26:ここで会ったが百年目!

 

いん、いっしょに

 

 

イン『アンダー?何言ってるの?それってお花の種だよね?っていうか、それはお父さんの……』

ニア『そうね。お父さんが街のいたるところに撒いたせいで、皆に叱られたアノ種よね?』

アンダー『ちがうの!これは、ぼくのきょうだいの、たね!』

イン『……アンダー。……これ、どういう事!?お父さんっ!?』

 

 

スルー『あーあー!俺は何も知らない!何も知らない!今日はザンの家にお泊りするから、アンダーの事はイン、お前に任せた!』

ザン『……』

イン『はぁ!?』

 

 

アンダー『いん、いっしょに、ぼくの、きょうだいが、さくまで、みてて』

イン『はぁ!?えっ?えっ、いや、アンダー?お花の種じゃ、人間の赤ちゃんは……』

アンダー『できるの!おとうさまが、くれたの!するーが、いったの!!』

イン『……ビロウ。お父さん』

 

 

ビロウ『あ、いや。俺はっ、その……コイツに言われて!』

オブ『言い訳か。見苦しいな』

ビロウ『あ゛ぁ!?テメェは黙ってろ!?この負け犬がっ!』

オブ『……誰が負け犬だって?』

 

 

アンダー『ぼくの、きょうだい、おんなのこかな、おとこのこかな?おとこのこ、がいいな』

イン『……アンダー。待って、待ってね。どう言ったらいいんだろう』

スルー『男の子が出来るといいな!アンダー!』

イン『ちょっと!お父さんは黙っててよ!?』

 

 

ニア『……オブ?』

 

 

ここで会ったが百年目!

 

 

ニア『オブ?そこに居るのは、まさか……オブ?』

オブ『……まさか、お前は』

ビロウ『……ニア』

エア『……』

 

 

スルー『おお!ニア!機嫌は直ったか?』

ザン『(ニア……スルーの娘か)』

 

ニア『……オブ、お前っ!』

オブ『っ!』

 

 

ニア『お前っ、どの面下げて私のお兄ちゃんの前に現れた?恥ずかし気もなくっ!何も選ばなかったせいで、お兄ちゃんがどれだけ傷付いたと思ってる!?』

オブ『ぐふっ』

ザン『っ!?』

スルー『おおおおいっ!?ニア!?お前……!ちょっ!えぇっ!?首を絞めるのは止めろっ!死ぬ死ぬ!オブが死ぬ!』

 

 

ニア『黙れっ!私はお母さんを呼でって言った!なのに、なんで未だにお父さんが此処に居るの!?この役立たず!もう、お父さんなんか嫌い!口を挟むな!?』

スルー『っに、ニア……あぁぁう』

ザン『スルー!』

 

 

ニア『おい、オブ。お前、ここで選びなさい。私に殺されるか。お兄ちゃんに土下座して二度と近づかないと誓うか……選べっ!私は潔くない男が一番嫌いなんだよっ!?』

オブ『……っぐ』

 

ビロウ『ふっ、オブもここまでか』

エア『……』

 

 

ニア『あ゛ぁっ!?何とか言ったらどうなんだ!オブ!』

オブ『……』

ビロウ『死んだな、オブ』

 

 

ザン『……スルー、このままではオブが』

スルー『……ザン、娘に大嫌いと言われた父親は、もう娘には立ち向かえん。オブを救うには……インに止めて貰うしかない。ニアは昔からお兄ちゃん子だ』

ザン『イン』

 

 

アンダー『おにわ、おにわ!いこ!いこ!』

イン『アンダー!お庭に植えても赤ちゃんは出来ないんだって!赤ちゃんって言うのは……そうやって出来るんじゃなくって……えっと、どう言えばいいんだろう……えっと』

アンダー『この、たねを、うえるんだよ?』

イン『違うよ!違う!それはウソだよ!』

アンダー『うそ……?でも、するーと、おとうさまが』

イン『えっと、どう説明すればいいんだろう。赤ちゃんは、えっと……赤ちゃんは……』

 

 

ザン『この状況で一切此方の状況に気付いていない……だと』

スルー『インは、基本目の前の事しか見えていない。早く、どうにかしてインの意識を此方へ持ってこないとっ』

 

イン(赤ちゃんの作り方?アレを?まだ五歳のアンダーにどう言えばいいの!?え、えっ!どうしよう……どうしよう……俺は、誰から教わった?誰にどうやって、あの事を……そう、俺はーー)

 

イン『……オブっ!アンダーに赤ちゃんの作り方を教えてあげ……えーーーっ!?』

 

 

ニア、ダメ!

 

 

イン『ニア!?えっ!何してるの!?オブの首絞めたらだめだろ!?』

ニア『お兄ちゃん!だって、コイツはお兄ちゃんを傷付けたでしょう!?死んで当然の報いよ!』

イン『あっ!あっー!ダメダメ!それはもう仲直りしたから!オブは死んだらダメだよ!オブは必要!とっても必要な人だよ!!』

オブ『っ!!』

 

 

ビロウ『……イン、なにを』

エア『……』

 

 

ニア『必要……?こんな、お兄ちゃんを選ぶ事も、何を選ぶ事もせずに、お兄ちゃんを傷付けたゴミの、何が一体必要なの?』

イン『ニア!いい加減にしろ!まずは、その手を離せっ!』

ニア『っ!……ご、ごめんなさい』

 

 

オブ『っっげほっ!っげほっ!!』

イン『オブっ!大丈夫!?ごめんね、ニアが!』

オブ『……い、イン』

イン『あぁ、首に手形が……怖い話みたいになって』

オブ『イン、イン……ねぇ。インは、俺が必要?まだ、そう思ってくれてる?』

イン『もちろんだよ!俺にはオブが必要だよ!絶対に必要!』

 

 

ビロウ『……っふー』

エア『……』

 

 

ニア『お兄ちゃん、ねぇ。まさか、未だにオブの事が……ビロウに乗り換えたんじゃなかったの?まさか、二人共を手玉に取ってるんじゃないわよね?お兄ちゃん、そんなに器用じゃないでしょ?』

イン『ニア?何の話かは知らないけど、まずはオブに謝りなさい。急に首を絞めてごめんなさいって』

ニア『で、でも』

イン『……ニア?』

 

 

ニア『……オブ、首を絞めて……ご、……めんなさい』

 

 

ザン『……こんな謝罪は……初めて聞くな』

スルー『……昔から、ニアは俺の言う事より、インの言う事ばっかり聞いて……俺なんか、大嫌いって……うぅっ』

ザン『娘とは……ここまで理不尽な生き物なのか』

スルー『そうだ……男の子とは、全然違う生き物なんだ!』

 

ニア『……ぅー、お兄ちゃん』

イン『よく言えました。もう、人の首は締めたらダメだよ』

ニア『……でも、オブは』

イン『ニア?』

ニア『……はい』

 

 

エア『……』

 

 

ビロウ『イン……お前、なんで、オブが必要なんだ』

イン『ビロウ、どうしたの?何かあったの?顔色が悪いよ?』

オブ『……っは』

 

 

ビロウ『答えろ、イン。お前にとってオブは……何故“必要”だ』

イン『え、だって』