前書き
こちらのお話は【転生してみたものの】前世verのお話です。
オブの生誕の日のお祝いが近づいてきたものの、インはオブへの贈り物を決めきれずにいました。
さぁ、インはオブの為に何をプレゼントするのでしょう!
そして、そのオブの生誕の日の裏では、ひっそりもう一人の人物が帝国首都から馬車に乗ってやって来ていました。
そんなお話です。
オブへの贈り物
イン『オブの生誕の日の贈り物は何がいいかな?』
スルー『花束はどうだ?』
イン『オブにばしゅんふした時にあげちゃったよ』
スルー『うーん、それなら……鳥なんかどうだ?(ヨルもかなりやが好きだったみたいだしな)』
イン『鳥?』
スルー『鳥は顔も声も可愛いだろ?』
イン『そうか!ピーちゃんも可愛いし!それに食べられるし!』
スルー『本当にヤメテ!?』
バレバレの探り
イン『あの、オブは可愛い声とか、可愛い目の生き物好き?』
オブ『(オレへの生誕の贈り物で悩んでるんだろうな。っていうか一体何を仄めかしてるんだ?)可愛い声と、可愛い目の生き物……え、イン?』
イン『え?なに?』
オブ『え?違うの?』
イン『え?好きってこと?』
オブ『え?もちろんだけど!』
イン『よかった!これで頑張って準備でき、っあ!今のはうそ!何もしない!』
オブ『うん、そうだね。インは何もしないね(何だろう。こんなに自分の生誕の日が楽しみになった事ないんだけど。インは何をどうお祝いしてくれるんだろ)』
イン『(頑張って捕まえるぞ!)』
※期待値が天元突破するオブ
お母さんに相談だ!
イン『ぜんぜん鳥が捕まらない。もうすぐオブの生誕の日なのに』
ヴィア『どうしたの?イン』
イン『お母さん…もうすぐオブの誕生日だから、鳥をプレゼントしたいんだ。鳥は可愛いし美味しいでしよう?だから』
ヴィア『すてき!それはステキ!お母さんが子供の頃使っていた弓矢を貸してあげるわ!』
※ヴィアはインとニアのお母さんです。
イン『弓で打ったら死んじゃうよ!』
ヴィア『なに?だめ?』
イン『食べるか、うちのぴーちゃんみたいに家族にするかは、オブに決めてもらいたいの!』
ヴィア『生け捕り、ということね。それはとても難しいわ。殺すことはとても簡単なのにね。なんでなのかしら?』
イン『お母さんじゃだめだー!』
※補足
少しだけひんこんママ(インのお母さん)の説明。
ヴィアは、彼女のお父さんから村に住み着いた余所者だったので、美人ですが結婚相手が変わり者のスルー位しか居なかったのでした。
移住系の狩猟民族の末裔の女の人。
ヴィア的には、スルーの顔は好きみたいです。
お母さんは、ダメじゃない!
ヴィア『イン!お母さんが、こんなものを作りましたよ!』
イン『これは?』
ヴィア『罠よ!鳥を捕まえる為に作ったの!ほら、お母さんはダメじゃないでしょう?』
イン『このギザギザは?』
ヴィア『餌を見て入った鳥をこれで捕らえるのよ!これで一撃よ!』
イン『一撃!?これじゃ死んじゃうよ!やっぱりお母さんじゃダメだー!』
ヴィア『!?』
イン『もう!お母さん、だから鳥はね。オブに食べるか家族にするか選んでもらいたいから』
ヴィア『そう!殺してはいけなかったんだったわ!罠を作るのに夢中になって、忘れてた!』
イン『もういいよ。お父さんに相談する』
ヴィア『まって!まって!お母さんにこの件は預けてちょうだい!』
イン『えぇ……』
殺すつもりはなかったの。
スルー『最近、鶏肉がたくさんだなー。ヴィア?』
ヴィア『殺すつもりなんてなかったの』
イン『……』
スルー『あんまり、森の鳥を狩ると、前みたいに皆に怒られるぞ』
ヴィア『殺すつもりなんてなかったの』
スルー『これで、森からまた鳥が居なくなったら、老いぼれ達が』
ヴィア『殺すつもりはなんて…』
※補足
村で一番狩りが上手いせいで、ヴィアは一度、森の生き物を狩り尽くそうとした事があります。その時は村長をはじめ、村の皆からこっぴどく怒られたせいもあって、ヴィアは弓矢を持つことを禁止されました。
まぁ、こっそり使ってはいるのですよ。こっそりね。
ちなみに、今回は弓矢ではなく、手作りの罠で沢山の鳥を殺してしまっています。
飛んで火に居る
イン『お母さんに任せてたら、森から鳥がいなくなって、オブの生誕の贈り物にするのも居なくなる。もう、自分でなんとかするしか…』
スルー『ピーちゃん!いつの間に子供なんて作ったんだ!っていうか!お前ら番だったのか!?二人ともピーちゃんって呼んでたけど、どっちかがピー君か!』
イン『!』
スルー『巣の奥で出てこないなぁと思ってたら3匹も赤ちゃんが居たのかー!かわいいな!かわいいな!』
イン『お父さん』
スルー『イン!見ろ!ほら!もうなかなか大きいぞ!そろそろ手乗りに慣らす為に、親から離していい頃だ!』
イン『きいろ、みずいろ、きみどり……』
スルー『なー!色とりどりだ!』
オブへの贈り物決まり!
イン『オブ!オブは何色が好き!?』
オブ『えっ?おれ?えっと…(生誕の日の贈り物だろうけど。なんだろ、インがお花と一緒に贈り物になってくれるのかな)』
イン『きいろ、みずいろ、きみどり。から選んで!』
オブ『うーん(インに、似合う色は…)黄色、かな』
イン『うんっ!わかった!』
※補足
オブ、順調に思考が気持ち悪くなっていく。
オレにも”しんけん”はあるよね?
イン『お父さん』
スルー『なんだ?イン。俺は見ての通り非常に忙しい。可愛い赤ちゃん達を眺めるのに余念がないからだ!』
イン『お父さん、オレもピーちゃんの面倒みてきたよね』
スルー『まぁ、ニアやヴィアよりはな』
イン『ならオレにも権利あるよね』
スルー『え?なんだ?なんで、そんな、急に赤ちゃんの親権を主張してくるような事を言うんだ?イン、その顔は止めなさい。怖いから』
イン『きいろの子ちょうだい』
スルー『っ!!いっ!イヤだ!なんだ!急に!俺からピーちゃんを奪う気か!?』
イン『ピーちゃんじゃない!名前はオブが決めるの!』
イン!見て!
ヴィア『イン!鳥!やっと生け捕りにできたわ!立派なカワウよ!きっと焼いて食べたら美味しいわ!これじゃダメかしら!?』
イン『お母さん、鳥ならもうお父さんに準備してもらったからもういいよ』
ヴィア『え?』
スルー『準備してない!してない!この子達は全員うちの子!全員ピーちゃんなんだ!』
ヴィア『スルー、何で横から獲物をかすめ取るような真似をするの?群れでの身勝手な行動は秩序を壊すから、してはならないのよ…』
スルー『なんで俺がヴィアから責められるんだ!』
イン『ピーちゃんだって、うちみたいな貧乏な家より、オブみたいなお金持ちの家の子がいいよ!』
スルー『っくう!』
※補足
心のやわらかい部分をぼこぼこにされるスルー。
そして、この騒動の裏で、ひっそりとオブのお母さんがやって来ております。
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【ゆうふくママと、ひんこんママへ】