎にも角にも、ヘマがいやらしいのだ。
『あっあっアッ……いし、くぅんっ』
ヘマが可愛い顔でキスを強請りながら、ヒスイの局部に手を触れて熱を昂らせてくるのだ。挙句、自分の下半身をヒスイの膝に擦り付けながら、反対の手で自らの秘孔に指を挿れる始末。
『イシく。いしくん。もっと』
そんな事を言われては、「もっと」するに決まっている。なにせ、ヒスイは石だった頃から、こうしてヘマを抱く事を常に渇望してきたのだから。
「くっ!っは!っっは!おいっ!ヘマ!俺の上に乗れ!」
「っぁい」
イったばかりだというのに、ヒスイの昂りは一向に衰えない。
それはヘマも同様で、ヒスイの腕の中で、自分の中に放たれる熱い種子に体を震わせながらも、まだまだモノ足りなかった。
もっと、欲しい。ヘマの表情はそう、ハッキリと告げていた。
「へま、かわい」
「ほんと?」
「っはぁ、ああ」
それまで、ヒスイの逞しい体がヘマの体を背後から拘束するように抱きしめヘマのナカを穿っていた。
そこから今は地面に敷いた寝袋の上に横になったヒスイの上に、ヘマの体が跨るように腰かけている。モチロン二人は繋がったまま。騎乗位だ。
ヒスイは下からジッとヘマの裸体を眺めた。自分と違って、殆ど筋肉などついていないヘマの体。
「ヘマ……ここ、イイな」
「っん」
ヒスイはヘマの躯体を上から下に沿って指先で撫でてやる。そのもどかしい刺激に、ヘマはピクピクと快楽に体を震わせた。
「っんっふ、いしく。ひもちぃ」
「ヘマ、腰。スゲェ揺れてる」
「んっ。すきなの。ここ」
「知ってる」
ヘマはヒクヒクと体を震わせつつ、ヒスイの剛直を自身の”イイ所”に擦り付ける。その滑らかな腰の動きのいやらしい事といったら。
「えっろ」
「っはぁぅ!」
堪らず下から穿つように腰を振ってしまった。そりゃあそうだろう。こんないやらしいヘマを前に、我慢など出来よう筈もない。
「んっ、っふぅ……っぁん!」
自分の体の上で快楽に溺れるように体をくねらすヘマに、ヒスイはもう夢中で腰を振った。ヒスイはもう完全にヘマに溺れていた。
だから、気づかなかった。
「っはん!いし、くっ!もっと、もっとしてぇっ。しょこ、すきぃっ」
自分たちがどれほど長い時間、互いの体を貪りあっていたのかという事に。
ヒスイの石化の呪いが解けるのは”夜”だけだ。すなわち、夜明けとともにヒスイの体は――。
「っ!」
(や、べ)
空が白み始め、次第にヘマの快楽に溺れている表情がはっきりと光に照らされる。
夜が明けてしまった。
〇
「っふ、うぅ。いしくんっ。しゅき、だいしゅきぃ」
ヘマはイシの掌をギュッと握りしめながら下から穿つように腰を振っていたイシに、自分も一生懸命腰を振った。
きもちいきもちいきもちいきもちい。
誰かに抱きしめられ、求められる事の快楽が、ヘマを腹の底から気持ち良くしていく。たまらない。イシの熱い掌がヘマの掌にピタリとくっつくのが気持ちいい。腰を振って、ヘマはもっと奥にイシを感じたくて、一旦一気にイシの体から腰を上げた。
そして、また一気に腰を降ろそうとした時だ。
「っぁん!」
それまで火傷するように熱かったイシの体が一気にその熱を消した。更に筋肉質で固かったイシの体が、そういった”固さ”とはまた別の……石のような固さに覆われてしまっているのに気付く。
「いし、くん?」
ヘマの中に入ったままになっているイシの昂ぶりも、今や只の無機物になってしまっている。そう、イシは夜明けと共に石に戻ってしまったのだ。
「あ、あぁっ。いしくん。いしくん」
ヘマがイシの頬に手を触れて呼びかけてみるが、やはりイシは返事をしない。そう、仕方がない。なにせ、イシは石なのだ。
「やだよ……イシくん、まだ、もっとしたい」
ヘマは返事をする事も、名前を呼ぶ事もないイシに呼びかけ続ける。
「っふぅぅ」
悲しい。さっきまでは「ヘマ、ヘマ」とそりゃあもう愛おしいとばかりに名前を何度も呼んでくれていたのに。
「……かいふくを」
——-ヘマ、もうアレは使うな。
エターナルリザレクションを使えば、イシは昼間でも石化が解ける。でも、それはイシから絶対使うなと約束させられた。
「いしくん……もどってきてよ。がまんできないよ」
使いたい。自分の寿命なんていらないから、今すぐ詠唱をかけてイシにまた抱き締めて名前を呼んで欲しかった。しかし。
——なぁ、ヘマ。お願いだから、もうアレは使わないでくれ。
イシが泣きそうな顔で、ヘマに言った。サンゴのように怒鳴るのではなく、お願いだと言って懇願してきたのだ。
「っふうぅぅ」
ヘマは詠唱するのを我慢するように唇を噛み締めると、そのまま石になったイシの唇に腰を折ってキスをした。固い。でもいい。このまま、イシと”もっと”をする。そうすれば約束破りにはならないし。イシも意識はあるのだから、一緒に気持ち良くなれる
はず。
「ちゅっ、んっ。っふぅ。いしくん。きもちい?そう?おれもきもちいよ。ここ、おれがすきなところ。しってるって?じゃあ、ここして?」
ヘマは一生懸命喋らないイシに体を擦り付けて自分とイシを気持ち良くしようとした。それが、イシも望んでいる事だと疑わずに。
〇
ヒスイは発狂しそうだった。
「ちゅっ、んっ。っふぅ。いしくん。きもちい?そう?おれもきもちいよ。ここ、おれがすきなところ。しってるって?じゃあ、ここして?」
(はぁっ、っはぁ……っう、あ。ヤベェ、クソ。なんだこれっ!おいっ!ヘマ!)
