まったく、救いようのない奴らだよ!

注意(前書き)

こちらは、オメガバース設定の小話です。

ウィズ(α)×アウト(Ω)

 練習のつもりで書いたので、これはまだpixivさんでとったアンケート結果で書いたモノではありません。

 小話ですので、大した設定もオメガバースへの見識もないお話ですが……まぁ、お時間の有る方はどうぞ!

 

 

俺は救いようのないオメガだ!

 

 

 やってはいけないと分かっていても、無意識にやってしまう事は、どうすれば止める事が出来るのだろう。

 

「アウト。ただい……」

「うー、うぃず」

 

 俺は教会の仕事から帰って来たばかりのウィズの姿に心を弾ませると、沈ませた意識を一気に覚醒させた。ウィズは俺の番だ。

だから、帰って来てくれると、とても嬉しい。俺はと言えば、もうすぐヒートに入るので大事をとって仕事を休んでいたのだが。

 

「今日も、派手にやったな。アウト」

「えっ……っは!?あっ、あっ!あー!!」

 

 ウィズの、若干呆れたように口にした言葉に、俺は今、自分が一体どこで何をしていたのかを思い出した。

 俺は完全に昼寝していた。どこで。そう、もちろんベッドの上で。どんなベッドの上かと言えば、それは――

 

家中にある、ウィズの匂いのついたモノをかき集めた俺特性の巣が、こんもりと出来上がったベッドの上で、だ。

 

 ネスティング。巣作りとも呼ばれるソレは、Ωの持つ特異習性の一つだ。普通はヒートの際に行ってしまうΩが殆どなのだが、俺はもうそんなの関係なかった。ヒートだろうが、そうでなかろうが、俺は気が付くとウィズの匂いのするモノを、いつでもどこでも集めてしまうのである。

 

 それはもう無意識に。

 

「……ごめんなさい」

「別に謝る事はないさ」

 

 ウィズは特に気にした風でもなく、巣の中から顔を出す俺の元へと近寄って、俺の頭を撫でてくれた。やっぱり、ホンモノが一番良い匂いだ。いくらウィズの物を集めても、ウィズ本人には敵わない。良い、匂い。

 でも、いくらウィズが許してくれたとしても、俺はこの習性を止めたかった。

 

「でも……また。服も、タオルも、全部グシャグシャになった」

「また畳めばいい」

「ウィズは仕事で疲れてるのに」

「いい。そのくらい」

「でも、こんなにたくさんだし……」

 

 俺はベッドの上にこれでもかと集められたウィズの匂い付きの衣類を眺めて、溜息が止められなかった。俺の巣作りは、ヒートに関係なく現れる上に、無意識に集めてしまう衣類の量が半端ではない。もう家中のウィズの匂いを集めて、彷徨いあるくのだ。

 

 おかげで、ウィズの服はいつもどこかグシャグシャだ。

 今着ている服もそう。

 

「俺が、畳むのも下手だから」

 

 そう、俺がグシャグシャにしたのだから、俺が熱鉄版で皺を伸ばして、畳みなおせば問題ないのだ。そうしようと思った。そして、実際した。

 

「……気にするな。人には得意不得意というものがある」

 

 ウィズのなけなしの慰めが、その優しい手と共に俺の頭上にふりかかる。ウィズは格好良くて、美しくて、月みたいで、神官で、お金持ちで、家事も得意だ。

 ウィズには不得意なモノなんかない。それと同じで、俺には得意なモノなんてない。

 

 どんなに頑張って俺が服を畳んでも、俺がウィズの衣類に触れていると、俺はまたしても無意識のうちに巣作りを始めてしまうのである。だから、何度やってもダメだった。ウィズ本体が傍に居れば問題ないのだが、居ないとダメ。

 

「もう、巣作り……止めたい」

「止めなくていい。本当に俺の事は気にするな」

「うう、いやだ。いやだ。いやだ」

「っアウト。もう、お前……」

「っはぁ、うえぇ……はぁっ。うぃずぅ」

「アウトっ……!」

 

 

        〇

 

 

 はい、今回もこうなった。

 俺は問題解決が出来ないまま、その時、完全にヒートに入ってしまった。そうなったら、ウィズももういつもの冷静沈着で頭の良いウィズは完全に消える。

そのまま俺達はベッドの上で、俺の持ち寄ったウィズの衣類を巻き込み、ほぼ一週間晩布団の中で過ごす事になった。

 

……のだが、おかげでウィズの洋服は、ほとんど殆ど買い直す羽目になった。なにせ、もう完全に、外に着て行けるような代物ではない程……俺が汚してしまったからだ。

 

 あぁ、もう。

 俺、ウィズに迷惑をかけてばっかりだ。

 

 

