番外編14:偉大なる息子を作った迷書。その息子が作った名著。(カルド×ヨハン+長男デルカト)

 

※カルドとヨハンは、ほぼ出てこないよ!

 

デルカト成人後

 

編集者「デルカトさん。この度はカルド氏に関する本の執筆を御快諾頂き、本当にありがとうございました」ぺこ

デルカト「いえ、こちらこそ。私でお役に立てれば幸いです。でも……」

編集者「どうされました?」

 

デルカト「いえ、本当に俺で良かったのかと思いまして。母の方が父については詳しいですし、何より私が産まれる前の父については、本当に母しか知りません。私では力不足では?」

編集者「……いいえ、そんな事は」

 

デルカト「母は口は利けませんが、元々、翻訳者として執筆の仕事をしておりましたし……母の方が適任ではないでしょうか」

編集者「あの……実はヨハンさんにも、その昔、カルド氏についての執筆をお願いした事があるんです」

 

デルカト「そうだったんですか。もしかして、母から断られましたか」

編集者「いえ、ヨハンさんは快諾してくださいました。突然訪ねた私の先輩編集者にも、とても良くしてくださったと聞いています」

 

デルカト「そうでしょうね。母は文章を書くのは嫌いではないですし……では、どうして」

編集者「あの、その疑問はごもっともだと思いまして……こちらをお持ちしました」すっ

 

編集者は封筒の中から原稿の束を取り出したよ!

 

デルカト「これは、まさか……!」

編集者「はい。デルカトさんが産まれる前……私の先輩が同じようにヨハン氏に執筆を依頼した際の原稿になります。もしよろしければ、そちらをご一読頂いた後で、再び執筆に関するご回答を頂いてもよろしいでしょうか」

 

デルカト「……わかりました。貴重なモノをありがとうございます」ぺこ

編集者「では、また一週間後の同じ時間でお時間を頂いてもよろしいですか」

デルカト「いえ、この程度なら今晩中に読み終わると思いますので」

 

編集者「いえ、しかし」

デルカト「ふふ、大丈夫ですよ。こんなに面白そうなモノなら、きっと一気に読んでしまうでしょう」

編集者「そう、ですか。では、また明日。同じ時間にお願いいたします……ただ」

 

デルカト「?」

編集者「……もし、読み終わらなかった場合は遠慮なく連絡頂いて大丈夫ですので」おず

デルカト「はい、承知致しました。お気遣いありがとうございます」にこ

 

デルカトは編集者と別れると、そのまま別の喫茶店に入って行ったよ!そして、編集者の手渡してきた封筒の中から分厚い原稿用紙を取り出した!

 

デルカト「……何が書いてあるのか、なんとなく分かるような。分からないような」くす

 

デルカトはなんだか楽しそうな様子で原稿に目を通し始めた!

 

——–

第1章:天使の如き銀髪の少年

出会った瞬間、私は思わず息を呑んだ。その少年の美しさは、この世のものとは思えないほど圧倒的だったのだ。銀色の髪がまるで月光の糸のように輝き、その柔らかな波が風にそよぐたびに、周囲の空気が静かにざわめくのが感じられた。彼の髪は、まさに夜空の星々を映し出す鏡のように、冷たくも温かい光を放っていた。

その顔立ちはまるで彫刻家の最高傑作のようだ。どこか神秘的でありながら、無垢な純真さを秘めた大きな瞳。まるで天使の翼の羽根のように長い睫毛が、その瞳を縁取っている。彼の瞳は澄み切った湖のように深く、美しく、そして人を魅了してやまない。その眼差しには、見る者の心を溶かすような暖かさと、同時に魂を揺さぶるような冷ややかさが同居していた。

彼の肌は陶器のように滑らかで、陽光を浴びるとその純白さが一層際立つ。まるでどこか遠い天上の国から舞い降りてきたかのようなその姿は、まさに「天使」という言葉が相応しい。彼が微笑むたびに、周囲の空間が一瞬で明るくなり、すべての人々の心を照らし出す。彼の微笑みは、人々の苦悩や悲しみを一瞬で忘れさせる力を持っているように感じられる。

