第15話:手紙3

 

 

 突然ですが、俺は今日(あなたにとっては昨日でしょうね)限りでバイトをクビになってしまいました。

 本当に突然過ぎて自分でもビックリです。

 

 いや、本当に。

 もう……クビとか本当に何やってんだって感じです。

 理由は詳しくは書けませんが、俺のミスが塾に大きな迷惑をかけてしまったから、と言えば一番適切かもしれません。

 

 きっと友達に言ったら笑われそうです。

 

 まぁ、理由はさておき、さっきまでは凄く動揺していたのですが、今、こうして手紙を書き始めて少しずつ落ち着いてきました。

 

 手紙って本当にいいですね。

 文字にすると、凄く気持ちが落ち着きます。

 手紙を書いて冷静になった今、自分がしなければならない事が徐々に見えてきました。

 俺の担当していた生徒に対するアフターフォローとか、次に担当になる先生への伝達とか。

 

 それに、アナタに最後の手紙をどう書くのかという事とか。

 

 俺はバイトをクビになった事より何より、もうアナタと手紙のやり取りが出来なくなってしまうという事の方が、実は一番辛いと感じています。

 毎日バイトに来て、この机に置いてある手紙を読むのが、俺は本当に好きでした。

 

 本当はバイトも辞めたくなんかありません。

 バイトを辞めてしまったら、もうあなたに手紙を書く事も、貰う事ができなくなってしまう。

 

 もっとあなたとの手紙のやり取りがしたかった。

 もっと俺の事を知って欲しかった。

 もっとあなたの事を知りたかった。

 そう考えると、本当に残念です。

 

 結局、俺もあなたもお互いに、どこの誰なのか、ずっとわからないままでしたね。

 

 でも、わからないからこそ、この文通はこんなにも長く続いたのかもしれません。

 

 けど、それももう最後です。

 今までありがとうございます。

 俺は、とてもあなたの事が好きでした。

 今日も教室を掃除してくれてありがとうございました。

 

 これからも、変わらずお元気で。