アウト、初めての即売会
こちらのお話は、タイトルの通り、「アウトが初めてビィエル本を即売会に買いに行く」お話です。
アウトが初めてファンレターを書いたり、初めての即売会に行ったり、あたふたします。
カップリング要素が濃いお喋りかどうかは微妙ですが、【ウィズ×アウト】です。
さて、アウトの初めての即売会で好きな作者さんに気持ちを伝えられるでしょうか。少し長いですが、どうぞ。
アウト、フォーさんの漫画が好き
アウト「この人の描くビィエルマンガ。俺、好きだなぁ」
アバブ「あぁ、フォーさんですか?次の即売会で新刊を出されるって言ってましたよ?」
アウト「っ新刊!読みたい!アバブ、買ってきてもらっていい!?」
アバブ「…」
アウト「お、お金は多めに払うから…」
アバブ「いや、一緒に行きますか?即売会」
アウト「え」
アバブ「そしたら、自分で買えますし。本人にも会えますよ?」
アウト「ほ、ほ、本人!?アバブは…その、会ったこと、あるの?」
アバブ「もちろん。お友達ですから。私も次の即売会出ますし。いつも、作った本を渡し合ってます」
アウト「そっ、そんな!こんな…凄い人と!いや、でも、それは…アバブもビィエルマンガが上手だからだよ。俺なんて…」
アバブ「どういう思考回路ですか。即売会は描き手にとって、実際に読み手の方と会える有り難い機会なんです。むしろ、アウト先輩みたいな人が来てくれた方が嬉しいですよ」
アウト「あ、あ、じゃあ。行く。ど、どうしよう。き、緊張してきた。色々伝えたいけど、うまく話せるかな…話していいのかな」
アバブ「いや、いいですって。…まぁ、心配なら手紙を持っていったらどうですか?」
アウト「っ!」
アバブ「お話の感想とか、そういうのを書いて渡すと喜ばれるし、アウト先輩も漏れ無く気持ちを伝えられて良いと思います」
アウト「……手紙!いいかも!わっわっ!び、便箋を買いに行かないと!」
アバブ「ちゃんとウィズさんに説明しておくんですよ〜。勘違いされてお仕置きされたら……最高っすね!」
アウト「あぁ、何て書こうかなぁ」
アバブ「ありゃ、もう聞こえてない。……フォーさんに最高のド受けが来るって伝えとこ」
〇
ウィズ「ん?これは…手紙?アウトの字だが…あ゛?」
※語彙力皆無故、好きが連呼されたアウトの手紙
ウィズ、フォーさんに嫉妬する
ウィズ「アウト…こっちに来るんだ」
アウト「なに?」
ウィズ「これは何だ」
アウト「うっ、うわ!フォーさんへの手紙!もうっ!勝手に見るなよ!」
ウィズ「…ほう、俺に見られたらマズいのか?」
アウト「当たり前だ!はっ、はっ、恥ずかしいだろ!?」
ウィズ「…恥ずかしいだと?そんなに恥じらって……お前はコイツが好きなのか?」
アウト「好きだよ!だって、俺はフォーさんのビィエルマンガの愛好者だ!」
ウィズ「何をいけしゃあしゃあと……浮気か!?許さんぞ!」
アウト「浮気じゃっ……いけしゃあしゃあ?いけしゃあしゃあって何だ?初めて聞いたけど」
ウィズ「おいっ!今はそこは関係ない!」
アウト「ウィズが言ったんじゃん!急に歌いだしたのかと思ったよ!」
ウィズ「この場面で急に歌うヤツがあるか!?そんな事よりっ!」
アウト「そんな事じゃないだろ!いけしゃあしゃあが先だ!」
ウィズ「いい加減にしろ!」
アウト「ウィズこそ!」
アバブ「あー…やっぱり嫉妬喧嘩イべ起こってる。でも、喧嘩の中身が……さすがアウト先輩というか何というか…天然乾杯っすね」
