番外編29:せがれ様は褒められたい!(ヒスイ一家/初代一家)

 

—–魔王城

 

ヒスイ「はぁっ!?なんだよ、突然帰れって!まだ来たばっかじゃねぇか!」

初代「ったりめぇだろうが!テメェらが来たせいで、せがれがまた赤ん坊に戻っちまったんだぞ!玩具なら好きなだけ持って行っていいから、さっさと出て行け!!」

ヒスイ「そりゃ、俺らのせいじゃねぇだろうが!」

 

 

初代「テメェらのせいだ!やっと十年かけてあそこまで成長したのに、またフリダシに戻っちまった!」

ヒスイ「そりゃ、テメェんとこの子育てに……いや、テメェの血に問題があんじゃねぇのか!?テメェの血がクソなんだよ!ばぁぁか!」

初代「あ”ぁっ!?ンだと!?」

ヒスイ「なんだよ!?」

 

 

       〇

 

 

ヘマ「魔王様とイシ君、すごく喧嘩してるねぇ」

犬「なんか……もう、色々とすみません」

せがれ「ぅ、あー」

ヘマ「コイヌ君、本当に赤ちゃんになっちゃったね。コイシ君の方がお兄ちゃんになっちゃった」

 

コイシ「…」ジッ

せがれ「ぅ、にゅう」じっ

 

犬「赤ちゃん同士が見つめ合ってる」

ヘマ「可愛いー」

 

 

犬「そういえば、コイシ君は生まれてどのくらいなんですか?」

ヘマ「わかんない。知らない女の人が捨てて行っちゃったから。いつ生まれたのかはよくわからないんだー」

 

犬「そ、そんな……こんなに可愛いのに」

コイシ「……」じっ

 

ヘマ「でもいいんだー。俺とイシ君で大きくなるまでずーっと育てるから。コイシ君、あのね?好きな人が出来たらその人の所に行ってもいいけど…」

コイシ「…」じっ

ヘマ「出来なかったら、ずーっと一緒に居ていいんだからね?……三人で、ずっと一緒がいいなぁ」

コイシ「…う」

 

コイシはハイハイでヘマの傍まで近寄ったよ!

 

犬「大賢者様…コイシ君」しんみり

せがれ「うにゅ、うにゅ」

 

コイシ「…ン!」

コイシはその場に立ったよ!

 

犬「え?」

ヘマ「…え?」

 

コイシ「……ま」

ヘマ「っっ!!!」

コイシ「ま」

 

 

コイシは立ってヘマを呼んだよ!これは「ヘマ」の「マ」みたいだね!

※コイシには「ママ」という言葉の概念がありません(誰も呼ばないから)

 

コイシ「ま!」

ヘマ「コイシ君が……喋った!立った!い、い、い、イシくーん!!」

 

犬「お、俺が呼んできます!」

ヘマ「お、お、お願い!」

犬「はいっ!!」

せがれ「ぅゆ?」

 

 

——

 

 

ヒスイ「あ゛ぁ!?なんだよ、このクズの根源がァ!世界に謝れゴルァ!」

初代「あ”ぁん!?吹けば飛ぶカスが何言ってんだ!あァ!?」

 

犬「あ、あ、あ、あのーー!い、イシ君!」タタタ!

 

ヒスイ「うるせぇっ!?今、大事な話してんだ!!口挟むな!?」

初代「テメェが犬にキレてんじゃねぇ!出て行け!」

 

犬「あ、あの!イシ君、いま!いま!コイシ君が!」

 

ヒスイ「っは!?コイシがどうした!?」

 

犬「コイシ君が立って、お喋りしました!!」

ヒスイ「な、にぃ!?」

 

初代「んだ、そんな事か」

 

犬「こっちです!」タタタ

ヒスイ「お、おう!」タタタ

初代「……ったく」スタスタ

せがれ「……ぅゆ?」

 

——

 

コイシ「…」ぴん!

 

ヒスイ「おおっ!コイシが立ってる!」

ヘマ「そ、そうなの!コイシ君が立ったよ!」

 

ヘマ「あ、あとね…コイシ君、俺の名前は?」

コイシ「…ぇま」

ヒスイ「すっげーー!」

ヘマ「ねー!?」

ヒスイ「コイシ天才だな!」

ヘマ「ねー!?」

コイシ「…ぅ」

 

コイシは頑張って立ってるよ!

