番外編50:俺だけは初代様の好きにしてください(初代×犬)
※書籍版のネタ有
——–旅の途中
村長「勇者様、この度はドラゴンを退治して頂き、まことにありがとうございます」
初代「いいえ、当然のことをしたまでです」にこ
村長「なんて謙虚な方だ。まさに勇者にふさわしい。これはまるでこの村に昔から言い伝えられている伝承の~」ぺちゃくちゃ
初代(コクコク)にこにこ
犬(初代様、相変わらず外面いいな……。疲れないのかな?)
村長「わしが子供の頃なんかは~」
初代様(コクコク)ヒク…
犬「(あ、笑顔が引き攣ってる)あ、あの。初代様」
初代「ん、どうした」にこ!
犬「(顔が……!笑顔の威力が!)あ、あの新しい依頼書を受け取っていますので。そろそろ…」どきどき
初代「そうか、それならそろそろ行こうか」にこ
犬「っは、はい!」タタタ
◇◆◇
初代様「あー、つかれた。なんで年寄りの話っつーのは、あぁも長ぇのか」ぐったり
犬「あ、あの。初代様」
初代「あぁ、さっきはよくやってくれましたね。えらいですよ……あ」にこ
初代様はさっきまでの外面の笑顔が貼り付いてるせいで、外面笑顔と話し方が抜けきれないみたいだよ!
犬「あ、いえ(あ、あわ。あわわ)」真っ赤!
初代「ん?どうした?」
犬「あ、あ、いえ。あの、しゃ、しゃべりかたが……(出会った頃、みたいだ)」どきどき
——–大丈夫ですか!?あぁっ、酷い傷だ。待ってください。今回復しますからね。
——–初代様か。ふふ、なんだか新鮮でくすぐったいな。
犬(初代様は、最初は俺にも外面の顔だったな。あの時はなんて優しいんだろう、さすが初代勇者だって思ったけど……)どきどき
初代「……へぇ」にや
犬のどぎまぎした様子に、初代様は気を良くしたよ!
犬「へ?」
初代「今日はこの辺りで野宿をしましょうか。さぁ、準備をしてくれますか?」にこ
犬「あ、あ、え?あの、しょ、初代様?(なんで、今更俺に敬語なんだ?なんで外面の笑顔なんだ?)」おろ…
初代「貴方の食事は美味しいですからね。毎日食べるのが楽しみなんですよ」にこ
犬「……あの、えっと。なんで?(なんで?なんでだ?今まで〝犬〟って呼んでたのに、なんで〝貴方〟なんて。そんな赤の他人みたいに)」おろおろ
初代「どうしました?何か気になる事でもありますか。不安な事はなんでも俺に言ってください。なにせ、俺は勇者ですから」にこー!
犬「っ!」
初代「皆の不安を取り除くのも勇者の役目――」
犬「初代様っ!(いやだ)」がばっ!
初代「な、なんですか?」
犬「あ、あの。俺は、い、犬です(この初代様は嫌だ!)」必死!
初代「そんな、人を犬だなんて。そんな風に呼ぶのは失礼…」
犬「お、俺は犬です!初代様の犬です!」
初代「っ!」
犬「あ、あの。俺の事は、まだ、心の底から、信用できない、のは……仕方が、ないかもしれないんですが……。俺は、その、いつものように扱って頂きたいです」
初代「いつものように、とは?」
犬「……初代様の所有物のように、好き勝手に、扱っていただきたいです」ぼそぼそ
初代「……俺の、所有物?」じっ
犬「はい。俺は、何をされても、大丈夫なので……好きにして、ください(俺、何が言いたかったんだろう。ワケわかんなくなってきた)」
初代「……っふーー」
犬「あの、初代様?」おず
初代「犬。お前って変なやつだな」
犬「……あ(戻った?)」
初代「おい、犬」
犬「は、はい!」
初代「お前が好きに扱っていいっつったんだからな」
犬「はい!」にこ
初代「(なんで、ここで笑うんだよ……)じゃあ、飯作ったらさっさと寝床の準備をしろ」
犬「はい」
初代「シートは厚く敷けよ。じゃないと、背中を痛めるのはテメェだからな」
犬「っっっ!あ、あ、はい!」真っ赤!
その日、初代様はいつも以上に犬を好きにしたよ!
犬も好きにされてノリノリだったよ!
犬「……くぅ、くぅ」
初代(そうか。コイツだけは、俺の好きにしていいのか……そうか)にこ
犬は初代様にとっての〝唯一の自由〟!
書籍版初代様では、犬と初代様の出会頭の様子が掲載されています。
初代様は最初、犬にも完全に〝外面〟でした◎