番外編25:お母さんはイシ君!(ヒスイ一家/初代様一家)

 

—魔王城(謁見の間=リビング)

 

 

犬「あれ?ご子息様の声が聞こえない……もうお昼寝の時間なのに」

 

ウロウロ

 

初代「どうした?」

犬「ご子息様がお昼寝の時間なのにどこにもいらっしゃいません」

初代「あ?どうせその辺で遊び疲れて寝てんだろ」

犬「いえ。ご子息様は俺がトントンしないと、お昼寝出来ないので」

 

初代「あ゛?なに甘やかしてんだ。そろそろ昼寝くらい一人でさせろ」イラッ

犬「でっ、でも……その、まだご子息様は10歳とお小さいですし……ん?10歳?」

初代「10歳だな」

犬「えっ?でも、まだご子息様は赤ちゃんで……あれ、あれれ?じゃあ、俺って今何歳だ?」

初代(面倒クセェ事に気付きやがったな)

 

 

犬「ん、んーーー?」混乱

初代(どうにか話を逸らさねぇと)

 

??「かわいいねぇ、かわいいねぇ」

???「ったく。コイツらあちぃなぁ…」

 

犬「あれ?」

初代「この声は…」

 

スタスタ

 

ヘマ「あっ!魔王様と犬のお母さんだ!」

ヒスイ「お、ホントだ。全然変わってねぇなー。お前ら」

 

犬「あっ、大賢者様と……イシ君!?」

 

ヒスイ「あ?なんだよ」

犬「えっ!あれ?ちょっと何だろ。大分、落ち着いたね……何歳になったの?」オロオロ

ヒスイ「30だよ。ま、10年も経ちゃ、さすがに落ち着くわ」

犬「じゅ、10年!?あっ、いや、でも子息様も10歳だからそうなるのか……えっ。なら、俺は?」

 

ヒスイ「知るかよ。自分の年齢忘れるとか耄碌し過ぎだろ」

犬「あれーーー?」

 

初代「おい、ンな事より。下僕、テメェの腕ん中で寝てんのは、ウチのせがれじゃねぇか」スッ

ヘマ「この子達は、コイシ君とコイヌ君だよ!可愛いでしょー!」にこー!

 

コイシ「すぷぴーすぷぴー」

せがれ「すぷぴーすぷぷー」

 

犬「っあれ!?ご子息様、寝てる?」

ヒスイ「あんまデケェ声出すな。起きんだろうが」

犬「すっ、すみません」

 

せがれ「すぷぴー」

 

 

 

犬「……凄い。ご子息様が俺以外の……しかも男の人の腕の中で眠るなんて」

初代「(……言い方)確かに人見知りするコイツにしちゃ珍しいな」

 

ヘマ「イシ君のとんとんスリープはどんな赤ちゃんも回避出来ないからね!コイヌ君もすぐ寝ちゃったよ!」

ヒスイ「っは!楽勝だわ」

 

犬(なんか色々凄いな。それにしても30歳か…)チラ

 

コイシ「…すぷぅ」ぎゅっ

ヘマ「かわいー」

ヒスイ「っはは、変な鼻息だな」とんとん

 

犬「……(もう立派なお父さんみたいだ)イシ君、本当に格好良くなりましたね」しみじみ

 

初代「あ゛?」

 

ヘマ「うん!イシ君は格好良いよ!」

ヒスイ「まぁ、俺だからな。格好良いのがフツーだわ」

 

犬(さすが初代様の血脈だなぁ)にこ

初代「……おい、犬。お前老けてんのがいいのか」

犬「え?(何の話だ?)」

 

 

コイシ「…ぅー?」パチ!