 

初代「…ったく、ガキが喋ったくらいで大袈裟な」

 

犬「わぁっ!凄い凄い!」にこー!

せがれ「…」ジッ

 

ヘマ「じゃあ、コイシ君、こっちは?」

 

ヘマはヒスイを指さしたよ!

 

ヒスイ「いや、俺はさすがにまだ無理だろー」てへてへ

コイシ「…」ジッ

ヒスイ「いや、だってイシは難しいモンなーー!?」

コイシ「…ぅ」

ヒスイ「お?」期待!

 

コイシはヒスイに向かって一歩踏み出したよ!

 

ヒスイ「お、おぉぉ!」

ヘマ「わ、わ、わーー!」

 

でも、そのままコイシは前に倒れ込もうとしたよ!

 

ヒスイ「おっと、大丈夫か。コイシ」

コイシ「…」にこ

ヒスイ「っ!」

 

ヘマ「コイシ君、イシ君の所に自分で行きたかったんだねぇ」にこ

コイシ「…」にこ

ヒスイ「…コイシ、なんだよ……そんな急に成長して…すげぇよ、お前」うるっ

 

 

初代「ガキが立ったくらいで何泣いてんだか…」

犬「コイシぐん……ずごい、さっきまで、あがじゃんだったのに。ごいじぐん……えらい」

せがれ「…ぅうー」バタバタ!

犬「えっ、ご子息様?抱っこが嫌なんですか?」

初代「……ん?」

 

犬はせがれを床に下ろしたよ!

 

犬「え?」

初代「は?」

 

せがれ「…」ピン!

 

せがれはピンと足を地面に付けて得意気な様子で立ったよ!

 

初代「こ、これは…」

 

せがれ「い、にゅー」トテトテ

 

犬「え、え?あれ?(少し、大きくなってる……?)」

初代「(間違いねぇ!)おい、犬!死ぬ程褒めろ!死ぬ程喜べ!」コソッ

犬「っあ、あ、はい……ご子息様!す、すごいです!て、天才です!」拍手

初代「すげぇじゃねぇか!やっぱ俺の子だぜ!」拍手

 

せがれ「いにゅー!しょらいさまー!」にこ

犬「わー!(棒)」

初代「おー!(棒)」

 

ヒスイ「…あれは」

ヘマ「わぁ、コイヌ君。またちょっと大きくなってる」

コイシ「…」ジッ

 

 

初代「おい、そこのザコ!」そそくさ!

 

ヒスイ「あ゛ぁ!?ンだと、このクズ魔王が!?」

初代「お前ら……しばらくの間、此処に居ろ!」

 

ヒスイ「はぁ!?急に何だよ!さっきは出て行けっつってた癖に!」

初代「そのガキが独り立ちするまで居ろ!これは命令だ!ソイツが居ればせがれも成長する!」

ヒスイ「はぁ?何でテメェのガキの成長に俺らが付き合わなきゃ……」

初代「……居ろ」ゴゴゴ

 

ヒスイ「っぐ(殺気がヤベェッ!)」

 

初代「おい、利口になれよ。ここに居たら、ガキに必要なモンは全部揃えてやるし。もちろん、金も腐る程ある……ガキの将来を考えたら、ここに居るのは悪くねぇだろうが?な?なぁ?おい、分かってんだろうな?」

ヒスイ「……」

 

ヒスイ「……お、おい。ヘマ(ほぼ脅しじゃねぇか)」ススス

ヘマ「なあに?イシ君」

ヒスイ「しばらく……ここに居ていいらしいぞ」

 

ヘマ「そうなの!?わーい!コイシ君、しばらくここで玩具いっぱい使って遊べるよ!」

コイシ「…」ジッ

ヘマ「これ以外にもいっぱいオモチャがあるからね!ここは!」

 

ヘマは手作りの回復薬の空き瓶で作ったシャカシャカ音のする玩具を鳴らしたよ!

 

シャカシャカシャカシャカ!

 

ヘマ「へへ」にこ!

コイシ「…」にこ!

 

 

初代「ふーーっ(これで、せがれもあのガキと一緒に成長すんだろ)」

せがれ「いにゅー!」

犬「わー、す、すごいすごい(棒)」拍手

 

せがれ、コイシを見て成長する!

せがれの方が圧倒的に年上だったのに、コイシと同い年になったよ!

こうして、ヒスイ一家は魔王城で暮らす事になりました!

 

 

幼馴染爆誕!