いん、いっしょに
イン『アンダー?何言ってるの?それってお花の種だよね?っていうか、それはお父さんの……』
ニア『そうね。お父さんが街のいたるところに撒いたせいで、皆に叱られたアノ種よね?』
アンダー『ちがうの!これは、ぼくのきょうだいの、たね!』
イン『……アンダー。……これ、どういう事!?お父さんっ!?』
スルー『あーあー!俺は何も知らない!何も知らない!今日はザンの家にお泊りするから、アンダーの事はイン、お前に任せた!』
ザン『……』
イン『はぁ!?』
アンダー『いん、いっしょに、ぼくの、きょうだいが、さくまで、みてて』
イン『はぁ!?えっ?えっ、いや、アンダー?お花の種じゃ、人間の赤ちゃんは……』
アンダー『できるの!おとうさまが、くれたの!するーが、いったの!!』
イン『……ビロウ。お父さん』
ビロウ『あ、いや。俺はっ、その……コイツに言われて!』
オブ『言い訳か。見苦しいな』
ビロウ『あ゛ぁ!?テメェは黙ってろ!?この負け犬がっ!』
オブ『……誰が負け犬だって?』
アンダー『ぼくの、きょうだい、おんなのこかな、おとこのこかな?おとこのこ、がいいな』
イン『……アンダー。待って、待ってね。どう言ったらいいんだろう』
スルー『男の子が出来るといいな!アンダー!』
イン『ちょっと!お父さんは黙っててよ!?』
ニア『……オブ?』
ここで会ったが百年目!
ニア『オブ?そこに居るのは、まさか……オブ?』
オブ『……まさか、お前は』
ビロウ『……ニア』
エア『……』
スルー『おお!ニア!機嫌は直ったか?』
ザン『(ニア……スルーの娘か)』
ニア『……オブ、お前っ!』
オブ『っ!』
ニア『お前っ、どの面下げて私のお兄ちゃんの前に現れた?恥ずかし気もなくっ!何も選ばなかったせいで、お兄ちゃんがどれだけ傷付いたと思ってる!?』
オブ『ぐふっ』
ザン『っ!?』
スルー『おおおおいっ!?ニア!?お前……!ちょっ!えぇっ!?首を絞めるのは止めろっ!死ぬ死ぬ!オブが死ぬ!』
ニア『黙れっ!私はお母さんを呼でって言った!なのに、なんで未だにお父さんが此処に居るの!?この役立たず!もう、お父さんなんか嫌い!口を挟むな!?』
スルー『っに、ニア……あぁぁう』
ザン『スルー!』
ニア『おい、オブ。お前、ここで選びなさい。私に殺されるか。お兄ちゃんに土下座して二度と近づかないと誓うか……選べっ!私は潔くない男が一番嫌いなんだよっ!?』
オブ『……っぐ』
ビロウ『ふっ、オブもここまでか』
エア『……』
ニア『あ゛ぁっ!?何とか言ったらどうなんだ!オブ!』
オブ『……』
ビロウ『死んだな、オブ』
ザン『……スルー、このままではオブが』
スルー『……ザン、娘に大嫌いと言われた父親は、もう娘には立ち向かえん。オブを救うには……インに止めて貰うしかない。ニアは昔からお兄ちゃん子だ』
ザン『イン』
アンダー『おにわ、おにわ!いこ!いこ!』
イン『アンダー!お庭に植えても赤ちゃんは出来ないんだって!赤ちゃんって言うのは……そうやって出来るんじゃなくって……えっと、どう言えばいいんだろう……えっと』
アンダー『この、たねを、うえるんだよ?』
イン『違うよ!違う!それはウソだよ!』
アンダー『うそ……?でも、するーと、おとうさまが』
イン『えっと、どう説明すればいいんだろう。赤ちゃんは、えっと……赤ちゃんは……』
ザン『この状況で一切此方の状況に気付いていない……だと』
スルー『インは、基本目の前の事しか見えていない。早く、どうにかしてインの意識を此方へ持ってこないとっ』
イン(赤ちゃんの作り方?アレを?まだ五歳のアンダーにどう言えばいいの!?え、えっ!どうしよう……どうしよう……俺は、誰から教わった?誰にどうやって、あの事を……そう、俺はーー)
イン『……オブっ!アンダーに赤ちゃんの作り方を教えてあげ……えーーーっ!?』
ニア、ダメ!
イン『ニア!?えっ!何してるの!?オブの首絞めたらだめだろ!?』
ニア『お兄ちゃん!だって、コイツはお兄ちゃんを傷付けたでしょう!?死んで当然の報いよ!』
イン『あっ!あっー!ダメダメ!それはもう仲直りしたから!オブは死んだらダメだよ!オブは必要!とっても必要な人だよ!!』
オブ『っ!!』
ビロウ『……イン、なにを』
エア『……』
ニア『必要……?こんな、お兄ちゃんを選ぶ事も、何を選ぶ事もせずに、お兄ちゃんを傷付けたゴミの、何が一体必要なの?』
イン『ニア!いい加減にしろ!まずは、その手を離せっ!』
ニア『っ!……ご、ごめんなさい』
オブ『っっげほっ!っげほっ!!』
イン『オブっ!大丈夫!?ごめんね、ニアが!』
オブ『……い、イン』
イン『あぁ、首に手形が……怖い話みたいになって』
オブ『イン、イン……ねぇ。インは、俺が必要?まだ、そう思ってくれてる?』
イン『もちろんだよ!俺にはオブが必要だよ!絶対に必要!』
ビロウ『……っふー』
エア『……』
ニア『お兄ちゃん、ねぇ。まさか、未だにオブの事が……ビロウに乗り換えたんじゃなかったの?まさか、二人共を手玉に取ってるんじゃないわよね?お兄ちゃん、そんなに器用じゃないでしょ?』
イン『ニア?何の話かは知らないけど、まずはオブに謝りなさい。急に首を絞めてごめんなさいって』
ニア『で、でも』
イン『……ニア?』
ニア『……オブ、首を絞めて……ご、……めんなさい』
ザン『……こんな謝罪は……初めて聞くな』
スルー『……昔から、ニアは俺の言う事より、インの言う事ばっかり聞いて……俺なんか、大嫌いって……うぅっ』
ザン『娘とは……ここまで理不尽な生き物なのか』
スルー『そうだ……男の子とは、全然違う生き物なんだ!』
ニア『……ぅー、お兄ちゃん』
イン『よく言えました。もう、人の首は締めたらダメだよ』
ニア『……でも、オブは』
イン『ニア?』
ニア『……はい』
エア『……』
ビロウ『イン……お前、なんで、オブが必要なんだ』
イン『ビロウ、どうしたの?何かあったの?顔色が悪いよ?』
オブ『……っは』
ビロウ『答えろ、イン。お前にとってオブは……何故“必要”だ』
イン『え、だって』