 

犬「あっ!」

初代「あ?」

 

ヘマ「コイシ君が起きたー!」

犬「コイシ君?」

ヘマ「この子の名前だよ!イシ君の赤ちゃんだからコイシ君!」

犬「え、イシ君の?(大賢者様の、じゃなくて?)」

ヘマ「うん!イシ君がお母さんなの!」

犬「お母さん……?」チラ

 

初代「……」仁王立ち

 

コイシ「……ぅー」ぎゅっ

ヒスイ「あ?コイシ。お前どうした。魔王にビビってんのか?」

コイシ「……うぇ」ぐりぐり

ヒスイ「あいあい、大丈夫だ」トントン

 

犬(イシ君が”お母さん“って事は……俺、勝手に大賢者様が俺と同じ役割なのかと思っていたけど……もしかして、逆?なのかな)ジッ

 

 

コイシ「……ふぇ」ジワッ

ヒスイ「あぁ。こりゃ、メシだな」

ヘマ「ごはんだー!確かにお腹すいたねー!」

 

犬(……人は見た目によらないなぁ)ジッ

初代「……犬。お前、そんなにか?」

犬「へ?」

 

 

初代「おい、俺はな?テメェが人見知りしてビビんねぇように、敢えて一緒に旅をしていた18の時の姿をしてやってんだ。分かってんのか?」

犬「は、はぁ」

初代「あの位の年齢がいいのか。それとも、もっと上か。言え、その姿になってやるよ」

犬「え、いや。俺…(だから、何の話だ?)」

 

ヒスイ「おい、手下ー!」

犬「っはい!」

初代「っち」

 

ヒスイ「コイシにメシ食わせてぇから、この……コイヌ返すわ。あと、どっか部屋貸してくれ」

犬「っは、はい!すみません!どうぞ、ご子息様」

 

せがれ「すぷぷぷ」ぎゅっ

ヒスイ「全然、離れねぇー」

ヘマ「へへ、イシ君がいいって!気持ちわかるよー」にこー

ヒスイ「ヘマ……」

 

せがれ「すぷぅ」すやすや

 

犬「っす、凄い!ご子息様、どんどん人見知りを克服されて……凄いです!」パチパチ

ヒスイ「いや、克服はしてねぇだろ。寝てるだけだし」

 

犬「それでも凄い事なんです!そして、イシ君も凄い!人見知りのご子息様をこんなに……初代様もそう思いませんか?」パッ

 

初代「……おい。今日から年齢を少しずつ上げていってやる。いいところで言え、お前の好みの年齢で止めてやっから」スン

犬「え?え?(だから、何の話だ?)」

 

コイシ「ふぇ」

 

ヒスイ「おい、手下ー。このまま二人とも連れてくから、部屋ー!」

 

犬「あっ、はい!只今!」

ヒスイ「あと、ミルク作っから。火貸せ!」

犬「あっ、分かりました。どうぞ、哺乳瓶もたくさんありますので」

ヒスイ「コイシ、決まった口の奴じゃねぇとえずくんだよ」

犬「あぁ、そういうのありますね」

 

スタスタスタ

 

ヘマ「魔王様ー!魔王様―!赤ちゃんのオモチャと道具を貰いに来たよ!ください!」にこ!

初代「……クソ。なんだアレ」

ヘマ「あと、赤ちゃんの育て方も教え……」

初代「まずは三十代からジワジワいくしかねぇか」

 

スタスタ パッ!

 

ヘマ「あれ?魔王様、どこかに行っちゃった」

 

 

ヘマ&ヒスイ&コイシ、魔王城の二人と合流!

犬はヒスイと子育てのアレコレで盛り上がり、ヘマは赤ちゃんの周りでコロコロして、初代様は一人勘違いをしてモヤモヤしているよ!

 

 

○おまけ○

 

ヒスイ「そういや、コイツは何歳なんだ?」

犬「えっと、10歳です」

せがれ「すぷぷぷー」ぎゅっ

ヒスイ「じゅ……おぉ、そうか」

 

ヒスイ、思わずツッコミそうになるものの、子の成長にとやかく言うのは野暮なので口を塞ぎました!

 

成長!