番外編13:俺のツレに口出すな!

ーーーー旅の途中

 

 

地主「ようこそいらっしゃいました!勇者様」

初代「いいえ。おもてなし、ありがとうございます」

犬(ぺこ)

地主「あの、そちらの方は」

初代「あぁ、彼は俺のツレです。お気にならさらず」

地主「…そうですか。さぁ、こちらへどうぞ。勇者様」

初代「ええ」

犬(嫌な、感じ…)

 

地主「さぁ、勇者様。こちらへどうぞ……あぁ、お連れ様は。先にお部屋へご案内します。さ、お連れ様をお部屋へ」

初代「…」

犬「え?」

メイド「はい、お連れ様。こちらへどうぞ」

犬「あ、あの」

初代「いい。部屋に行っていろ」

犬「はい(初代様が言うなら)」

地主「さぁ、勇者様。こちらへ」

 

     ○

 

初代「さて、俺に何か直接ご用ですか?」

地主「えぇ。一つご提案なのですが、魔王討伐の勇者様御一行が、あの…彼だけ、というのは、如何なモノかと思いまして」

初代「どういう事でしょうか」

地主「どうせならば、部隊を組まれては如何かと。彼だけでは、余りも頼りない」

 

初代「俺の実力に不満が?」

地主「いいえ!そうではなく!あの、お連れ様ですが、」

初代「ツレです」

地主「は?」

初代「間違えないで頂きたい。アレは俺のツレです」

地主「(な、何が違うんだ)失礼致しました。あの、ツレのお方」

初代「ええ」

地主「あの方は勇者様に釣り合っておいででない」

 

初代「へぇ、どうしてそう思われるのです?」

地主「私も昔、戦場に居た人間ですので、その者の実力というのは見ればすぐに分かります。あと今は政も行う立場なので、人を見る目も、他よりは持ち合わせているつもりです」

初代「それで?何が言いたいんですか」

地主「では、ハッキリ申し上げます」

 

地主「彼では、勇者様の御付きの者としては、実力不足です」

初代「…御付きの者?」スッ

地主「っ!申し訳ございません“ツレ”でいらっしゃいましたね(だから、何が違うんだ!)」

初代「魔王を倒すのは俺です。ツレに実力は不要です」

地主「しかし!天下の勇者様御一行が、今のままでは余りにも」

 

       ○

 

地主『みすぼらし過ぎます!』

 

犬(嫌な予感がしたから来てみたら。危ないのは、初代様じゃなくて…俺か)

 

地主『勿論!勇者様は立派な御方です!しかし!いくら立派な王でも、身につけているモノがみすぼらしければ、民衆はついて行きません!』

 

犬(俺も…一応勇者なんだけどな)

 

地主『人は身に付けるモノによって、如何様にも見え方が変わってきます!勇者様も、その辺りの事をきちんと理解されて良い頃合いでしょう!あの者は実力以前に、風格が無い!自分は勇者様のツレであるという自負のない者が、貴方様の側に付く事は百害あって一理ナシです!』

 

犬(ど、どうしよう……)

 

犬(あの人が言っている事って、正しい気がする。お、俺みたいなスクールカースト、ド底辺の陰キャが一緒だと、カースト上位の初代様まで、キモく見られるんじゃ…)

 

ーーーアイツも、あぁ見えて実は陰キャなんじゃね?

ーーーだって、キモオタと一緒に居るんだもん。絶対そーでしょ。

 

犬(あわわ)

 

犬(ど、ど、どどうしよう!どうしよう!)あわあわ

 

地主『うちから、数名。勇者様にピッタリの者を出します。その者達をお連れください』

 

犬(え?え?え?待っって!そんな事したら、パーティ増えて…お、俺の居場所は……?いや、そもそも。俺、パーティ外されたり、するんじゃ……?)オロオロ

 

地主『右から長男の〜』

 

犬『…』トボ

 

スタスタ

バタン

 

犬「(パーティ追放モノの漫画、好きだったけど。実際に追放されるのは…嫌だ。それに、知らない人が増えるのも…いやだ。俺は)

