番外編36:コイシはずっと見てる(ヒスイ一家・初代一家)

 

コイシはずっと見てる

(ヒスイ一家・初代一家)

コイシ5歳/ヒスイ35歳(肉体年齢)/ヘマ(年齢など瑣末な事)

 

in魔王城

 

魔王城に「わるい勇者」がやってきた!魔王ヒスイが打って出るよ!

 

勇者「コイツ、強ぇっ!ここは一旦引くぞ!」

ヒスイ「おい!まだ始めたばっかだろうが……!って、もう逃げやがった」

 

コイシ「……」ジッ

 

「わるい勇者」は一目散に逃げ出した!

 

ヒスイ「ったく、最近の若いヤツは諦めんのが早ぇな。勇者なら、もうちっと根性見せろや」ぶつぶつ

 

コイシ「お父さん」トトト

 

ヒスイ「コイシか。危ないから来るなって言ってんのに……」

コイシ「お父さんの戦ってるところが、見たくて」すん

ヒスイ「そんな珍しいモンじゃねぇだろうに。俺の戦ってるところなんて」

コイシ「お父さん、かっこいいから」すん

 

ヒスイ「そっか。俺は格好良いか」よしよし

コイシ「うん、すごくかっこいい」にこ

ヒスイ「なら良かった。じゃ、戻るか」

コイシ「うん」こく

 

ヒスイ「今日の晩飯はなんだろうなー」

コイシ「……」じっ

 

コイシ、片時もヒスイから目を離さない!

 

♢♢♢

 

夕食時

 

犬「みんな、たくさん食べて下さいね」にこ

 

ヘマ「わーい、おいしそう!」

ヒスイ「あー、腹減ったー!」

コイシ「いただきます」

 

犬「どうぞどうぞ」にこ

 

初代「……これは(食えねぇ)」

犬「あっ、初代様は別にこちらを準備してるので」ササッ

 

せがれ「これ、赤いのいやぁ」

犬「はい、赤いのは取りましょうね」ササッ

 

ヘマ「おいしー!」にこ!

ヒスイ「おい、おかわり貰っていいか?」

コイシ「……」じっ

犬「いいですよ。じゃあお皿を……」

 

ヒスイ「自分で好きなだけよそうからいいわ。デカいガキと小せぇガキの面倒でも見てやれよ」

初代「おい、デカいガキって……そりゃ誰の事言ってんだ?」ギロ

ヒスイ「ははっ、誰の事だろうなぁ?」すくっ

 

ヒスイはおかわりをよそいに行ったよ!

 

初代「……雑魚のクセに。あ(コレも食えねぇ)」ぴた

犬「初代様、すみません!初代様用のはこちらでした!」ササッ

初代「…お、おう」

せがれ「あかいの、まだあったー。これ、いやぁ」

犬「あ、はいはい。ちょっと待ってくださいね」ささっ

 

ヒスイ「赤いのもうめぇのになぁ」ストン

ヘマ「イシ君、たくさん取ってきたねー」にこ

ヒスイ「今日は腹減ってんだよ」

コイシ「……」じっ

 

初代「っは。ったく、ガキかよ」

ヒスイ「俺はテメェと違って〝若い〟んだよ……あー。うめぇっ」

 

コイシ「……」じっ

 

犬「あ、あっ。あの、コイシ君、何か食べられないモノがありましたか?」あせ

 

コイシ「いいえ。ぜんぶ、おいしいです」スン

犬「でも、さっきから全然……」

コイシ「……」じっ

犬(なにを、見てるんだろ)

 

ヒスイ「うめぇっ」

 

コイシ「……」にこ

 

犬(あ、イシ君が食べてるところを……まるで親のような顔で見て)

 

ヒスイ「コイシ、うめぇな?」

コイシ「うん」すん

 

犬「すごいな、コイシ君」

 

初代(これ、食えねぇ)ピタ

せがれ「赤いの、いやぁ」いやいや

 

犬「あっ、ちょっと待ってくださいねー!」ぱたぱた

 

ヒスイ「コイシ、遅くていいからゆっくり噛んで食べろよ」

コイシ「うん」にこ

ヘマ「おしいねぇ」にこ

 

コイシ、ヒスイがたくさん食べるのを見てるせいで食べるのが遅い。

ヒスイは、食べるのが遅い子だと思ってる。

ヘマはもちろん気付いてる。

 

コイシ「……お父さん」にこ

 

コイシ「お父さん」って言いながらヒスイを見る時は「にこっ」とするよ!