「そうだろう、そうだろう!お前もやっと自覚が持てるようになったか!」
自覚?一体何の話だ?
そう言って両手を両ひざの上に置き、頭を屈め差し出してくる福の神様に、俺は言葉の意味を尋ねる事は出来なかった。
「褒めろ!お前の勤めを果たせ!」
「つ、勤め……」
その短い言葉に、俺はおずおずと差し出された首(こうべ)に手を伸ばした。
「ご立派です。福の神様」
「俺が土地神になれば、もちろんお前は誇らしかろうな?」
「ええ、ええ……」
「そうだろう、そうだろう。お前は俺が立派で可愛いので幸せだろう」
「とても!」
黒光りのする絹のような手触りの良い髪に指を通しながら、俺は福の神様の言葉に大きく頷いた。
罰当たりかもしれないが、今の彼は俺にとって体の大きな幼子に見えて仕方なかった。最初は恐ろしくて堪らなかったのに、これはとても不思議な心境の変化だ。
「では、土地神になってやろう。祝いに今日はとことん戯れ合う(ざれあう)としよう!」
「はい、では見世モノ屋で新しい組立人形(フィギュア)を買ってきま――」
寝床の狭さなど忘れて組立人形(フィギュア)を買いに走ろうとした時だ。俺の腕は福の神様に勢いよく引っ張られていた。
「どこへ行く。戯れ合うと言っただろう」
「っぁ、っひん」
そこには、先ほどまでの無邪気な子供のような彼とはまるで別人のような雄々しい表情を浮かべる福の神様の姿があった。
まさか、戯れ合うとは……まぐわいの事を指すのだろうか。
「っはぁん、っぁ!んひぃっ!」
「最近は、子を成すばかりで戯れ合っていなかったからな」
どうやら、そうらしい。
福の神様が、容赦なくツノを優しく撫でてくるせいで、気色の悪い破廉恥な声が止められない。
「っぁ、っぁぁん!ふくのかみ、しゃまぁっ。それっ、だめで、しゅっ」
いつの間にか服の下に潜り込んでいた福の神様の手が、俺のだらしない穴と肉棒を容赦なく攻める。先端の雫を指で掬ったかと思うと、いつの間にか穴の奥に福の神様の固い指を感じる。
「っぁあん、っひゃ!ら、らめっ!やめて、しょこ、グリグリしないでぇっ」
「どうしてだ?お前のいやらしい穴も、出来損ないの肉棒も、既に汚らしい汁を垂れ流しているというのに」
まるで千手観音様のように腕が大量にあるようだ、といつも思う。与えられる絶え間ない快感に、体の中心の皮膚が張り詰め、男根はピンと天を向いている。触られたばかりだというのに、もう達してしまいそうだ。
「だからっ!だからダメなん、れすっ!おりぇの、汚い汁がぁっ……あの子達にかかってしまうぅっ」
「あの子ら……」
「ふくのかみ、しゃまのだいじな……子らでしゅ」
ぼうっとする視界の隅で、ジッと此方の行為を見守るように並べられた組立人形(フィギュア)達に目を向ける。ただの人形だという事は分かっているのに、何故か破廉恥で浅はかな自分の姿を無垢な子供に見られているような背徳感を感じてしまう。
「ほう、我が子らに見られるのが恥ずかしいか。……そんなの今更だろうに」
「っひん、っぁん!っひぃぃん!」
レロレロと短いツノを舌で舐め上げられながら、いつの間にか福の神様の美しい指が俺の中を八岐大蛇の頭のようにバラバラとうねりあげる。
あまりの快楽に福の神様に抱えられながら、曲げていた足を思わずピンと伸ばす。その瞬間、伸ばした先に置いてあった組立人形(フィギュア)が勢いよく倒れた。
「っぁ、っぁ、らえらめぇっ!ふくのかみしゃまの……子がぁっ」
「っむ」
これ以上、福の神様の大切な組立人形(フィギュア)達を蹴とばしてはならぬと、思わず福の神様の体に腕と両足を巻き付ける。すると、それまで涼し気な顔をしていた福の神様の顔が喜色と笑みに彩られた。
「良い、これは良いぞ……」
「っへ?」
「お前はそのまま我が子らに乱暴をせぬようにしておれ!」
「っぁ、あいっ」
福の神様はそのまま俺の体から服を手早く剥ぎ取ると、着物を緩ませ下からダラダラと汚らしい粘液を垂れ流す俺のナカに、その怒張を捻じ込んだ。
「っぁあ、っぁぁぁあんッ!!」
「っく」
稲妻が体中を駆け抜ける。少しでも快楽の稲妻から逃れる為、体をピンと伸ばしそうになったものの、視界の端に映る組立人形(フィギュア)の存在に気付き寸での所で堪えた。代わりに福の神様のうねる大蛇のような怒張を感じながら、その体にギュッと抱き着く。
「ふくの、かみしゃまぁっ!っぁ、ひぃぃんっ!しゅごいれすっ!」
「っはぁ。そう、だろっ……!」
「っぁ、ひんっひんっ!ぁ~~っ!」
福の神様からの激しい下からの突き上げに、言葉を発するどころかダラダラと口の端から唾液を垂れ流してしまう。俺がどうにか気色の悪い声を抑えようと奥歯を噛みしめた時だった。
「っんぅ」
「っひ!」
仰け反った拍子に露わになった平な乳房に福の神様が吸い付いていた。
「っぁ、ぁ!しょ、れっ……っぁん、やぁぁっ!」
これまで一度も触れられる事のなかった場所にも関わらず、吸われた瞬間に頭がパンと弾けた気がした。喜びが一気に広がり、体中が溢れんばかりの感動で満たされる。
「んっ、っふぅ、……はぁ……ん」
「ぁ、ぁ……ふ、福のかみ、しゃま」
必死に乳房に吸い付いてくる福の神様の姿を見ていると、幸せが波のように押し寄せてくる。
なんだろう。これではまるで、まるで乳を飲む赤子じゃないか。
凄まじい力で吸い付かれつつ、舌先でチロチロと甘えるように乳頭に触れてくる。その間、吸い付かれている方とは別の乳房は福の神様の掌で揉みしだかれる。
「っは、っぁ……ふくの、かみさま……なんて、かわいらしい」
本能でソレだけが口から漏れる。
大きくて立派で、土地神にすらなり替わる程の力を有した彼なのに、もう、俺には赤子にしか見えなかった。
「っぁは、かわい。かわいらし……なんて、かわいい子ぉ」
「ん、ん、んっ」
気が付くと、俺は福の神様の後頭部を撫でながら乳を差し出すように胸を張った。そんな俺に、彼も更に嬉しそうに乳に吸い付く。まるで、本当に乳でも出ているようだ。
「ちゅっ、ちゅっ……っふぅ」
「っひ、っぁひ」
もちろん、俺は雄なので何も出やしないのだが、なぜか「もっと大きくなるように」と願いを込めつつ、赤子のような彼に、まるで赤子のように抱きかかえられながら乳を差し出し、何度も果てた。
「っはぁ、っはぁ。ん……んぅ」
「む、ぐ。……おい、おれは、かわいいか」
「っは、い。この世で、いっとう、かわい、い……れすぅ……んっ」
最後は互いの唇を食み合い、古い布団の中に身を埋めた。
このように隙間なく体をピタリとくっつけ合えば、あと数体は福の神様と組立人形(フィギュア)を作ることが出来そうだ、と俺はぼんやりする頭で思ってしまった。