(外伝27):アボードの忘れられない女1

長編お喋りシリーズ
(途中で小説形式になります)

【アボードの忘れられない女】

—–前書き—–
こちらは、ツイッターでリクエストを頂いた素敵なご要望から着想を得たモノです。
作中に登場した「アボードの忘れられない女」。
その女性を巡って起こる兄弟間の悲喜こもごもや、それと同時に起こったひと騒動のお話となります。

ちなみに、最早ネタバレといか、私の文章描写の甘さが産んでしまっているちょっとした表現不足を、姑息にも此方で解消させて頂きます。

「アボードの忘れられない女=前世の母」は、アウトの中で美味しくお酒を飲んでいる「若くて可愛らしいお母さん=柊 愛子さん」です。
よって、アボードの忘れられない女を宿すのは、兄であるアウト、と言う事になりますね!

では長い前書きにお付き合い頂きありがとうございます。
それでは、お話をどうぞ◎
——————–

inアウトの部屋

アウト「最近、アボードって騎士団ではどうだ?」
バイ「どうって?」
アウト「あんな一件があって、こう……浮いたりしてないかって事だよ」
バイ「あは!アウト、お父さんみたいだなー!」
アウト「お父さんなら、もっと上手く本人から聞き出せるさ。アボードの奴、俺には言ってくれないからなぁ」

バイ「兄貴なら全然浮いてなんかねーよ!むしろ、前より人気が更に上がった!」
アウト「そうなのか?」
バイ「うん!俺もそうだけど、兄貴も怖いものがあるんだったら、俺らが守ってあげなきゃってなったんだよ」
アウト「良かったー。俺が無茶したからあんな事になったし、気になってたんだよ」
バイ「ただ」
アウト「え?」

バイ「兄貴は兄貴として人気なのは変わらないけど、恋人にしたいって奴も増えた。ま、これはまだ兄貴も知らない俺の裏の情報網によると、だけどな」
アウト「あ、あぁ…確かに学窓の頃から、そういう奴もたまに居たわ」
バイ「俺は断然!兄貴のママ志望だけどな!」
アウト「お、おぉ。でも、アボードは仲間は絶対そういう目でみねぇって、昔、かっこつけて言ってたよ」
バイ「かっ、かっこいい!!」
アウト「『戦場で判断が狂うといけねぇからな』って」
バイ「に、似てねぇ!」
アウト「悪かったな!?」
バイ「ま、そう言う事なら期待させないように、あの噂、流すか」

アウト「なんの噂?」
バイ「アレだよ、アレ。兄貴の忘れられない女って話!」
アウト「でも、あれって多分、前世のお母さんだぞ?」
バイ「言わなきゃわかんねーって!俺が兄貴の貞操を守ってみせるぜ!」
アウト「やり過ぎて怒られないようにしろよー」
バイ「わかってる!噂の操作は得意だぜ!」

バイの秘奥義-風の噂-

バイ『兄貴には前世からの忘れられない女が居るらしいぜ』
騎士『それホントか!?』
バイ『兄貴の兄貴から聞いたから確かだ』
騎士『まだ出会えてないのか?その人とは』
バイ『みたいだ。実は休みの日になると教会に通って、ずっと、探してるらしい』
騎士『一途かよ……』

部下達「兄貴、まじ最高っす」
アボード「あ?」
先輩達「忘れられない女、見つかるといいな」
アボード「あ゛?」
上官「どんな人だ?知り合いツテに探してやろう」
アボード「は!?」
同僚達「アボード。そういう奴は案外お前の近くに居るもんだぜ、例えば…」
アボード「おいっ!ちょっ!俺に近寄んなっ!目!目ギラギラさせてんじゃねぇよ!?」

 

——そんな話、誰に聞いた!?
——誰だっけ?あ、兄貴の兄貴じゃなかったか?

アボード「アイツ……余計な事ばっか言いやがって!!!ぶっ殺す!?まじで1000回殺す!叩きのめす!血の繋がりなんてクソくらえだ!!?」

バイ「あー、やっべぇ。アウト……ごめん!でも、お陰で助かった!!」

 

———–
——–
—–
inウィズの酒場

バイ「アウト!ごめんな!先に謝っとく!ほんっと!ごめん!ごーめん!」
アウト「なんだよ。バイ。何に対して謝ってるんだ?」
トウ「……いつか、分かるだろう。何かあったら、ウィズ。お前がアウトを守るんだぞ。何としてでも」
ウィズ「なんだ。何かあるのか?」
トウ「今度こそ、大切な者は守れよ」

アウト「相変わらず、トウは言う事がかっこいいなぁー。今度俺もそれ言ってみるよ。メモしとこう」
バイ「アウト!そんなほのぼのとした空気醸し出してる場合じゃないって!ほんと!ごめん!でも、俺も怖いから今日はアウトの家で約束してた教本の読み合わせナシ!トウの部屋で匿ってもらうから!」

アウト「トウ、こんどこそ、たいせつなものは、まもれよ」
バイ「早速使ってる上に、この短い台詞をメモ見ながらの棒読みって!」
ウィズ「そういうバカな所が俺にとっては本当に好ましい」
バイ「おい!お前の事バカって言ってるぞ!」
トウ「あぁ、今度こそ守ってみせる」
アウト「かっこいいな!」

—-ドンっ!!

