番外編42:くんくん!犬は飼い主の匂いを嗅ぐと「前向きな気持ち」になれる!(初代×犬)

 

とある街

 

 

市長「勇者様、ようこそいらっしゃいました」にこ

??「……」すっ

 

初代「わざわざお出迎えありがとうございます(えらく若い市長だな……ん?何か後ろに)」

犬「……」すっ

 

犬はいつも通り初代の後ろに控えているよ!

 

??「……」くい

市長「少し待ちなさい。あとであげるから」

??「……」ふるふる

市長「こら」

 

あれ?市長の後ろにも、一人の可愛い男の子(とは言っても10代半ばくらいの見た目)が控えているみたい!

 

初代「ん?」

市長「あぁ、すみません。うちの〝いぬ〟が……。ほら、勇者様にご挨拶を」

いぬ「……」ぺこ

 

市長の〝いぬ〟がおずおずと初代と犬にお辞儀をしたよ!

 

初代「犬?」

犬「っ!(俺?)」ピク

 

自然と「いぬ」に反応する犬。

キミは人間だよ!

 

市長「あぁ、すみません。外には〝いぬ〟の風習が無いのでしたね」

初代「……犬の風習とは?(なんだそりゃ)」

市長「ありていに言えば、位の高い者が貧しい人間を小間使いとして飼う事です。その小間使いを〝いぬ〟と呼びます」

初代「へぇ(つー事は、後ろのガキは、この市長の……)」じっ

 

 

市長「外の方にはあまり受け入れられない風習でしょうね。悪質な奴隷制だと批判の声も、よく上がりますから」

いぬ「……」ふるふる

 

市長は頭を横に振る〝いぬ〟の頭を優しく撫でたよ。

〝いぬ〟は可愛い顔でにっこり笑ったよ!

 

犬「……」じっ

 

市長「しかし、〝いぬ〟と呼ぶ以上、私達にとって彼らは家族であり、友です。批判されるような事は何一つしておりません」

初代「……」

市長「ご不快に思われましたか?」

 

初代「いえ、文化は地域ごとに異なるモノです。よそ者であるこちらが何か言えるワケもありませんよ。それに、悪くないと思います。〝いぬ〟の制度がなければ、救われない者も多いでしょう」

市長「……やはり勇者様は聡明であられる。ご理解頂き、ありがとうございます」ぺこ

いぬ「……」ぺこ

 

〝いぬ〟は市長をマネして初代に頭を下げたよ!

 

初代「礼を言われるような事ではありませんよ」ぺこ

犬「……」ぺこ

 

犬も初代にならって市長に頭を下げたよ!

 

使用人「お犬様――!お食事の時間ですよー!」

 

いぬ「っ!」ピク

市長「さぁ、お前は食事に行ってきなさい。私はまだ勇者様とお話があるからね。今晩は仕事で外にも出るから、良い子にしているんだよ?」

いぬ「……」しゅん

 

〝いぬ〟がとっても悲しそうな顔をしたよ。

 

犬「……」しゅん

 

何故か犬も〝いぬ〟につられてしょんぼりした気持ちになったよ!

 

初代「……(なんでコイツまでシュンとしてんだよ)」チラ

 

いぬ「あの、ご主人様」くい

市長「なんだい?」

 

初代(あ?コイツ、喋れたのか)

 

いぬ「良い子にしますので……ご主人様のスカーフをください」

市長「……あぁ、分かったよ」

 

市長は自分の首元に巻いていたスカーフを取って〝いぬ〟にあげたよ!

 

いぬ「わあい!」くんくん!

市長「コラ、勇者様の前だよ」

いぬ「いい匂い!ご主人様のいい匂い!」くんくん!

 

犬「……」じっ

初代「……(コイツ)」

 

市長「勇者様、すみません。〝いぬ〟は飼い主の匂いが大好きになるように調教されているので」

初代「別に気にしませんよ(サラッと調教とか言いやがった。どんな調教だよ)」

 

いぬ「ふふ」すんすん

犬「……(いいな)」じっ

いぬ「いいでしょ?」にこ

犬「っ!あ、いえ」びくっ!

 

犬は突然〝いぬ〟に話しかけられてビックリしたよ!

そのまま、初代の後ろに滑らかに隠れた!

 

市長「こら、お客様に迷惑をかけるなら、ソレは没収するよ?」

いぬ「い、いやです!これはオレの!」

市長「まったく……すみません。勇者様達のお部屋は今からメイドに案内させますので。こちらで少々お待ちください」

初代「ありがとうございます」

 

市長「では、私はこれで。ほら、いくよ」にこ

いぬ「はい!」くんくんくんくん!

市長「……そんなに私の匂いが好きかい?」

いぬ「はい!」

市長「可愛い子だ」

 

市長は〝いぬ〟の頭を嬉しそうに撫でながら歩いていった!

犬と初代はそんな二人を黙って見送ったよ!

 

 

初代「ったく、変な街に来ちまったぜ。おい、犬」

犬「……」じっ

初代「?」

 

犬はずっと先ほどの〝いぬ〟の男の子の背中を見つめてるよ!

 

初代(コイツ、まさか……)

犬「……」じっ

初代「おら、」

犬「へ?」

 

初代は身に着けていたマントを脱いで犬に押し付けたよ!

 

初代「それ、洗っとけ」

犬「っは、はい!」

 

メイド「勇者様。さぁ、こちらへどうぞ」

初代「ありがとうございます」にこ

メイド「っ!(良い男!)」

初代「ほら、いくぞ」チラ

 

犬「はい」

 

犬はメイドと連れ立って歩く二人の後をゆっくりと付いて行ったよ!

そして――!

 

犬「……」くんくん

 

こっそり、初代のマントを嗅いだ!

 

犬「……」にこ

 

犬は嬉しくてにっこり笑った!

そして、そんな犬の前では――!

 

メイド「勇者様のご武勇はこちらにも届いておりますよ。素晴らしいです(良い男!)」

初代「いえ、大した事では……」チラ

 

犬「……くんくん」にこ

 

初代「……っぐ!(やっぱりかーーーー!)」

 

初代は眉間を手で押さえたよ!

どんな気持ちなんだろうね!

 

メイド「勇者様!?どうされたんですか!」

初代「……いえ、なんでもありません(俺は……調教したワケじゃねぇぞ!!!)」チラ

 

犬「くんくん」にこ

スタスタスタ

 

初代「……っふーー」チラ

スタスタスタ

 

メイド(ど、どうしたのかしら。勇者様、顔が真っ赤だけど)

 

 

やっぱり犬は可愛いね!

友達で、家族で……全部だね!

 

犬は飼い主さんの匂いが一番好きなんだって!

ワンちゃんの気持ちを落ち着かせたり、安心感をもたらす効果があるそうだよ!

 

犬(……も、もう一回嗅いでもいいかな)チラ、チラ

初代(……あとで抱き潰してやる)