果たして、アウトは即売会に行けるのか。
ウィズの、お手紙添削会
ウィズ「アウト。この手紙の、“初めて〜”という部分を書き直すんだ」
アウト「どうして?何か変な文章になってた?」
ウィズ「文章云々ではない!お前、これではまるで処女でも捧げますと言っているようなものじゃないか!はしたない!」
アウト「えっ!?そんな事ないよ!は!?何だよソレ!」
アバブ「…うわぁ。ウィズさん、嫉妬のあまり、ファンレターの添削が曲解してますね……萌えというより、面白過ぎる」
ウィズ「即刻書き直せ!」
アウト「いやだ!」
アウト「結局、ウィズに手紙を添削された挙句に当日もついてくるって言われた」
アバブ「あー、保護者同伴だと本気ではっちゃけられませんよねぇ。アレな本も買えないし」
アウト「いや、当日はもう良いんだ。ウィズを撒くのは無理だし。でも、手紙だけは諦めきれなかったから……俺はもう一通、隠し手紙を書いて、封筒の手紙の内側に貼り付けておいた」
アバブ「えぇ…ファンレターがスパイの工作活動みたいに…」
アウト「だから、アバブ!先にフォーさんに会ったら、内側にもう一通、俺の本当の気持ちも入ってますって伝えてくれる?」
アバブ「またそれも誤解を招きそうな言い方ですねーー!でも、わかりました!原文ママで伝えます!」
アウト「うんっ」
即売会当日
アウト「はぁっ」
ウィズ「何だ、その溜息は」
アウト「だって、ウィズが付いていくるんじゃ、本気でフォーさんに気持ちを伝えられないよ」
ウィズ「……ほう、また俺を煽っているのか?」
アウト「煽ってないよ…ただ、文句が言いたいだけ」
ウィズ「言いたいだけ言えばいい。俺は絶対にお前を一人では行かせない。いくら周囲から狭量と言われようとな」
アウト「い゛ーーっ!」
ウィズ(地団駄を……これが、今年27歳のやる事か……。可愛すぎるな)
即売会会場到着
アウト「うー、緊張するなぁ〜。人もいっぱいだし…あぁう。どこで何をしたら……」
ウィズ「おい、どうして事前に調べておかない。まずは小冊子を買うんだろうが。それが無いと会場には入れん」
アウト「そうなの?」
ウィズ「……まったく。こっちだ」
てこてこ
アウト「ひっ、人がっ!こんなにたくさん……!フォーさんは一体どこなんだろう」
ウィズ「ふむ」
アウト「あ、あっちかな?」
ウィズ「違う。こっちだ」
アウト「そうなの?」
ウィズ「さっき買った小冊子に書いてあるだろう」
アウト「?」
ウィズ「はぁっ……ほら、ついて来い」
アウト「ありがとう!ウィズと来て良かった!」
ウィズ「……これは、一体どういう状況だ?」(しかし、まんざらでもない)
会場ウロウロ
アウト「…き、緊張してきた」
ウィズ「手紙を握り締めるな。せっかく書いたのにグシャグシャになるぞ」
アウト「やっぱり行くの止めようかな……」
ウィズ「どうして今更そうなる!行くぞ!来い!」
アウト「あぁぁぁっ」
※最早、ウィズが引っ張って行く事態に。
一方その頃、フォーさんのスペース
フォー「あぁ、ド受けの子。会うの楽しみだなぁ」
アバブ「名前はアウト先輩ですよ。期待しててください?受けのポテンシャル、本気でカンストしてますからね。あと、アウト先輩は普通に良い人っす」
フォー「そんなの期待しちゃうなぁ。しかも、攻めの人と来るんだろ?最高だね」
