番外編1:天才のハジメテ

 

≪前書き≫

 

本編直後。

カルドとヨハンのハジメテのお話。

R18となっております。

W童貞の二人が、それぞれの持ちえる最大のコミュニケーション手段を用いて、一生懸命致しまくるお話。

 

では、どうぞ。

 


 

 

 

 私、カルド・ダーウィングには「性欲」というモノが存在しなかった。

 

 

 今年で二十八になるが、もちろん性行為の経験は無い。むしろ、したいと思った事すら欠片もなかった。故に、私には人間の雄としての本能が欠落しているのだと十代の半ば、早々に結論付けた。でも、別に構わない。

 

 私はこの手の中にある、この素晴らしいアイディアの研究さえ出来れば、特に何の問題もないのだから。

 そう、思っていたのだが――。

 

 

天才のハジメテ

 

 

「……ヨハン、私の世界にはキミしか居ないんだ」

 

 

 私は自分ではどうしようもない程に荒くなる呼吸を抑えきれぬまま、自身の主張するペニスをヨハンの体に擦り付けた。あぁ、もどかしい。イライラする。

 視界いっぱいに映り込むヨハンの潤んだ瞳が、私の姿をハッキリと映す。

 なんだ、この獣のように理性を失った生き物は。こんなに腰を振って、知性の欠片もないじゃないか。

 

 でも、それはヨハンだって同じだ。先程から、私の腹でユラユラと腰を揺らしている。腰に添えた手でヨハンの形のよい尻を撫でてみる。その瞬間、ヨハンの体がヒクリと揺れ、潤んだ瞳が蕩けた。

 

「っはぁ、ヨハン。ヨハンっ。素晴らしな。キミのペニスも勃起してる。これは、私で興奮してくれてるという事で合っているか?」

 

 私の問いに、ヨハンの目が大きく見開かれた。そして、恥ずかしいのだろう。顔を真っ赤に染め上げると、その視線を僅かに下方へと逸らしてしまった。ヨハンの息も荒い。

 

 あぁ、この腹の底から湧き上がってくる、下腹部を擽るような感情は何だ?

 更に、ペニスが勃起するのを感じる。苦しい。

 

「っはぁ、ヨハン。……私は何も分からぬ愚か者だ。だから、教えて欲しい。キミも私の痴態に性的欲求を覚えてくれている?」

「……」

 

 ヨハンは頷いてくれない。

 伏せた瞼が震え、長いまつ毛も合わせて揺れている。その様に、私は更に腹の底に居座るくすぐったさが増した。

 

「……では、私の事を話そう。私は、キミで興奮している。この勃起したペニスを、キミの中に挿入して律動したくて堪らないんだ」

「……」

 

 その瞬間、ヨハンの体が俺の上で小さく縮こまった。怖がらせてしまったのだろうか。こういう時、どうしたら良いのか全く分からない。

 

「ヨハン……?」

「っ、っ、っはーっはー」

 

 ヨハンの頭が私の胸に押し付けられる。シャツ越しに、ヨハンの熱い吐息がかかる。苦しい。ペニスが苦しい。性衝動が、まさかこんなにも強いモノだったとは。

 ヨハンの感情も読み取れない。性行為の経験もない。自慰も初めて昨日したばかり。

 

 何もかも、私には経験が足りなさ過ぎた。

 もう、何も分からない。

 

「くるしい。よはん、わたしは……どうしたらいい?」

「っ!」

 

 襲い来る性衝動という慣れない苦しみの中、私は最終的にヨハンに縋ってしまった。ヨハンは口が利けぬというのに、私は一体何を言ってしまっているのだろう。

 そう、私が自身の愚かさに苦悩し、襲い来る性衝動に押しつぶされそうになった時だった。

 

「っは」

「っんぅ」

 

 ヨハンが再び、私の頬を両手で挟み口付けをしてきた。

 しかも、今回は触れるだけではない。ヨハンのヌルリとしたモノが私の口内に入り込み、舌に絡まってくる。あぁ、これはヨハンの舌だ。歯列をなぞり、上顎を舐め、私を安心させるように口内を撫でまわす。

 

 ふーふーとヨハンの呼吸が私の顔に触れる。必死だ。どうやら、ヨハンも私同様慣れていないようだと認識した時、私の腹の底は更に熱さを増した。

 

「っは、っは。っ」

「よはん」

 