目の前でヘマが石になった自分の体を使っていやらしく体をくねらせていた。しかも、ちゃんとヒスイが意識がある前提で動いてくれている。そう、ヘマは決して自慰をしているのではない。ヘマは石になったイシと”セックス”をしているのだ。
いやらし過ぎる。
(ヘマヘマヘマヘマっ、くそっ、たまんねぇっ!なのにっ!)
「いしくん、っん!じょうず、っぁん。きもちいっ。っはん。ここ、いしくんは、ここが、すきだもんね。しってるよ。え?なんで、しってるか?ふふ。よく、しってるでしょ。おれ、いしくんのことなら、なんでもしってるよ」
だって、かぞくだもん。
(あぁぁぁぁっ!!クソっ!なんで体が動かねぇんだよっ!しぬしぬしぬしぬしぬっ!腰!振りてぇ!抱き締めてぇっ!ヘマん中に全部射精してぇ!なのに!!)
動かない体と、目の前にある愛しい子の痴態に、正直ヒスイの全神経は焼き切れていた。天国のような状況なのに、地獄のようだ。何も干渉できない。抱き締めたいのに。自分の種でヘマの中を満たしてやりたいのに。
ヘマが動く度に、今まで出したヒスイの種がヘマの大腿部を伝う光景がいやらしい。
「んっ、ちゅっ、っふぅ。いしくん。かっこいい」
(へま、へま。っはぁ、っはっはっはっは)
ヘマがキスをする。
固い筈のヒスイの唇を食むように舐める。ヒスイの固い上半身に抱き着きながら、けれど腰を上下に振るのは止めない。ヘマの表情が快楽に濡れながら、何度もヒスイの名を……「いしくん」と、狂ったように呼び続ける。
「っぁぁんっ!」
(ヘマヘマヘマヘマっ!)
ヘマの吐き出した少量の精液がヒスイの固い腹の上に吐き出された。ヘマはヒスイに口付けをしながら、必死に腰を振り……果てたのだ。
しかし、ヘマはイッた後も、何度もヒスイの唇にちゅっちゅっと口付けを落とすと、そのままヒスイの固い胸板に手を置き、甘えるように頬を擦り付けた。
「っはぁ。いしくん、きもちよかったね。ね?いっぱい出したもんね?え?出したのはお前だけだろって?ふふ、そうだね」
(ヘマ……)
「イシ君……聞こえてる?気持ち良かった?そう?よかった。……はやく、また。あいたいな」
(ヘマ)
囁くような声で呟いたヘマの可愛らしい願いを腹の上で聞きながら、ヒスイは久々に思った。
(ヘマ、おれをころしてくれ)
ヒスイは完全に頭がイカれていた。なにせ、石になったヒスイの体が、その昂ぶりのまま射精する事も出来ず、ヘマの中に入ったまま――
狂おしい程の興奮だけが、その身に残されていたのだ。
その後、ヒスイは目覚めたヘマに綺麗に丁寧に体を拭われた。ただ、石になった姿はそりゃあもう間抜けなもので。
「どうしよう、イシ君。夜になるまで……あの、出しっぱなしはイシ君も恥ずかしいよね?」
(死にてぇ……)
「うーん、平気?平気じゃないよね?嫌だよね?じゃあ、えっと……俺の洋服を腰に巻いておくね?これでいい?うん。気に入ったなら良かった」
(死にてぇ……)
「あー。イシ君の、おっきいから巻いててもなんか膨らんじゃう」
(死にてぇっ!!)
そう言って頬を染めながらキスをしてくるヘマに、ヒスイは(死にてぇ)と(可愛い)がない交ぜになった、謎の感情に襲われた。しかし、結果として残ったのは(死にてぇ)の方だけだった。
「イシ君、今日はここに隠れてようね。他の人に見られたら……ね?いやだよね?」
(死ぬ……)
ヒスイは裸で勃起した状態のまま、昼間を過ごす事になった。
局部をヘマの服で隠す自らの姿というのは、そりゃあもう滑稽な事が容易に想像でき、これまで生きてきた中で最も酷い屈辱でもあった。
「イシ君、早く魔王城に行って呪いを解いてもらおうね。うん、イシ君もやる気だね!今晩はいっぱい進もう!おー!」
(……ヘマ。悪い今晩も進めそうにねぇわ。俺)
なにせ、興奮と昂ぶりが最高潮のところでヒスイは寸止めされている状態なのだ。ヘマの寿命も、自分の石化も問題は山積みだが――。
「ヘマッ!」
「っイシ君っ……っふっ、っはぅっ!っぁん!」
次の日の夜も、ヒスイはヘマと熱い夜を過ごしたのであった。
おわり!
またヤるのに夢中で同じ事にならないようにね!ヒスイ!