アバブ「あと、アウト先輩がフォーさんを物凄く好きなので、攻めの……ウィズさんの嫉妬対象として、攻撃を受けるかもです」
フォー「攻めの嫉妬対象になれる人生なんてなぁ。僕ったら、ほんと記憶持ったまま転生できて幸運だったよ。執着美形×平凡を、これでもかと言う程に愛でさせてもらうよ」
アバブ「あぁ、あと。フォーさんの事は殆ど説明してないので、きっと、フォーさんの事を見たら、アウト先輩もびっく
りするかもですね」
フォー「まぁね。こんな姿だから、全年齢対象の本しか売り出せないけど、早く成人したいモンだよ」
アバブ「今、フォーさんって何歳ですっけ?あ、身体的な年齢で」
フォー「10歳」
アバブ「アウト先輩の所のベスト君と同い年ですねぇ。ホント、ビックリしそう」
フォー「僕としては、攻めとは別に夫婦の契りを結んでいる相手まで居る、魔性の総受けアウト君の方が吃驚だけどね。まぁ、総受け万歳さ」
アバブ「でも、十歳かぁ。なんかずっと喋ってたせいで、十歳感はないですよねぇ。フォーさん」
フォー「まぁ、中身はジジィだからね。早く家を出て思いっきり描きたいよ。親に隠れてBL描くのは、色々キツい」
アバブ「親バレはきっついっすからねぇ」
フォー「母親なんか、きっと見たら卒倒するだろうさ」
アバブ「でしょうねぇ」
フォー「即売会にも毎回出たいのにねぇ。十歳は描ける時間に制限があり過ぎる。夜もすぐ眠くなる。親に学窓、周りの目。記憶に感謝もするけど、口惜しい事この上ないさ」
アバブ「ま。成人向けの本が売りたい時は、私に委託してください。いつでも売り子やりますから」
フォー「……そうだね」
は、は、は、はい!
ウィズ「……ほう、あれが」
アウト「……」
アバブ「あ、アウト先輩とウィズさん~。こんにちは。手なんか繋いじゃって、結局ラブラブじゃないですか。お熱いですねぇ」
ウィズ「まぁ、そう見えるのであればいいのだが……熱いというより、(アウト手が、完全に冷たくなっている。そして、配置場所からすると……すなわち、あれが)」
アバブ「アウト先輩。こちらがフォーさんですよ?」
アウト「……」
ウィズ(フォーは、まだ子供か。に、しても。アウトの手が冷たい上に、どんどん力強く……)
ギュウウウウ
フォー「はじめまして。フォーです。アバブからお話は聞いていますよ。こんにちは(……うわぁ、ヤバイな。攻めの美形具合が、予想の遥か上を行ってる……いやぁ、凄い。これぞまさしく美形×平凡。最高だねぇ)」
アウト「……」
ウィズ「おい、アウト。挨拶をされているぞ」
アウト「……は、は、は、は、はい!これ!はい!」
フォー「え?(……あ。手紙か。アウト君の方は、めちゃくちゃ緊張してるな。……うん、この照れ顔。受けだね)」
アウトは、緊張から言葉を失くしてしまっている!
ウィズ「はいじゃないだろうが!?すまない。今、アウトは非常に緊張しているようで、手紙は一生懸命書いているので読んで欲しい」
フォー「あ、はい(あれ、攻めからの嫉妬は?)」
アウト「はい!そうです!」
ウィズ「……あと、見にくくて申し訳ないのだが、中に入っている一枚とは別に、便箋の内側にもう一つ別の手紙も入っている。そっちが、アウトの本当のファンレターなので、そちらも見て欲しい」
アウト「はいっ!そうです!お願いします!」
アバブ(完全に隠し手紙がバレてるじゃないっすかーー!アウト先輩!しかも、緊張し過ぎてバレてる事にも突っ込めてない!)