 ちゅっ、と音を立てて唇が離れていく。まだ物足りない。

 強欲にもそんな事を思い、再びヨハンの唇を塞ごうと試みた。しかし、ヨハンは私の唇を指でソッと止めると、潤み切った瞳がスルリと視線を落とした。

 

「よはん、なにを?」

「っはー、っはー」

 

 そして、張り詰めた私のズボンを認めると、そこに手をかけベルトを取っていった。あぁ、ヨハン。君は、まさか。

 

「ヨハン、まさか」

「っは、っふ」

 

 高まる期待感の中、現れたペニスに私は自分で驚いてしまった。まさか、自分のモノがここまで大きく変化するとは思っていなかったのだ。

 昨日自慰をした時は、こんな風にはならなかったのに。ビキビキと音がしそうな程勃起したペニスが、まるでそれ自身だけで生きているような動きを見せる。グロテスクだ。ヨハンはどう思っただろう。

 

「ヨハン、あの……」

 

 ペニスに目を奪われる彼に恐る恐る声をかけると、ハッとしたヨハンはいつも通り私の目を見て頷いてくれた。そして……。

 

「っふ、~~っ!」

「あぁっっ」

 

 ヨハンはその奇怪なまでに変化をした私のペニスを、エラの張った亀頭ごとパクリと咥えてみせた。

 

 ぢゅぼっ、ちゅっ、っふぅ、じゅるっじゅるっ。

 いやらしい音を立てながら、ヨハンが私のペニスに吸い付く。尿道をヨハンの舌にぐりぐりと攻めてられて、背筋に凄まじい快楽が走る。チラとヨハンと目が合う。すると、嬉しそうに目を細め、そのまま激しくペニスを吸い上げられた。

 

「っふ、っふー、っふ、っはっふ」

「ヨハンっ、あぁっ!いいっ!」

 

 ヨハンの唇がエラの部分を絶妙に刺激してくるのだから堪らない。私のペニスはヨハンの口淫により、射精寸前だった。

 

「よ、はんっ」

 

 ヨハンの視線が私へと向く。苦し気な表情の中、やはり私を見つめる目は優しく、そしてヨハンいつも通り。

 

 コクリと頷いた。

 その瞬間、私は腹の底から湧き上がってくる、下腹部を擽るような感情の正体に、衝動的に行きついた。

 

「かわいいっ、ヨハン!君はっ、っはぁぁっ」

「っっふ」

 

 射精した。最後に思いきり腰を振ったせいだろう。ヨハンの喉奥に、直接精を叩き込むような感触がした。苦しそうなヨハンの表情に、私はすぐにでもペニスを抜くべきだと理解していた。でも、出来なかった。私は、精の残滓を全て彼の中に流し込みたいという雄の本能で、完全に埋め尽くされていたのだ。

 

「っはー、っふーー」

 

 長い射精が、やっと終わった。ケホケホとヨハンが口を押えて咳込む。苦し気なヨハンの口の周りには、私の精がべったりと付いていた。その姿に、またしても腹の底が疼く。ダメだ、足りない。

 

「っはぁ、っは。あ、ヨハン、キミと性行為がしたい。したくてたまらない」

「……」

 

 苦し気な様子のヨハンに対し、私はみっともなく懇願する。

 いつもは多彩なアイディアでいっぱいの頭の中が、今はもうヨハンとの性行為の事しか考えられなくなっていた。こんな事は初めてだ。もしかして、もう二度とアイディアは降ってこないのではないだろうか。

 

 それは由々しい事態だ。しかし、

 

「シたい。我慢できない。キミの中で、腰を振って、もっと奥に精をだしたい」

 

 でも、そんな事は今の私にはハッキリ言ってどうでもよかった。

 先程、射精したばかりのペニスが早くも勃起しかけている。苦しい。性行為がしたい。ヨハンの中にこの怒張を突き立てて、みっともなく腰を振りたくりたい。動物の交尾の方がまだマシだと思えるような、節操もなく、見苦しいまでの姿で、全てをヨハンに曝け出したい。

 

彼のナカに入りたくて入りたくて仕方がない!

