あぁ、この世界はとても美しい!
「っは、ここに……、カミュのを、挿れるんだ、んっ」
「そうなのか。それは知らなかったな」
森の中にも関わらず、何も布を纏っていないループの下半身が眼前に晒される。俺の体の間を跨ぐように膝立ちになる姿は、淫らの一言に尽きた。あぁ、なんて良い眺めだ。
「っぁ……ン、っふ」
俺のように分厚くはないが、しっかりと腹に付いた筋肉が呼吸と共に収縮する。その肌を背景に、ピンと勃ち上がったループのペニスの先端は、既に期待するように先走りを募らせていた。
「……っぁ、っはぁっは。っはぁ」
ループの呼吸が荒い。深い色香を含んだ吐息が、俺の肌に触れる。
「ループ、苦しいのか?」
「ん、ちが……はぁ、ちょっと、熱くて」
「確かに、熱いな」
入口にピタリと添えられた俺のペニスに、ループの肉壁が期待するようにヒクつくのが分かった。
「今から、挿れるんだけど……カミュは、その……嫌じゃないか」
「嫌じゃないさ。ここまで来てどうしてそんな事を言うんだ?ループ」
表面上冷静に答えるが、本当ならば腰を激しく突き上げ、一気にループのナカを穿ちたい気分だった。ループの中がどれだけ素晴らしいか、ありがたい事に俺はよく分かっている。
「おしり、だから汚いって思うかなって」
「思うワケないだろう!こんなに綺麗な場所を俺は見た事がない!」
「っひ、ん!」
我慢出来ずに、思わず腰を動かしてしまった。その瞬間、甘くヒクついていた穴の入口に、ぬぷりと音を立てて亀頭が入り込んだ。
「っぁ、あ……なら、んッ……カミュ。このまま、奥まで」
「すまない、座ってるせいで腰が動かしずらくてな……っはぁ。出来れば、ループがこのまま動いてくれないか」
「っぅ」
俺の言葉にループは大きく目を見開くと、短い呼吸を繰り返しながらゆっくりと腰を下ろし始めた。亀頭から徐々に肉の壁が絡み付いていく。
あぁ、ここだ。俺はまた再びここに戻ってこれた!
「っはぁ……ぁーーッ」
「か、みゅ?」
「……いいっ。最高だ、っはぁ」
挿れただけにも関わらず、感動して声が上擦ってしまう。
ループを亡くした後の絶望しかない世界を生きた俺にとって、ループの居るこの不条理な牢獄は、最早天国に違いなかった。
「カミュ、……俺で、もっと気持ちよくなってくれ」
「っく、っは」
ループは感じ入る俺の姿にホッとしたのか、ゆっくりと腰を揺らし始めた。俺の肩に置かれたループの手に力が入る。
「っぁぁ、んっ!ん!カミュ、きもち?……俺の、ナカっ、きもちい?」
「あぁ、イイ……ッは、最高だ。ループ」
「っふぅぅ、っぁ!」
わざと、ループの耳元に直接声を捻じ込んでやると、その腰が甘く震えた。知ってる。ループは俺の落ち着いた声が好きなんだ。
「っぁ、ひもちっ、カミュの……しょこ、気持ちいとこにっ、当たってるッ」
「気持ち良いところ……それは、ここか?この、少し出っ張った固い……っは」
「っぁ、っあ、あ……!っはぁン」
目の前で激しく乱れるループに、俺は揺れる尻を掌でギュッと握りしめた。こうでもしなければ、このままループを地面に押し倒してしまいそうだった。
「っは、るーぷ……おれは、どうすればいい?お前に、死ぬ程気持ち良く、してもらっているが……俺は、どうすればっ。お前を気持ちよく、出来る?」
せっかく、ループ主導で一つになれるのだ。出来るだけループの意志を遮りたくない。俺を求めて激しく乱れる痴態を、もっともっと見ていたかった。
「俺は、無知で何も分からんっ!何をしたらいい?なぁ、教えてくれ!」
「っは、っぁ、っん……かみゅ」
俺の言葉にループはくねらせる腰を止める事なく、モゾモゾと自身の上半身の服を捲り上げ始めた。
「っぁ、ぁぅ。じゃ……ここ、おっぱい舐めて」
潤む瞳でジッと此方を見つめるループは、恥じらってはいるものの、もう完全に快楽の奴隷となり果てていた。目の前に突き出された乳首は、触られる事を期待するようにピンと勃起している。