アウト「えと、そう、あと……えっと」
ウィズ「……この通り、なかなか言葉の扱いが上手な人間ではないので、なかなか読みづらい所もあるとは思うが、一生懸命書いていた」
フォー「はい(……嫉妬は?)」
ウィズ「アウト、ほら。もう一つ渡すモノがあるだろう」
アウト「あ、あの!これ!すきって、きいて!あの!はい!」
フォー「あ、ありがとうございます(……この匂い、お香?)」
ウィズ「だから!はい、じゃないだろう!?まったく、すまない」
フォー「あ、いえいえ。ご丁寧にどうも」
ウィズ「それは好きだと伺ってアウトが買って来た針葉樹の香だ。あと、針葉樹の香が好きなのであれば、こちらも好きだろうと思って香油も入っている。そっちは、一滴を溜め湯に入れるのも効果的だ」
フォー「へぇ。そうなんですね。やってみます(うん、嫉妬は?)」
ウィズ「おい、アウト。お前から何か言う事はないのか?」
アウト「あ、あ、あ」
大好きです、いつでも嘘じゃないです
アウト「お、お、俺ぇ!」
フォー(こ、声……おっき)
ウィズ「お、おい。アウト。もう少し音量を落とせ。周りの客が驚いてるぞ!」
アウト「フォーさんの、描かれる、お、おはなしが、すきで!フォーさんの、ことも、すきです!会った事もない、ひとを、こんなに、好きに、なったのは!初めてです!」
フォー「わお」
アウト「登場人物も、お話も、好きで!絵も、綺麗で!ま、ま、真似して……描いたりも、したんですけど……ちっとも上手には……描けなかったので、フォーさんは……すごい!すごいです!」
ざわ……ざわ
フォー「……あ、はい!(……目を一瞬も逸らさない。僕も、逸らせない。え、ナニコレ。わ、若い!)」
ウィズ「……アウト、声!」
アウト「フォーさんの、本を、読むと!プ、プレゼントを、なんでも、ない日に、もらってる気分になって……すごく!特別な日に、なります!ボコボコしてた!気持ちが!すーって、平らになります!」
フォー「……」
ウィズ「……まったく」
アウト「描いてくださって……ありがとうございましたっ!これからも、がんばってくださいっ!!」
フォー「は、はい。ありがとう、ございます」
アウト「さ、さようなら!」
ウィズ「え!?おいっ!アウト!お前、今日は本を買いにきたんじゃないのか!?おいっ!?」
タタタタタッ!
元気、出た
アバブ「あわわ~、なんだか色々と予想外な終わり方でしたねぇ。さすがアウト先輩。余りの不慣れさに、嫉妬塗れだったウィズさんをも味方につけるという……フォーさん?」
フォー「……アウト君。良い子だったね」
アバブ「でしょう?私、アウト先輩好きです。何に対しても、ともかく純粋ですもん。一生懸命ですし」
フォー「うん」
フォー「ねぇ、アバブ」
アバブ「なんでしょう」
フォー「成人向けは、成人してから描くよ。自分で売りに来たいからね」
アバブ「ふふ。ですねー。醍醐味ですもんね」
フォー「でも、攻めの嫉妬も見たかったな……」
アバブ「今度、一緒にウィズさんの店に行きましょう?たくさん見れますよ」
フォー「最高。親の目を盗んで必ず行くよ」
おわり
【後日談】
酒場にて
アウト「あぁぁぁぁ、フォーさんの本……」
ウィズ「お前という奴は」
ガチャ!
アバブ「あ、アウト先輩ー!フォーさんの新刊、預かってきましたよー!」
ウィズ「お」
アウト「!!!!!」
アバブ「はい、どうぞ」
アウト「あ、ありがとうっ!アバブ!」
アバブ「ページ捲ってみてください?」
アウト「っ!!!わっ、わっ!サトシ君だ!」
ウィズ「ほう、サインと絵付き。良かったじゃないか」
アウト「うん!」
貰った本からは、お香の良い匂いがしました。
ほんとの、おわり。
※2022.9.4 J庭とコミティア楽しかったです。アウトは勇気あるよ……話せないよ。