番外編65:遺物の代償、手にした最強の剣(初代×犬)

※タイトルだけ異様に格好良い話

 

旅の途中

in宿屋

 

初代「はー、やっと宿に着いた。マジで疲れたわ」

犬「初代様、俺が受付をしてきます」

初代「おう、急げよ」

犬「はい!」

 

犬はすててっと宿屋の受付に小走りしたよ!

 

犬「あの、部屋は空いてますか?」

宿屋の婦人「えーっと、お2人ね。2部屋?」

犬「いえ、1部屋で大丈夫です」

宿屋の婦人「そう、それなら……あ、待って。あんた、冒険者よね?」

犬「あ、えっと。はい(な、なんだ?)」

 

宿屋の婦人「西部方面じゃ、ドラゴンの鱗が豊作って聞いたけど、ほんとかしら?」

犬「あっ、えっとその……ちょっと。よ、よく分かりません」あたふた

宿屋の婦人「あのね、うちの夫が防具職人なんだけど、それで依頼が増えるんじゃないかって息巻いててねぇ」

 

犬「あ、へ……へぇ(な、なんか喋り始めちゃった)」おろおろ

宿屋の婦人「でも、聞いた感じだと鱗はちょっと質が薄いらしいのよ。だから軽装にはいいけど、ガチガチの鎧には向かないって」

犬「は、は、はぁ(どうしよう、初代様を待たせてるのに)」

 

宿屋の婦人「やっぱり防具はミスリルの方が安定してるって事なのかしら?でも、ミスリルは最近、鉱山でゴブリンが暴れて採掘が滞ってるって聞いたけど、それは知ってる?」

犬「あ、あ、あの……えっと、それは」おろおろ

 

犬、ぐいぐいくる宿屋のおばちゃんにどうしていいか分からなくなった!

コミュ力0の犬、成す術なし!

 

初代「あぁ、鉱山のゴブリン族なら、聖王国のギルドで大々的に討伐依頼が出てるので、そのうち討伐されると思いますよ」にこ

宿屋の婦人「あら、そうなの?」

 

犬「っ!(初代様!)」

 

あまりにもオドオドする犬を見かねて初代様が割って入ってきた!顔は100%作り笑顔!

 

宿屋の婦人「それは良かったわ。だったらミスリルの方は大丈夫そうって夫に伝えておかないと」

初代「ええ。あと、ドラゴンの鱗の方はどうやら商会が大規模に買い付けているらしいので、もしかすると近々貴族の領地間で小競り合いがあるかもとの事です。防具の依頼は増えるかもしれませんね」

 

宿屋の婦人「まぁ!さすが、冒険者さんは耳が早いわぁ!」

初代「いいえ。あ、そうだ。よろしければこの街で一番安く食材が手に入る店ってありますか」

宿屋の婦人「ああ、それならね、市場の北側にある『ミラの店』がいいわよ。魚も肉も新鮮だし、値段も良心的」

 

初代「それはありがたい。市場の北側ですね、覚えておきます」

宿屋の婦人「ええ、オススメよ。それにしても、さすが冒険者さんねぇ。世の中の動きにも詳しいし、礼儀正しいし。うちの亭主にも見習わせたいわ」

 

初代「はは、恐縮です。ところで、お部屋を一部屋お願いしたいのですが」

 

宿屋の婦人「あら、そうだったわね!はいはい、ちょうど二階の部屋が空いてるわよ。これ、鍵ね」

初代「ありがとうございます」

宿屋の婦人「朝食は日の出と共に出すからね。夜食が欲しければ、キッチンの方に声をかけてちょうだいな」

初代「ご親切にどうも。お世話になります」

 

犬(えっ、もう終わった!?あのおばちゃんの長話を…… 自然すぎて気づかなかった……!)

 

初代は軽く微笑み、鍵を受け取ると、そのまま足を向けた!

 

初代「では、失礼します」

宿屋の婦人「ごゆっくりね!」

初代「さぁ、行こうか」にこ

犬「は、はい!」そそくさ

 

in部屋

 

犬「あの、初代様。ありがとうございます。助かりました」

初代「お前、あんな雑談すらまともにできねぇんだよ」

犬「あ、はい。昔から雑談が一番苦手で……」

 

初代「そりゃ、見てりゃわかるが……そんなんでよくここまで生きてこれたな?ガキの頃とか、ぜってー虐められただろ」

犬「えっと、あの。6歳くらいまではまだマシで。でも年齢が上がるにつれて複雑になっていく人間関係に対応できなくなっていって……雑談する力は、今では完全に失われてしまいました」

 

初代「……いや、大層な失われた古代技術みたいに言うなや」

犬「でも。そ、それに近いです。もうどんなに努力しても絶対戻らない技術なので。初代様は……あんなに上手に誰とでも話せて……凄いです。どうしたらあんなに人と雑談が出来るんでしょうか」

 

初代「いや、雑談がどうとか以前に、他人に興味ねぇだろ、お前」

犬「あ……!」

初代「会話なんて相手に興味がありゃ、自然と出来るモンなんだよ。お前は年をとるににつれて、他人に興味が無くなったってこったろ。……まぁ、俺も興味があるフリしてるだけで、他人には毛程も興味ねぇがな」

 

犬「……そっか。だから」ぼそ

初代「あ?」

犬「だから、俺は初代様とは普通に喋れるんだ……そっか。そっか」ぼそ

初代「っ!」

 

犬「すみません、初代様。俺、多分これからも初代様以外とはあんまり……上手く話せなさそうです」ぺこ

初代「……お、おう。まぁ」

犬「へ?」

初代「なんかあったら……俺が、前に出てやるよ」ぼそ

 

犬「あ、あっ!ありがとうございます!」ぱぁぁ!

初代「……おい、腹減った」

犬「はい!では、あの!今すぐに食事の準備をします!」

初代「おう」

 

犬は部屋の隅に道具を広げ始めて食事の準備を始めた!その後ろで防具を脱ぎ始めた初代様は——!

 

——だから、俺は初代様とは普通に喋れるんだ。

初代「……っふーー」

 

めっっちゃ、嬉しそう!

初代様、犬が完全に自分にしか興味がないことを不意に知る!犬、雑談力は失ったけど、もっとすごいものを手に入れたね!