アボード「ウチのクソガキは居るかぁぁぁ!?」

バイ「っ、来た!トウ、絶対守れよ!?絶対だぞ!」
トウ「え、かわいい」
アウト「アボード?」
ウィズ「何か怒っているようだな」

アボード「テメェを冥土に送る日が決まったぜ…今日!この瞬間だ!」
アウト「ん?お土産くれるのか?」

アボード「テメェには俺の拳という冥土の土産を持たせてやんよ!?」
アウト「はぁっ!?ちょっ、なんだよ!?何怒ってんだ!」
アボード「しらばっくれんな!自分の胸に手ぇ当てて考えてみろ!?考える暇なんかやらんがな!」
アウト「は!?おいおい!?」
ウィズ「待て!どうしたアボード!」

アボード「ウィズ、テメェには関係ねぇ事だ!部外者はすっこんでろ!?」
ウィズ「あ゛?今なんと言った?俺がアウトの部外者な訳ないだろうが……俺がお前に冥土の土産を持たせてやろうか」
アボード「邪魔すんなら、ウィズ。テメェからやっぞ」

—-今度そこ、大切な者は守れよ。

アウト「あ、あ、あ」

アウト「っ!アボード、お前あんまり訳わかんねぇ事言ってると!13歳の時、物凄いイキがって、金髪ツンツン時代の学窓修了描画集を騎士団にバラまくぞ!?」
アボード「……どうやら、てめぇは相当早死したいらしいな」
アウト「お前が年上の女しか興味ない事も!初恋が学窓の診療所の先生だった事も!」
アボード「黙れ」

アウト「その先生が妊娠して辞めた時に何故かわかんねぇけど、自分の学窓服のボタンを渡そうとして戸惑われてた事も!」
アボード「…黙れっつってんのが聞こえねぇのか」
アウト「挙げ句の果てに、いらないって言われてた事も!」
アボード「…………」

ウィズ「あ、アウト。やめろ。もう、止めておけ」
バイ「アウト!ホントに殺されるぞ!」
トウ「もう遅いだろ」
アウト「止めない!俺は大切なウィズを守るんだ!」

ウィズ「アウト、嬉しいが、いや本当に心底嬉しいのだがっ……そんな事を言っている場合では……」
アボード「そういや、お前には殴っても効かないんだったなぁ?つーか、まぁ。それは、ガキの頃から、そうだったもんな。俺がどんだけ殴ろうが蹴ろうが、すぐに復活して向かってきやがって……あれじゃあ意味がねぇ。だったら他の殺り方を考えねぇとな?」
アウト「…殴るなら殴れ!蹴るなら蹴れ!俺は……すぐ治る!絶対にお前の暴力には屈しない!!」
アボード「あーぁ。怒髪天ついた。てめぇには消えない傷を付けてやんよ」

ウィズ「消えない傷だと…そ、それは」
バイ「ちょっ!何、興味津々になってんだ!?アウトの一大事に、お前ほんと気持ち悪ぃな!?」
トウ「今のアウトにそんな事出来るのか?」
アボード「…13の時、てめぇ本気で自分には不思議な力があるとかほざいて、何もねぇのに包帯巻いてた時期あったよな?」

アウト「……やめろ」
アボード「自分の生誕祭を好きな女に祝ってほしくて、生誕の日って事を隠して、無理やりクラスの闘争会の打ち上げ会場をウチにした事もあったよな?ケーキ準備してよ?」
アウト「だまれ」
アボード「しかも、それきっかけでその女、家に居た俺に惚れるし」
アウト「やめろ」

ウィズ・トウ・バイ「…」
アボード「お前さ、だいったい好きな女が出来ると、その女に利用されて俺とかテメェの友達を紹介させられっから、一時期、地味ぃにグレた事あったよな?子犬が騒ぐみてぇに、頑張って汚ねぇ言葉使って、弱ぇ癖に喧嘩しにいったりしてよ?で、負けて泣いて帰って来てたよな?」
アウト「…」
アボード「まだまだ、あんぜ?」

アウト「はーっ。わかった、わかった。兄ちゃんが悪かった。おかげで俺は吹っ切れたよ!」
アボード「へぇ、まだまだあんぜ?ウィズもきっと、知りてぇだろうから聞かせてやろうか?」
アウト「…よしよし。お前の癇癪玉が収まるように、兄ちゃんが、“出来る出来る”してやろうか?好きだもんな?お前」

アボード「あ?」
アウト「よしよし。良い子良い子。貴方なら出来る。なんでも出来る。悲しくなったら兄ちゃんの所へいらっしゃい。兄ちゃんはいつでも貴方の味方よ」
アボード「は」
アウト「あれ?兄ちゃんだったかな?それとも」

—-お母さんだったかな?

アボード「何をっ…」
アウト「とうっ!」

その瞬間、俺の目の前にキラリと星が飛び散った気がした。

過去を暴露され、怒髪天をついていた俺は、アボードに向かって全力で頭突きをしていたからだ。
俺は昔から、拳よりは頭の方が、強かった。拳は弱弱だから昔からそう。10年ぶりくらいに。俺はアボードに、

とびきりの頭突きを御見舞した。

 

 

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