「っは、お安い御用だ」
「ひっ、っぁん、っぁ~~っ!」
差し出された乳首に吸い付いた瞬間、ループの口から待ってましたと言わんばかりの甘い嬌声が漏れた。同時に、ループの腰の動きが早くなる。上下する腰の動きに合わせて、ループのペニスが俺の腹にぶつかる。
「ひもち、っ、っはっぁぁぁっ!」
「ん、んっ」
懸命に乳首を吸付きながら、舌で突起の先端を押しつぶす。もう片方は、指で乳輪からほじくり出すように撫で上げると、ループの腕が俺の頭をギュッと抱きしめてきた。
「~~~ッ!か、みゅっ!」
俺の腹の上でループのペニスが弾けるのが分かった。しかし、それでもループは腰を止めたりしない。俺を抱き締めながら一心不乱に腰を振り続ける姿は、自分が射精した事にすら気付いていない様子だった。
「っぁん、っはぁぁ!も、かみゅ……カミュっ!ひもちぃぃっ!」
「っは、俺もだ!ループッ」
「っふ、ンンンンっ!」
吸い付いていた乳首から口を離すと、本能のままにループの唇に噛みついた。
再びループと出会い、プロポーズをしてからというモノ俺はループに愛を囁くばかりで手を出す事は無かった。それは、自分への罰という意味合いもあったが、実際のところ本当の理由は別にあった。
視界の端に映る、ループの頭上にある101という数字。
愚かな俺は、この数字を俺への好感度だと思い込んでいた。けれど、それは違った。これは、ループの歩んできた長い道のりを証明する強さの証だったのだ。
「っは、それなのに……俺ときたら」
「か、みゅ……?」
「なぁ、ループ……お前は、本当に俺のことを」
——愛しているか。
数字の本当の意味を理解してからというもの、俺はハッキリと自信を喪失していた。自分に対しても、そしてループに対しても。
俺は、本当にループに愛されているのか、と。
ループは勇者だ。誰にでも優しく、誰にでも救いの手を差し伸べる。その光に吸い寄せられるように、人々はループの周りに集まってくるのを何度も見てきた。
特に、前回。ループを失い、あれほど仲の良かった仲間達が瞬く間に離散した瞬間に、俺は改めてその存在の大きさを思い知った。
「ループ、俺は……俺は」
俺は、ループの愛を数字に頼っていた。その弱さが俺の心を鈍らせたのだ。俺は本当に愚かだ。
「っぁか、みゅ……はぅ……カミュ……んん」
「っループ?」
知らぬ間に、俺はループに首を舐められていた。首を横に一刀両断するように付いた変わった痣。そう、それは前回。俺が自分の人生の幕を引く際に出来た傷だ。自分で自分の首を落とした時の、斬首の傷だ。
「っはぁ……カミュ、かみゅ」
「ンっ」
触れるだけの、本当にじゃれ合うように、ループがその傷を舐める。何度も、繰り返し。繰り返し。
「カミュ……俺の事、好きって言ってくれてありがと」
そして、ひとしきり舐め終わった後、ループのキラキラと光る瞳が目の前に現れた。その中には、昔とそう変わらない赤毛の男が映っている。
そうだ、俺は本当にこの目が好きだった——いや、好きだ!
「俺も、ずっと前からカミュのこと大好きだから凄く嬉しかった!」
「ループ……!」
そう言って再び塞がれた唇に、俺は今度こそループの背に腕を回した。数字なんか見なくても、ずっとループは伝えてくれていた。俺の事が好きだと。ずっとずっと出会った頃から——。
——カリギュラで一番好きなのはカミュ!だって面白くて格好良いし!それに強いから!
「っ!」
ループにキスされながら、頭の中に初めて聞く子供の声を聞いた気がした。
誰だか分からない。何の記憶かも分からない。でも、ループの口にする「ずっと前」が、俺の予想するソレより、もしかしたらずっと遠い過去から繋がっているのかもしれないと、何故か、そう思えて仕方なかった。
「あぁ、ループ……ありがとう」
俺は子供のようにループに抱き着くと、不条理な世界でただひたすらループだけを感じて目を閉じたのだった。