「……ごめんなさい」

「だから、謝らなくていいと言っているだろう」

「でも、」

「これに関しては……まぁ、俺が無理をさせたせいもあるしな」

 

 そう言って衣類をゴミ袋に投げ入れるウィズに、とりあえず急いで服を買いに行かねばな、とウィズが小声でつぶやいた。

 最初こそ、捨てずに捨てるソレを巣作りに使えばいいと思ったけれど、ダメだった。その服は完全にウィズの匂いではなく、俺の匂いで上書きされていたからだ。

 

 もう、あんなの巣に使えない。

 ウィズの服だったら言い訳ではない。ウィズの匂いとフェロモンがついてるモノがいいのだ。

 もう完全に、外に着て行けるような代物ではない程……俺が汚してしまったからだ。

 

 あぁ、もう。

 俺、ウィズに迷惑をかけてばっかりだ。

 

 そう申し訳なく思っている筈なのに、俺ときたら本当に救いようがない。なにせ、ウィズが新しい服を買って来たら、匂いがつくまで時間がかかるよなぁと……そんな事を本当はガッカリしているのだから。

 

 俺は本当に救いようのないオメガだ!

 

 

まったく、俺は救いようのないアルファだ。

 

 

 

「ウィズ。今日はめちゃくちゃ気温が高い筈だけど……その格好は何だい?見ているだけで暑苦しいね」

「あぁ、俺も暑いさ」

 

 俺は神官学窓での授業の合間、額に汗を流して働いていた。

 別に賢明に働いている事の例えではない。物理的に汗を流しているだけだ。

 

「アウトかい?」

「あぁ、早く俺の服に匂いをつけてやらねば……部屋で巣が作れないだろう」

「だから、こんな暑い日に厚着してるんだ。健気だねぇ」

 

 まったくそうは思っていない顔で、更には鼻で笑うように口にされるヴァイスの言葉に、俺はわざと額に流れる汗を服の裾で拭った。

アウト曰く、汗が最も匂いが強いらしい。

 普通に臭いだけでは?と思わなくもないのだが、汗のついた服は洗濯した後も強いフェロモンが残るというらしいので、俺はわざと汗を衣類につけるようにしている。

 

「健気に、部屋にマナで記憶陣を張り巡らせて、アウトが巣作りしているのを、仕事の合間に眺めるのが好きな変態は……巣元を作ってあげるのに余念がないわけだぁ」

「黙れ。絶対にアウトには言うなよ」

 

 俺は部屋に張った記憶人にマナの意識を繋ぎながら、部屋で俺の枕に顔をつけて、足りないとばかりに家中をかけまわるアウトの様子が脳内に流れこんでくるのを、感嘆の声を漏らして“見た”。

 

 これだ、これ。

 俺はこの時のアウトの、必死に俺の匂いを求めて夢見心地で駆けまわる姿を、大変好ましく思っている。昨日、衣類を全部捨てたせいで、部屋に俺の匂いのついたモノは殆どなくなっただろう。

 

 さぁ、アウトどうする?

 

「可哀想に……僕はアウトと同期しているから伝わってくるよ。どこどこどこって。今、アウトはソレしか考えられてないよ。これが全部お前の手のひらの上なんて……可哀想に」

「同期しているなら……アウトの思考を全て言え」

「僕を吹き替え字幕みたいな使い方しないでおくれよ」

 

 完全に、俺に対して嫌悪感しかない目を向けてくる。コイツに関しては、俺は嫌悪されている方が心地よいので、そうしてくれると酷く有難い。

 

——–どこどこどこ。ウィズ、どこ。

 

 あぁ、ヴァイスが居なくとも、アウトは本当に分かりやすくて愛おしい。その表情で、何を考えているのか手に取るように分かる。

 

 さぁ、アウト。

 俺は一つだけお前にとっておきの、俺の匂いをつけたものを残してきた。俺からの贈り物だ。そして、ソレを見つけてソレを集めて、今日もベッドで眠るといい。その姿こそが、俺にとっては最高の贈り物になる。

 

 アウト、早く見つけられるといいなぁ?

 

「あぁ、今日も幸福だ」

「キモチワル。ほんと。お前キモチワルいよ」

 

あぁ、そうさ。俺ときたら本当に救いようがない。なにせ、アウトが俺の用意したモノ達を見つけるまでの間のアウトの表情が、余りにも素晴らしいモノだから、酷く分かりにくい場所にソレらを隠してきた。

今日も俺を求めてさまよう可愛い俺の番!

 

「あぁ、暑い……」

 

 流れる汗を袖で拭いながら、俺は思う。

 俺は本当に救いようのないアルファだ!

 

 

 

 

 


おわり。

ウィズがたくさん用意していたのは、ぬいぐるみ、です。

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