 

「っお、おねがいだ。キミのナカに、入りたい。性行為が、せ、セックスが、よ、ヨハンと……ヨハンとしたっ」

 

 と、俺がそこまで口にした時だ。

 再びヨハンの口が私の唇を塞いだ。勢いが凄い。

 しかし、今度は「ちゅっ」と軽い音を鳴らしてすぐに離れて行ってしまった。一体どうしたのだろう。そう、離れていくヨハンに視線を向けると、ヨハンは「はーーー」と深く息を吐き、真っ赤な顔で私を見つめながら――

 

(うん、うん、うん)

 

 何度も、何度も深く頷いた。

 

「ヨハン、かわいい。ヨハンは、私のモノだ。なんて、かわいらしい……たまらない」

「……は、ふ……はっ」

 

 私はそのまま蕩けた視線を向けてくるヨハンを床に押し倒すと、ベッドに行く間もなくその場でヨハンを犯した。

 

 

 

       〇

 

 

 

 ヨハンは口が利けない。

 だから、感情の全てを“態度”で示してくれる。

 

 

「っは、ヨハン!ヨハンっ!」

「~~~っっ!」

 

 私は一時すら止まる瞬間がない程、ヨハンの中でペニスの抜き差しを繰り返した。どれほどこうして繋がっていただろう。何度ヨハンの中に私の精を吐き出しただろう。

 

ずぷっ、ぬぷっ、……じゅぷっじゅぷっっ……ごりゅっっ……!

 

 抜き差しの度に私のペニスはヨハンの最奥を更新していく。

 

 みっともなく腰を振り散らかす私に対し、ヨハンははしたなく股を広げ私の腰にまわす。愚かな私が勘違いしているだけかもしれないが、もっと奥に来て欲しいと言われているようで、たまらなくなる。

 

 ずちゅんっ!

 

「~~っ!!」

 

 ヨハンの体が私の下で跳ねた。どうやら、私のペニスがヨハンの前立腺の凝りを掠めたらしい。ハラハラと涙を流しながら、苦し気な様子で呼吸を繰り返す。チラチラと見える赤い舌がいやらしく私を誘うものだから、私は本能のままソレにしゃぶりついた。

 

「んっふぅ」

「~~っ!」

 

 じゅるっ、じゅっちゅぷっ。れろっ。

 クチュクチュとい深い口付けの水音が、再び欲を煽る。終わる事のない性衝動の奔流。何度も何度も互いに吐き出した精液のせいで、下半身はベタベタでどちらがどちらのモノか分かなくなっていた。

 

 ヨハンは私の首に腕を回すと、そのまま自身の芯を持った乳首へと誘われた。もう、幾度も私が吸い付いたせいで、真っ赤に色付いている。私に吸い付いて欲しいとでも言うように懸命に立ち上がる姿は、ともかく健気で堪らなかった。

 

 チラリとヨハンを見上げてみれば、蕩けた瞳と視線が重なった。あぁ、これなら私にも分かる。私はしゃぶりつくように目の前の突起を貪った。片方の乳首は右手で優しく触れる。

 

 くりっ……くにくにっ。れろっ、ちゅっ、じゅっぷじゅぷっ。

 

「~~~~~っっっ!!」

「っは」

 

 ヨハンの体がのけ反り、ビクビクと腰が跳ねた。同時にナカで私のペニスを包みこんでいた肉壁が一気にうねり、そのせいで頭の中が弾けた。光が見える。その瞬間、私の中に一つの大きなアイディア……いや、これは違う。

 

 “使命”が舞い降りて来た。

 

「っはぁ、ぁっ。はらませねば。よはんを、わたしの、精で満たし……子を、つくらねば」

「~っふ」

「私の、子を、この腹に。私の、種子で……っは。よはんも、そう、思うだろっ⁉私の子を、孕みたいっと!なぁっ!?ヨハンヨハンヨハンヨハンっ!」

 

「……っ」

 

 完全に獣へと成り下がった私からの問いに、ヨハンは熱に浮かされた瞳でコクコクと頷いた。

 あぁ、分かってくれて嬉しいよ、ヨハン。やはりヨハンは私の事を一番に理解してくれる。私は腰を振りたくりながら、初めての雄の本能の中で、可愛い可愛い私の「妻」を孕ませる決意をしたのだった。

 

 

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天才カルド・ダーウィングは、その偉大な遺伝子を十の命に分け与えた。

その子供達は誰もが優秀で、その後、世界に散り、各学問を全て百年先の未来まで連れて行ったという。

 

 

 

 

おわり


 

【後書き】

童貞×童貞のハジメテ話でした。

 

好意と快楽を態度で示すヨハン(受け)

好意と快楽を全て言葉に出すカルド(攻め)

 

態度で示すしかないヨハンは、完全に淫乱受けのレールに乗ってしまいました(癖)