歩く姿さえも優雅そのもの。彼が歩くたびに、まるで見えない羽根が彼の背中から広がっているかのように軽やかで、地面から少し浮いているのではないかと錯覚するほどだ。周囲の人々は、彼の存在に魅了され、自然とその後を追いかけるように集まってくる。彼は決して声を荒げることなく、静かに、しかし確実に人々を導く。

この銀髪の少年は、ただ美しいだけではない。その存在そのものが奇跡であり、彼がいるだけで周囲の世界が一変する。その美しさと純真さは、人々に希望と勇気を与え、どんな困難も乗り越えられる力をもたらす。彼こそが、この世に降り立った天使そのものであり、彼の存在はまさに奇跡と呼ぶに相応しい。

彼を見た者は、皆その心に永遠の記憶を刻まれるだろう。彼の美しさは、時を超えて語り継がれるべきものであり、彼の存在は、この世界における最高の贈り物であると断言できる。

——–

 

デルカト「…………これは、予想以上だ」

 

デルカトはまだまだ始まったばかりの原稿用紙をパラパラと捲ると、その場で堪えきれずにクスクスと笑った!

 

デルカト「うん、これを見せた方が話が早いと思ったあの編集者は、仕事の出来る人だ。それに――」

 

デルカトは原稿用紙の一枚目に書いてあるタイトルを見て、しみじみと呟いたよ!

 

≪「天才」という色眼鏡を外して≫

ヨハン・ダーウィング

 

デルカト「母さんが一番、父さんを色眼鏡で見てる気がするなぁ。ま、あの人をこんな色眼鏡で見れるのは母さんだけだろうけど……」

 

デルカトはそのまま原稿を封筒に仕舞うと、頼んでいたコーヒーをゆっくり堪能して喫茶店を出たのでした!

 

◇◆◇

次の日

 

デルカト「原稿、ありがとうございました」

編集者「まさか、本当に一日で読み終わられるとは」

デルカト「いいえ、最初しか読んでませんよ」にこ

編集者「え?」

デルカト「最初の数ページ読めば、あなた方が私に一体どんな内容のモノを求めているか分かりました。それで十分です」

 

編集者「……まいったな」苦笑

デルカト「母がすみません。でも、きっとこれが本心なんですよ。悪気はないんです。あの人には大衆が一体どんなモノを求めているか、みたいな視点は無いので」

編集者「いえ、それはもちろん理解しております。本当に……その、お似合いの良いご夫婦だと思います」

 

デルカト「お似合いというか。まさかこんなに似た者夫婦だとは、息子の俺も分かっていませんでした。母が喋れていたら……父とタメを張る程のお喋りになっていたでしょうね」

編集者「……デルカトさん、貴方が天才カルド・ダーウィング氏の息子さんに生まれてきてくださって本当に良かった。これで、一般市民もカルド氏の偉業や素顔を、分かりやすく知る事が出来るできるでしょう」

 

デルカト「ちなみに、この本は出版されたんですか」

編集者「……一冊だけ印刷をかけて、ヨハン氏にプレゼントしました」

デルカト「ですよね。ご配慮ありがとうございます。これから、どうぞよろしくお願いします」

 

編集者「こちらこそ、良い本にしましょう」

デルカト「ええ(……父さんは、これを読んだのかな。いや、父が研究書以外読むワケないか)」

 

読んだよ!

 

カルド「……この本は、ヨハンの名前が書いてある。なんだ?」すっ

 

この本をカルドが読んだ、約1年後の事でした。

 

 

カルド「……はぁっ、ヨハン!君ってヤツは!」

 

 

長男、デルカトが産まれたのは!

そして、その長男デルカトが、かの名著を生み出したのである。そのタイトルは――!