第21話:不良と連携プレイ

 

 

「あいつの持ってる俺の手紙を……取り返してくれ!」

 

 

俺は必死に電話口でそう叫んだ。

相手が一体どこのどいつなのか、あの腐れ幼なじみと一体どんな関係なのか。俺にはサッパリわからなかったが、相手の声があまりにも必死だったので、俺は思わず叫んでしまった。

そうでなけりゃ、こんなどこのどいつかもわかんねぇ奴に、こんな事頼むわけがねぇ。

 

『……て、手紙ですか?』

「そうだ!ぜってーアイツが持ってる筈なんだ」

『わ……わかりました!絶対に取り返します!だから…あの、取り返したら……』

「わかってるっつーの!アイツにはぜってー出だしさせねぇよ!?」

 

俺のその言葉に、電話口の相手は『ありがとうございます!』と勢いよく叫ぶ。

ありがとうございます。

俺はそう言われた瞬間、何故か手紙のアイツの最後の文を思い出した。

 

いつも、掃除してくれてありがとうございます。

 

あぁ、くそ。またあの言葉を読みたい。いや、今度は直接聞かせてくれよ。

 

俺は必死に走りながら、ぼんやりとそんな事を考えていた。

すると、そんな中、受話器の向こうから大きな叫び声が、俺の鼓膜を揺さぶった。

 

『先輩!手紙を返して下さい!』

 

おいおいおい!!!

んな、馬鹿正直に言ってアイツが言う事聞くわけねぇだろうが!!

 

『へぇー。洋君いつの間に薫と仲良くなったのー?2対1とか卑怯じゃなぁーい?』

 

ほらな!多分アイツの事だ。

多分今頃スッゲー嫌な顔でニヤニヤしてやがんだ、きっと。

面白くなってきたなぁとか思ってやがるに決まってる………あぁぁぁ畜生!あの腐れ野郎!

 

見つけたらぜってーぶっ殺す!!

 

『すみません先輩!でも手紙は返して下さい!この人困ってますし』

 

だぁかぁらぁぁ!

んな話が通用する奴じゃねぇだろうがっ!

俺は電話口から聞こえる必死な、しかしかなり非効率的なやり取りに、徐々に苛立ちが大きくなっていった。

 

クソッ!やっぱこいつじゃ役に立たねぇ!

コイツが時間を稼いでいるうちに俺が塾に到着するしかねぇ!

 

そんな受話器口の俺の心を読んだのか……あの腐れ野郎は笑いながら衝撃的な事を言い始めた。

しかも大声で。

 

『えぇぇ、なになにぃ?手紙って何の事ー?どの手紙かサッパリわかんないからちょっと俺朗読していー?』

 

あんの野郎ぉぉぉ!!

 

『ちょっ!せんぱ「ぜってー取り返せ!死んでも取り返せ!」

 

………っわかりました』

 

 

思わず俺が叫ぶと、電話口の男は「絶対に取り返します!」と言うや否や何やらバタバタと言う音が響いてきた。

 

何やってんだ?

 

俺がそう思っている間にも受話器からは『先輩、手紙を返してください』と言う声が聞こえてくる。

一体向こうがどう言う状態なのか、全く掴めない。

しかし、次の瞬間、俺の背筋がゾワリと嫌な感覚が走った。

 

『洋君つかまえたー』

『「…っ!?」』

 

 

捕まえた

 

あぁ、クソ。

俺まで捕まったって事じゃねぇかよ、そりゃ。