 

初代様とふたりが良い」

 

初代「何だって?」

 

犬「っ!」

初代「あー、クソだるかった。おい、犬。メシ」

 

犬「は、はい!(あ、あれ)」

初代「なんだ?何か俺に聞きたい事でもあんのか?」

犬「あ、あ、いや。いえ。何も、ありません(ど、どうなったんだろ。俺は、追放、される?)」

初代「っは、お前。さっき部屋の外に居ただろ?」

犬「あ、あ。え、えと」

初代「お前は、俺に嘘なんかつかねぇよな?」

 

犬「はっ、はい!部屋の外で途中まで盗み聞きしていました!」ピン!

初代「どこまで聞いた?」

犬「地主様が、新しい仲間のご紹介をされる直前までです!」

初代「…あ?何が仲間だ?あんなクソの役にも立たねぇボンボン共なんか、仲間にするワケねぇだろ」

犬「っえ?じゃあ、俺は追放されな、い?」

 

初代「んで、テメェが追放されんだよ。ワケわかんねぇだろ」

犬「あ、だったら…」

初代「今までのまんま。俺とテメェの二人に決まってんだろうが」

犬「っ!わわ!(よかったー!)」

初代「そんなに俺と二人が良いのかよ。キメェな」

犬「す!すみません!」にこにこ

初代(こいつ、スゲェ喜んでら)

 

犬「お、俺!これからも、追放されないように、頑張ります!」

初代「おう、励め(追放って何だよ)」

犬(良かったー!俺、お金持ちのボンボンじゃなくて!)にこにこ

初代「…」

 

ーーー

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地主『どうですか?全員、勇者様にピッタリの人材だと思いますよ!』

初代『そうですか。それなら…』

 

初代『貴方は今から一晩で聖王都から、魔性具の材料を取って来てください。後、貴方は東の坑道に一人で行って、魔剣の材料になるエタールを取れるだけ取って来て頂いて。そうそう、そちらの貴方は断崖に咲くと言われているセレーンの花を。そして』

地主『ちょっ、ちょっと待ってください!勇者様!』

 

初代『なんでしょう?』にこ

地主『それは、あまりにも無理でしょう!急にそんな無茶を言われても困りますよ!』

初代『無茶?そうですか?』

地主『そうですよ!そんな事、一人でさせたら死んで…』

初代『俺のツレは全部一人でこなしますが?』

地主『は?』

初代『ツレは、全部こなしましたが?』

 

地主『そんな、それはあんまり荒唐無稽過ぎ…』

初代『あ?俺のツレをテメェんトコのクソ息子共と一緒にすんなや。このボケが』

地主『っな!』

初代『あとなぁ、人の連れ合い捕まえて、みすぼらしいだのクソだの勝手言ってんじゃねぇ』

地主『まさか。ツレって』

初代『おい、一晩だけ部屋借りるぞ』

 

初代『メシとかいらねぇから。準備すんなよ。このクソ地主が』

地主『……』

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初代(今夜あたり、変なの寄越して来そうだな…でも)

 

犬「…」テテ

 

初代「(アイツが居るし。大丈夫だろ。それに、ここの地主、領民からクソ評判悪かったし……っし)おい、犬!」

 

犬「…はい!」テテ

 

初代「今晩、もし変な奴が来たら」

犬「はい!」

初代「全員、お前の好きにしろ」

犬「…好きに?」パチパチ

初代「あぁ、好きにしろ。俺は、今日テメェを抱いたら、よく寝ててやる。絶対、起きないと思え」

犬「??はい(よくわからないけど、初代様の言う通りにしよう)」

初代「じゃあ、メシ」

 

犬「はい!」

 

 

その晩、腹いせに仕向けられた暗殺者を、犬は全員殺した挙句、差金を吐かせて、ついでに地主も殺します。

 

犬「やっぱり嫌な奴だったな。そういえば、こういう先生居たな」

 

初代(っはは!やっぱコイツ!最高過ぎんだろ!)ブルッ

 

 

犬が自分の為に人を殺す事に興奮し始める初代様。