—–旅の途中
宿主「一泊で二部屋かい?」
犬「あ、」チラ
初代「(こくん)」
犬「いえ、一部屋でお願いします」
宿主「ふーん、じゃコレ鍵ね。あと、うちは温泉が裏に湧いてるから、部屋にシャワーはついてないよ。アンタ達、温泉わかる?」
犬「温泉……はい。わかります」
初代「…オンセン」
宿主「絶対に飛び込んだり泳いだりするんじゃないよ」
犬「はい、わかりました(この世界で温泉なんて珍しい)」
初代「…」
宿主「じゃ、ごゆっくり」
○
in部屋
犬「うわぁ…(土足厳禁の畳部屋なんて……旅館みたいだ)」
初代「おい」
犬「はい、何でしょう。初代様」
初代「さっき言ってた“オンセン“って何だ」
犬「初代様、温泉は初めてですか?」
初代「ああ、簡単に説明しろ」
犬「(温泉の、説明…)大きな、お風呂です」
初代「大きな、風呂…」
犬「(急に初代様が外国から日本にホームステイに来た男の子みたいに見える……なんか、かわいいな)気持ち良いですよ。行けば分かります」
初代「ふーん」
犬「い、行きますか?」
初代「は?一緒にか?」
犬「あ、はい。温泉なので。その、一緒に」
初代「お前からンな事言ってくるとは……今日はやけに大胆だな」
犬「へ?」
初代「っは、テメェも腐っても雄犬ってワケか」ニヤ
犬「え?あ(何か勘違いをされているような)」
初代「いいだろう。イキがってるテメェも珍しいからな」
犬(初代様。機嫌が、良い……?)
初代「一緒に風呂に入ってやるよ。おら、さっさと行くぞ!」
犬「あっ、は、はい!(初代様のタオルと浴衣を……!)」バタバタ
in脱衣所
犬「初代様、ここで服を脱ぎます」
初代「広いな」
犬「そうですか?(普通の広さの脱衣所だと思うけど)」ぬぎ
初代「…おう」ぬぎ
犬「初代様、こちらのタオルをお持ちください。湯船にはつけてはいけません」
初代「色々作法があんのな……つーか、テメェ。何今さら前隠してんだ」
犬「へ?」
初代「俺はもうテメェのなんて毎度見てんだから、隠す必要ねぇだろ」きょとん
犬「えっと、でも。明るいですし(他の人も居るし…)」
初代「っは。ったく、ここまで来て何照れてんだ。自分からこんなトコ誘っといてよ」
犬「あ、え?」
初代「まぁ、そういうのも、悪くはねぇけどよ」ご機嫌
ガラッ
初代「っ!」ビクッ
他の客「良い風呂でしたねぇ」
他の客「まさか、こんな宿があるなんて」
ゾロゾロ
初代「は!?」
犬「へっ?」
初代「おいっ!犬!何で他の奴らが居んだよ!」コソ
犬「えっ、あっあの。お、温泉ですし?」
初代「温泉っつーのはデカい風呂じゃねぇのか!?」ずいっ
犬「そっ、そうです!皆で入る大きなお風呂でっ……うわっ!」
初代「皆でって……このボケが!何でそれを早く言わなねぇ!早く服を着ろ!このクソ犬が!」ゴソゴソ
初代様は他の客に見られないように急いで犬に服を着せたよ!
犬「え、あの…温泉は?」
初代「あ゛ぁ!?ダメに決まってんだろうが!何言ってんだ!」
犬「で、でも…部屋にシャワーは無いって」
初代「我慢しろ」
犬「で、でも。戦闘で、す、凄く…汗を、かいて」
初代「おい、返事は何て教えた?」
犬「…はい(なんでだ?さっきまであんなに機嫌が良さそうだったのに)」
初代「あぁぁぁ、クソ。なんつー宿だよ。ありえねぇわ」
犬(久しぶりに、シャワーじゃない湯船に……つかってみたかった)しょぼん
初代「…ンだよ。何か文句あんのか?」
犬 フルフル
初代「ウザ、なんだその態度。犬の癖に、俺に立て衝くのか?あ?」
犬 フルフル
初代「あ゛ーーーー!先に部屋に戻ってろ!」ガンッ!
犬「っ!!」びくっ
他の客「どうしたんだ?」
他の客「喧嘩かぁ?」
初代様「っ!クソっ!」
犬「っはい!申し訳ございませんでした(やばい!ちゃんと我慢しないと!)」ぺこ
初代「さっさと行け!」フイ
犬「…はい(怒らせてしまった…でも、ここで土下座なんてしたら、もっと怒らせてしまうから…)」タタタ
初代「あー。クソッ、貸切にしたら…いくら掛かんだよ」スタスタ
この後、初代様はけっこうな金額と最高の愛想、そして勇者の地位を使って、宿の温泉を「家族風呂」化させたよ!
〇おまけ〇
初代「勇者は他者に肌を晒してしまうと、その力が弱まってしまうんです。どうか、そこをお願いします」
宿主「とは言ってもねぇ、他のお客さんも居るしねぇ」
初代「これでどうですか?」スッ
宿主「っ!勇者様の頼みとあれば仕方ないね!自由に使いな!」
初代「ありがとうございます」にこ
スパーーン!
初代「犬!オンセンに行くぞ!…って、テメェ何土下座してんだ?」
犬「へ?温泉?」
犬、初代様に謝るべく土下座でずーっと部屋に待機してたよ。
いつか、浴衣温泉R18を書きたいね!