その夜、俺は待ちに待った【真実の終わり】を迎えていた
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【イーサ】
私は愛する諸君らと、そして愛しいたった一人の人間の為に……ありったけの勇気を持つ事をここに誓う。
……神の加護が我々とともにあらんことを。
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コントローラーを手に、俺はピンと伸ばした姿勢でテレビ画面に釘付けになっていた。画面に映る金色の王は、非常に美しく、凛とした態度で国民や、自分の愛する者に向かって堂々と語りかけている。
「これは……」
思わず感嘆の声が漏れる。
そう、画面に映る王は、ハッキリとプレイヤーに背を向けていた。こんなスチル画像は、これまでに見た事がない。シリーズ史上初めてではないだろうか。
「すごい」
【セブンスナイト】は恋愛シミュレーションゲームだ。
故に、基本的にキャラクターの“顔”をメインとした映像がスチルとして用いられるのが常だった。それなのに、コレはどうだ。この場面は、プレイヤーが後ろから王を見守っている設定を一切崩してない。カメラワークが一貫して主人公目線なのだ。
「イーサだ」
むしろ、これは“後ろ姿”だからこそ生きる美麗さであり、そして臨場感だ。これは、あの場に居た俺だからこそ、心の底からそう思える。
「うぅん……さとし」
画面から聞こえてくる声と同じ声が、俺のすぐ脇から聞こえてきた。チラと声のする方を見てみると、そこには先程まで一緒にゲーム画面を見ていた相手が、俺の体に寄り添うように眠りについていた。
「寝たのか、キン」
「んぅ、さとし」
俺は返事なのか寝言なのか分からない声で自らの名を呼ぶ金弥の頭をソッと撫でた。この幼馴染の髪の毛の柔らかさは昔から全く変わらない。指の間をスルリと抜けていく髪の毛の感触を一通り楽しむと、俺は再び視線を画面へと戻した。
「……ぁ」
思わず声が漏れた。
なにせ、そこには先程まで国民に向かって語りかけていた王……イーサが、此方に向かって振り返っていたのだ。
「う、わ……」
美麗な止め絵からアニメーションに滑らかに移行する画面。
コツコツと大理石の床を鳴らす音が次第に近寄ってくる。音の強弱で表現された足音は、最早それだけで、一瞬にしてプレイヤーを彼方の世界へと連れて行ってくれる。
「いーさ……」
画面の此方側に向かってゆっくりと歩み寄るイーサは、それはもう嬉しそうな笑みを浮かべながら問いかけてきた。
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【イーサ】
サトシ、イーサは上手に出来たか。
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【どう答えますか?】
答えは、もう決まっている。