第3章:俺の声はどうだ!

第3章:俺の声はどうだ!

183:現実は……甘い!

〇 『ほら、茶』 『……ほう』  そう言って少年から出されたのは、完全に水だった。 『んだよ、文句あんのか?』 『ぜんっぜん!森の上質な川の水の感じがして最高に嬉しい!』 『いや、井戸から汲んできた地下水だけど』 『地下水も森の水じゃん!い...
第3章:俺の声はどうだ!

182:赤い屋根の小さなおうち

--------- ------- ---- 『サトシ、これ』  そう言ってエーイチから差し出されたのは、手のひらサイズの小さな麻袋だった。 『なんだ?コレ』 『ソレ、入れるのに使って?』  ソレ。そう言ってエーイチが指さしてきたのは、あの...
第3章:俺の声はどうだ!

181:牢屋の中で

目が覚めた。  どうやら俺は、牢屋に入れられているようだ。         〇 『サトシ、卵を全部同じカゴに入れちゃダメだよ?リスクは、いつだって出来る限り分散しなくちゃ』  あぁ、エーイチの言う事を聞いておいて本当に良かった。やっぱり、エ...
第3章:俺の声はどうだ!

180:人間とエルフ

「人間の歴史の傍には、いつもエルフ達が居る。人間はいつもエルフに怯えているよな。まるで俺のようだ」 「またそんな卑屈な皮肉ばっかり言って!」 「……卑屈な皮肉」  暗くなるばかりのジェロームの表情に、ハルヒコはパンパンと両手を叩いた。「卑屈...
第3章:俺の声はどうだ!

179:ジェローム・ボルカ―の気がかり

ジェロームは久々に夢を見た。父親の夢だった。 『ジェローム。よく覚えておきなさい。戦争とは、常に諸刃の剣だ。振り上げれば、必ず我が身も傷つく』 『はい、お父様』  目の前に父が居る。父はジェロームを見下ろしながら、両手を後ろ手に組んだ姿で立...